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──その日の会社からの帰りに、駅ビル内にあるショッピングモールを気晴らしにふらふらと歩いていた私は、とあるお店のショーウィンドウに目を留めた。
「可愛いなぁ……」
ピンクベージュのカラーに、ヒールの部分には同系色の大きなサテンのリボンをあしらったハイヒールを、ウィンドウ越しにじっと眺めていると、
「お客様、よろしければお履きになってみませんか?」
店員さんからそう声がかけられて、「ああ、いいです!」と、手を振って答えた。
こんな可愛い色合いのヒールなんて、きっと私には似合わないだろうし、何よりハイヒールを履いたらさらに身長が高見えして、もっと可愛くなくなってしまう……。
「すいません」とスタッフさんに言い、お店を離れたけれど、後ろ髪を引かれる思いが残った──。
私には、自分の身長に少なからずのコンプレックスがあった。今まで付き合ってきた男性からは、『もう少し身長が低ければ、女らしくて可愛いのに』なんて言われたこともあって、167センチ程ある背を恨めしくも思っていた。
もしもアミとエミみたいに背がもう少しだけ低かったら、あのハイヒールだって私も履けたのにな……。
ぶんぶんと頭を振って、そんなネガティブな考えを追い払ったのだけれど──
「やっぱり、可愛かったよね」──口からはついまたぼやきがこぼれ出て、自らの未練がましさに、独り仕方のない苦笑いを浮かべた。