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三者面談の日。
放課後の校舎は静かで、廊下に足音だけが響いていた。
教室の中。
担任教師、ミユ、そしてミユの保護者が向かい合って座っている。
「ミユさんの成績と適性を考えるとですね」
担任は資料をめくりながら、穏やかに言った。
「国内の大学ももちろん優秀ですが……
以前お話ししたフランスの提携校、本気で検討する価値があります」
ミユは、少しだけ目を伏せた。
(……来た)
その話は、前から何度も出ていた。
語学力、適応力、思考力。
すべてが揃っているからこそ、勧められる進路。
「環境が変わります。
不安もあるでしょう」
担任は続ける。
「ですが――あなたなら、間違いなくやれます」
数秒の沈黙。
ミユの脳裏に浮かぶのは、
生徒会室。
夕暮れ。
そして、副会長席に座るコビー。
(……離れる)
(遠いね、フランス)
(でも)
ミユは、顔を上げた。
「行きます」
即答だった。
保護者も、担任も、一瞬驚いた顔をする。
「……いいんですか? もっと考えても」
「大丈夫です」
ミユは静かに、でもはっきりと言った。
「後悔しないので」
その言葉に、嘘はなかった。
(私は、逃げない)
(恋も、進路も)