─ここって、、、
穴を抜けると目の前には魔女の家があった。
「すごい、、」
そこは昔持っていた絵本に出てくる魔女の家にそっくりだった。
ゆりはあたりを見渡す。
もう少しで道まで伸びる木々の枝は、大きな洋風の家の日光を遮っていて、庭のほとんども陰になっている。
少しだけ日が当たっている家の横の方には、何かの植物が植えられている。
草と土となんとも言えない不思議な香りが混ざった匂いがする。
─学校で言ってた黒猫ってさっきの子だったのかな。
そんなことを考えていると、
「あ、、」
魔女の家の壁に、ほうきが立てかけてあるのを見つけた。
─本当にあった。
その時、ゆりは魔女の家の窓から誰かがこっちを見ていることに気づいた。
おそるおそるそっちを見ると、そこには黒い服を身にまとった女の人がいた。
─魔女だ、、、
「ご、ごめんなさい!」
ゆりは慌てて謝り、来た道を戻る。
穴を抜けた後、公園を横切ってベンチの上の荷物を取り、そのまま家まで走った。
ゆりは急いで家のドアを閉める。
走って上がった息を、深呼吸で整える。
緊張と興奮でまだ心臓の音が速い。
ゆりの汗ばんだ手は茶色の色鉛筆を握りしめていた。
「あれ、、?」
色鉛筆と一緒に持ってたはずのスケッチブックがないことに気づく。
─魔女の家に落としてきちゃった。
もう一度あの場所に戻る勇気と元気はゆりにはない。
─あれまだ新しかったのになぁ。
ゆりは長いため息をつく。
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