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ふなの🍬
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NARI
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NARI
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NARI
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昼休み。
教室の後ろはいつも通り騒がしかった。
「だから、それはお前が悪いんだぜ」
「なんでですか。あなた人のプリン勝手に食べたでしょう」
「一口だけ!」
「半分でした」
「誤差!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ声に、クラスメイトたちは慣れた顔をしている。
窓際の席で向かい合って弁当を広げているのは、イム・ヨンス と 本田菊 だった。
「つーか菊の弁当うまそうなんだぜ!チョーダイ」
「自分のがありますよね?」
「交換しよう」
「嫌です」
「冷たい!」
言いながら、ヨンスはしれっと菊の弁当から卵焼きを摘まみ上げた。
「あっ」
「うま」
「返してください」
「食ったものどう返せと?代わりに俺のケランマリ(卵焼き)分けてやるんだぜ!野菜入りで栄養満点!」
もぐもぐしながら笑うヨンスに、菊は眉を寄せる。
だが本気で怒っているわけではないのは、長く見ていればわかる。
「お前らさぁ」
斜め後ろの席の男子が、呆れた声を出した。
「ほんと夫婦みたいだよな」
「は?」
ヨンスが顔を上げる。
「違うんだぜ」
「じゃあなんで毎日一緒に飯食ってんの」
「たまたま」
「毎日?」
「………」
「しかもヨンス、お前本田の弁当から当然みたいに食うじゃん。他人の弁当なのに」
「菊はいいんだぜ」
「だから、その理屈がもう彼氏なんだよ!」
教室のあちこちから笑い声が上がる。
菊は小さくため息をついた。
「だから違いますって」
「でも本田、ヨンスが休んだ日めちゃくちゃ静かだったじゃん」
「…私はいつも静かなほうだと思いますが」
「いやいつにも増して静かだったし、窓の外ずっと見てた」
「天気が良くて空が綺麗だったんですよ」
即答したものの、少し声が硬い。
ヨンスはその横顔をちらっと見た。
その時。
「おーい、ヨンスくん!」
別クラスの女子が教室に入ってきた。手を振りながらヨンスのほうへ近付いてくる。
「この前言ってた映画、一緒に――」
そこまで言いかけて、女子の視線が菊へ向く。
そして一瞬、妙に気まずそうな顔をした。
「あっ…えっと…ごめん、今邪魔?」
「は?」
「いや、なんか…」
女子は困ったように笑う。
「本田くんといる時って話しかけづらくて」
教室が「おぉ〜」みたいな空気になった。
「いやいやいや!」
ヨンスが立ち上がる。
「なんで!?」
「だって彼女ポジじゃん、本田くん」
「違うんだぜ!?」
菊は机に肘をつきながら、じわじわ熱くなる顔を隠した。
「…だから違いますって…」
だが説得力がない。
なぜならヨンスが自然な動きで菊の紙パックジュースを取って飲み始めたからだ。
「あ」
「コレおいしい」
「勝手に飲まないでください」
「味見味見。だから減ってないんだぜ(?)」
「そういう問題じゃありません!」
また周囲が笑う。
女子は完全に「あーはいはい」みたいな顔になっていた。
「…仲良しだね」
「だから違」
「じゃ、また今度誘うわ〜」
ひらひら手を振って女子は去っていく。
ヨンスは納得いかない顔で席に戻った。
「なんなんだぜ…」
「あなたのせいでしょう」
「俺!?」
菊はじとっと睨む。
「距離感がおかしいんですよ」
「普通なんだぜ」
「普通の男子高校生は人の弁当を勝手に食べません」
「菊が細かいだけなんだぜ」
言いながら、ヨンスはまた箸を伸ばした。
「…あ、だから勝手に――」
今度はタコさんウインナーを摘ままれる。
しかも当然みたいな顔で。
「これ好き」
「………」
「俺のソヤ(ソーセージ炒め)とちょっと分けっこしない?」
菊は数秒黙ったあと、小さく息を吐いた。
「…一個だけですよ」
「やった」
その瞬間。
「ほら見ろ!!!!」
クラスメイトが机を叩いた。
「甘っっっっ!!」
「完全に飼い慣らされてる!!」
「夫婦!!」
教室が爆笑に包まれる。
菊はとうとう机に突っ伏した。
「…もう嫌です…」
「なんでだぜ?」
向かいでヨンスがきょとんとしている。
その顔を見て、菊はさらに頭を抱えた。
――この人、自覚がない。
それが一番たちが悪かった。
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