テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#独占欲
#ダークファンタジー
「——!?」
妊娠検査薬に浮かび上がる二本の線
途端に込み上げる吐き気
「ぅ、うげぇぇ……」
脳裏に過るリュカの影
「ハァハァハァ……」
自身の状態を察し
脳裏に浮かぶ至った原因
そして
それがもたらす
自身と周囲への影響
脳裏に渦巻く不安
考えもしなかった
予想だにしていなかった
根本的な前提が覆り
この先の未来への道筋も崩れ落ちる
絶望でしかなかった
何にせよ
間が悪過ぎる
新たな運命
人生の再出発
希望を胸に思い描き
これまで歩んできた
これまで築き上げてきた
全てが御破算
もしも運命があるのなら
これが私の運命なのだろうか
予兆はあった
体に変化があった
体調にも変化はあった
その
体の変化の
根本的原因を見落としていた
考えもしなかったから
予想だにしていなかったから
伊藤さんからも指摘されていた
私の変化
その変化が継続し
その変化が蓄積し
それらの変化が明確な症状となって表面化し
初めて脳裏を過った
まさか……
それに気付くと
不安が増大し
居ても立っても居られず
私はドラッグストアへ検査薬を買いに走った
その結果が
——陽性
あまりの衝撃に眩暈がする
立ち眩みがして
そのままトイレで座り込み
呼吸を整え
冷静を保たんと努力する
——妊娠
その現実を受け止めきれずとも
否応なく
受け入れざるを得ない検査薬の結果
その結果を裏付ける
体調の変化
あまりにも残酷な運命の悪戯
新たな運命の光明が差し込んだ刹那の発覚
全てを御破算にする
あまりにも残酷な現実
もしも運命があるのなら
これもまた
私の運命なのだろうか
***
茫然自失
頭が回らず
何も考えられず
何も手に付かず
当然夫の帰りなど待っていられない
早々に無心で夕飯の準備を済まし
熱いシャワーを浴びて冷静を保とうとする
何をしようとも
脳裏にこびり付いて離れない
不安と
恐怖に苛まされ
震えながら布団に包まる
ただただ
不安に押し潰されながら
脳裏には恐怖の根源がチラつく
考えたくも無い
今
最も恐ろしい事
——妊娠の相手
あの日
私は夫に無理矢理抱かれた
深夜に泥酔して帰宅した夫に
上から圧し掛かられ
嫌がり拒否しながらも
何年かぶりに夫と交わった
そしてその翌日
私は家を飛び出し
リュカ宅に外泊
抗う事も出来ない程に惹かれ
離れる事が出来ない程に
何度もリュカに抱かれた
原因となり得るのは
その二日だけ
その二人だけ
最も恐ろしいのは
妊娠の相手が
どちらかという事
勿論タイミングも最悪
全てが御破算
でも
最も恐ろしいのは
私に芽吹いた息吹は
どちらかという事
私に宿った息吹である事は不変
その点では
私の感情に滞りはない
しかし
どちらかという事によって
社会的には大きく異なる
そして
どちらにせよ
いばらの道だという事
これまでの空虚な人生に終止符を打たんと
離婚を考えだした矢先の出来事
どちらのの子だとしても
相手がどう思うかは分からない
しかし
明確に分かる事もある
純也との子であれば
新たに差し込んだ運命の光明は全て破綻
リュカとの子であれば
既婚者である私が
他の男との不徳な情事により
他の男の間に出来た事になる
少なくとも
世間的には
社会的にはそういう事になる
ましてや
相手がリュカだという事が表沙汰になれば
彼に多大なる迷惑を掛ける事は必至
そうなれば
純也がどう出るかも分からない
八方塞がり
私には
残酷な未来しか残されていない
どんな残酷な結末になるにせよ
そこに行き着くまでには
今までに経験した事がない程の
極大な苦痛を伴いながら
極大な迷惑を周囲に及ぼすだろう
それは
恐怖でしかなかった
恐怖から逃避しようとするあまり
脳裏に過る
第三の選択肢
逃げの道
相手は不明と嘘の申告をして
相手の同意を得ないままの
——堕胎
私は
嘘をつくのが苦手
というよりも
体と脳が拒否する
性格的に嫌なのだ
何より
私の体に宿った生命
かけがえのない
私の分身
私の子
そんな事は絶対にしたくない
それが
恐怖から逃れたい一心と
真っ向からぶつかり合う
頭の中は混濁
正常な思考が出来ず
正常な精神状態を保てない
でも
心のどこかでは
頭の片隅では
わかっている
どうであろうと
しなければならない事があるという事
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!