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授業の終わりを知らせる鐘が鳴り、教室内の生徒は自由時間を過ごそうと此処を後にした。
私は、先ほど机にしまった学級新聞の内容が気になり、広げて文章に目を通した。
カゴメ「…何…これ」
そこに書かれていた報道は、とても悍ましいものだった。
『家畜の失踪、牧場主変死 』
先日未明めぐみの牧場にて、昨夜から騒がしいとの通報があり調べたところ、牛や豚などの家畜が一匹残らず姿を消し、その牧場主である正男さん(34歳)が、養豚場で遺体となり発見された。遺体は全身の骨が折れ内臓が破裂しているなど、損傷の激しい状態であり、苦痛に歪む表情をしていた。警察側からは、以前から動物の食肉文化を反対する団体が行った可能性が高いと、現在でも調査を進めている。
…そんな事件が大きく一面を飾っていた。
阿形「ねぇねぇカゴメちゃん、もう読んだ?新聞」
カゴメ「え、えぇ。丁度今、読んでいたところよ」
いつの間にか横にいた阿形くんが、この新聞の事件について話に来た。
教室に残っていた隈取くんと狐くんも集まって、机の上に例の一面を広げて見せた。
狐「これは何とも…悍ましいですね」
隈取「あぁ、犯人はとんでもねぇイカれ野郎に違ぇねぇぜ」
カゴメ「…でも、なんかおかしいと思わない?」
阿形「えっ?なにが?」
カゴメ「だって…幾ら過激な集団だとしてもここまでするかしら?それに、いなくなった牧場の動物達のことも気になるわ。昨夜から騒いでいたなら、その子達も心配よ」
狐「確かにそうですね。食肉に反対しているなら、動物達に危害を加えること自体、ありえないかと思います 」
そんな話を進めていると、窓の外からコツコツとくちばしの音が聞こえてきた。
もちろん、その正体はかぁ助だった。
隈取「おー、この前カゴメを守ってたカラスじゃねぇか」
窓を開けるといつものようにかぁ助は、私の肩に乗って羽繕いをした。
カゴメ「かぁ助よ。私の大事な相棒」
そう言ってかぁ助のくちばしから首元を指でそっと撫でると、目を細めてクルルルっと喉を鳴らした。
阿形「その子ってさ、カゴメちゃんの使い魔なんでしょ?今日の授業で話してたやつ!」
カゴメ「そうよ、かぁ助は特別なの」
狐「随分懐いているようですね、彼とはいつから契約を?」
カゴメ「あら、聞きたい?」
阿形「うんっ!」
カゴメ「そうね…あれは、私が兄さんと暮らし始めた頃…」
これは、私が般若の家族の一員となってまだ数日の頃の話。
私は彼等の家の近くの森で、大好きな風景画を描いていたときだった。
ふと、樹上を見上げると、ひどい怪我をして動かなくなったカラスが落ちてきた。
そのカラスはすでに弱っており、自分の巣を苦しそうに見上げたまま眠ってしまった。
見上げると、そこには大きな鷲がいて、巣の中にいるたった一羽の雛を突いていた。
カゴメ「あ…!」
ついに雛は大鷲のくちばしに捕まってしまい、空高くに連れ去られようとしていた。
カゴメ「や、やめてぇー!!」
私は、必死に足元に落ちている石を大鷲に向かって投げつけた。
大鷲「ギャッ…!?」
石が一つ、大きな翼に当たり、体制を崩した大鷲のくちばしから、雛がこぼれ落ちる。
すぐさま両手を伸ばし、落ちてくる雛を受け止めると、私は躓いて顔から転んでしまった。
カゴメ「…いっててて、大丈夫?」
手のひらに落ちてきた小さな命。
それは温かくて、愛らしくて、まだ歩けない足で一生懸命に体を引きづりながら動いていた。
雛「ぴ……ぴぃ……」
カゴメ「…もう大丈夫、私があなたの親になったげる」