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「あ…あいちゃん、着いたよ…」
琉騎亜は後部座席のドアを開けて躊躇いながらも彼女の肩に触れる。彼女は長い睫毛をふわりと動かし目を覚ました。彼女は眠そうに欠伸を一つ。
「ここが琉騎亜のお家なのかぁ。…?なんか、引っ越したてみたいだね。」
「あ、あぁ、そうなんだ…最近引っ越して…」
彼女を家の中に招き、バタン、と玄関を閉める。それと同時に鍵を閉めた。ここの一軒家には鍵が二つ付いており、鍵も二つあるので片方が無いと扉を開けることが出来ないのだ。
彼女を家に入れて鍵も閉めた。
この家はリビングが広く、一階の大半はリビングみたいなものだった。二階には部屋が五つあり、どれも全部中身は空。琉騎亜自体、そこまで荷物がある訳では無いのでリビングの端っこに三つ程、段ボールが乱雑に置かれているくらいだった。
琉騎亜はとりあえずと前に設置しておいた小さなガラステーブルの脇に彼女を座らせると、彼女の好きなメロンソーダを可愛らしい猫の形をしたカップに注ぐ。
「えぇっ!なんであいがメロンソーダ好きってわかったの〜?!」
「カフェに行く時、毎回頼んでたから…どうぞ。」
「ありがとうっ」
彼女は目をぱちくりさせると手を合わせて喜んだ。「いただきまーす!」といつもの可愛らしい笑顔を見せてカップに口をつける。
彼女は一気に一杯飲み干した。どうやら、喉が渇いていたらしい。琉騎亜はおかわりもあるよと促すと、彼女はお願い〜と眉尻を下げ恥ずかしそうに言われた。その為、再びカップに入ったメロンソーダを彼女に渡した。
テレビを付け、画面にはとある場所での殺人事件が起きていた。
【〇〇〇市での殺人事件!被害者の少女は×××町の行方不明の□□□□さんだった?】
「□□□□さん可哀想ですね…弁護士の△△さん、どう思いますか?」
「これは□□□□さんも悪いと思いますがね〜、実際、男を誑かすような行動をしていたという事でしょう?そりゃあ恨みも買いますよ〜。」
「どうやら少女は家に居場所が無く、家出をしてホテルを転々としていたようですね。」
「腕には自傷跡が付いており、発見時には腕の損傷も激しかったとの事です。」
「親からもらった体に傷を作るなんて、親不孝な子だったんですねぇ。私には考えられませんよ。」
テレビに映るアナウンサー、タレント、弁護士たちは画面に向かってペラペラと喋る。それはまるで、その少女が悪いかのように意見を述べていた。
彼女は頬杖を着きながらテレビを見つめると、琉騎亜からリモコンを取り上げ別の番組に変えた。
その番組は今話題のお笑い芸人が出演しており、顔面にクリームを投げつけられてサブに映る閲覧者はゲラゲラ笑っている。
それを見つめる彼女の目は虚ろで、どこか寂しそうに思えた。
しばらくの間、その静かな部屋にはテレビの煩い音だけが響いていた。
数十分後、彼女は机に突っ伏して眠っていた。
メロンソーダを渡す際、琉騎亜は睡眠薬を混ぜて彼女に渡していたからだ。在り来りな方法だが、思いつくのはその方法しか無かったのだろう。
彼女の黒くサラサラなロングヘアーは、開けた窓からのそよ風によってきらきらと靡いている。
琉騎亜は彼女を起こさないように、そっと彼女を抱き抱える。
琉騎亜の向かった先は地下室。これこそ在り来りすぎるが、現実的に考えて安心に監視できるのはやはり地下室だろう。出口は一つしかないし、窓もない。何より、「逃げ道など無い」と釘刺しできると最適な場所だと言えるからであろう。
「俺と…あいちゃんの…二人の家だね…へへへ…」
琉騎亜は静かに微笑むと、地下室へと姿を消した。