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斑目はジイさん二人を送っていくと言ったが。
ジイさんたちが浪岡とともに外に出ても、彼はまだ入り口で立ち止まり、こちらを振り返っていた。
「楽しかったぞ。
また来るな」
「来なくていい」
と言う倫太郎はスルーして、斑目は壱花を見て言った。
「そうだ、壱花。
名前は自分で決められないが、苗字なら決められるぞ」
はい?
「俺と結婚してみるか?
ジイさんも勧めてたことだし。
そしたら、化け化けじゃなくなるぞ」
「は?」
と今度は声に出して訊き返してしまっていた。
「斑目壱花。
強そうですね」
と冨樫が呟く。
「別にお前とでなくとも、苗字に化けの字が入ってなきゃいいんだろうが」
と言う倫太郎の側で冨樫が、
「じゃあ、私とだと、冨樫壱花ですね」
とサラッと言う。
「そうか。
僕なら、高尾壱花だねっ」
「高尾さん、高尾は苗字だったんですか?」
と訊いた壱花に、
「いや、どっちでもないよ」
と高尾が笑ったところで、みんなが倫太郎を見た。
「……それは俺も参加しないといけない集いか」
と嫌そうに言う。
「……水無月壱花?
しゃきっとしない名前だなっ」
なに怒ってるんですか……。
別に無理やり参加してくださらなくていいでんすよ、と思ったとき、言うだけ言って斑目は、
「じゃ、またな」
とさっさと帰っていった。
……なんだったんだ、と思っていると、倫太郎がこちらを見て、
「どうだ。
一度に複数の男と結婚した気分は」
と機嫌悪く言ってくる。
「いや、名前を変えてみただけじゃないですか」
と言ったのだが。
高尾が奥の棚の方でゴソゴソしながら、
「でも、名前を手に入れることはその魂を手に入れることだからね。
化け化けちゃんに名字を預けた男は身も心も化け化けちゃんに捧げたってことだよ」
と笑って言ってきた。
「捧げませんよ……」
と冨樫が言い、倫太郎が、
「また、奥からおかしな物を引っ張り出してくるなーっ」
と高尾に向かい、叫んでいた。