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えっ……同じだ。
再会した日の夜に、悠人にしてもらったこと。あの時、私はとてつもなくドキドキしてた。今でも、鮮明に思い出せる。
「悠人が私の髪を切ってくれるの?」
「ああ。今のロングもすごく似合ってるけど、最初に俺が切った髪型にしてみない?」
ナチュラルレイヤーカット。
私なんかに似合うのかなって、すごく恥ずかしかったのを思い出す。
私は、鏡越しにうなづいた。
髪に手を置き、優しくクシでとかす悠人。
「綺麗だ」
あの日も、そうやって褒めてくれたよね。
「最近、なんだか忙しくて、自分のことにあんまり構えてなくて。オシャレもしてなくてごめんね」
「いや。穂乃果はヘアアレンジが上手いし、毎日とても綺麗にしてる。それを見るのも楽しみだ。でも、今日は……久しぶりに穂乃果の髪を切りたくなった」
「悠人に切ってもらえるなんて嬉しいよ。でも、あの頃に比べたら私は若くない。もう……30歳越えたんだから」
悠人は、後ろから私の肩に顔を近づけた。
「どんな年齢であっても、穂乃果は穂乃果だ。ずっと年齢に合った美しさ、可愛さがあればそれでいい」
「……ありがとう。なんか緊張するね。予約の取れない悠人にカットしてもらえるなんて、特別な感じがする」
悠人は、ニコッと笑ってカットを始めた。
私の、長めの髪にハサミを入れて、慣れた手つきでレイヤーカットを施していく。
なんだかとても懐かしい――
未熟だったあの頃の私は、必死で悠人のカットの技術を見てた。自然で流れるようなハサミの使い方に驚いたのを覚えてる。
目の前の自分の雰囲気が、どんどん変わっていく。
素敵……
カットが終わり、ドライヤーで形を作り、完成した。
こんなにも軽やかな印象になるなんて、やっぱり悠人は天才だ。ほんの少しだけ若返った気がしてくる。
悠人のカットに、こんな風にお客様は感動するんだろう。
「ありがとう……すごく嬉しい」
「セミロングのナチュラルレイヤーカット。出会った時も良かったけど、でも、今の穂乃果の方がいっそう輝いてて綺麗だ」
「本当に? 恥ずかしいけど、そう言ってもらえて良かった。悠人のカットはやっぱりすごいね。私も、もっと勉強する。悠人みたいに人を感動させられるような美容師になりたいから」
「穂乃果は、もう素晴らしい美容師だ。それは、俺が保証する」
私は、大きく首を横に振った。
「まだまだです」
悠人は私の肩を優しく2回叩いて、
「これからも、ずっと一緒に頑張っていこう」
そう言ってくれた。
それから、2人で落ちた髪を片付け、店を綺麗にした。着替えも済ませて、車で私達は家を出た。
途中、オシャレなカフェでランチを食べた。
サンドイッチが美味しいお店だ。