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からし
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「はい、よくできました」
大きくて、温かい手が私の頭を撫でた。
見上げれば、いつだって穏やかに微笑む松陽先生がそこにいる。
「いつもみんなのお手伝い、ありがとうございます。これは頑張っている貴女へのお礼ですよ」
先生が差し出したのは、木彫りの簪だった。
丁寧に彫られた、小さな三つ葉。そのすぐ下で、小さな鈴が「チリン」と密やかに鳴った。
「カタバミは、踏まれても絶えることなく芽を伸ばす、とても強い草花です。……貴女に、よく似合ってる」
『わぁ…素敵。これ、本当にいいの?』
「えぇ、もちろん。挿してあげましょうか。後ろ、向いてください」
後ろを向いた私の髪に、松陽先生はその簪を挿してくれた。
あの頃、あの小さな村塾には、確かに世界で一番あたたかい日常があった。
――――そんな日常があっけなく燃え落ちてしまうなんて。
松陽先生が連れ去られ、すべてがひっくり返った。
昨日まで木刀を振るっていた幼馴染の少年たちは、本物の刀を腰に差し、遠い「戦場」へ向かおうとしていた。
『行かないで……』
何もできない、剣も振るえない無力な私は、銀時の着物の袖をギュッと握りしめ涙をこぼすことしかできない。
そんな私の手を、銀時は冷たいほど力強く、けれど優しく振り払った。
「……ついてくんじゃねぇよ」
その目はもう、村塾でだらだらと笑っていた幼馴染のそれではない。修羅の目だ。
「お前みたいな戦えねー弱虫が来る場所じゃねぇ。大人しく、どっか遠くの安全な場所に逃げろ。もう俺たちに関わるな」
突き放す言葉だけれど、その拳は白くなるほど強く握りしめられていた。
横に立つ晋助も、小太郎も、私を巻き込まないため、前だけを見据えている。
『おねがい…っ私を一人にしないで…おいていかないでっ!』
私の声は虚しく、彼らは一度も振り返ることなく、白煙の向こうへ馬を走らせていた。
髪に挿さった木彫りの簪が、一人残された、どこまでも続く空の下で「チリ、チリ」と、いつまでも寂しく鳴り響いていた。
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最後まで呼んでくださりありがとうございます。
次の話では現代、江戸になります。キャラの口調、性格が違う!となるかもしれませんが、また読んでくださると、とっても嬉しいです。
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また次の話でお会いしましょう
コメント
1件
お読みになりました、第2話。 松陽先生の簪のエピソード、とても温かくて素敵でした……「カタバミは強い花」という言葉に、先生の優しい眼差しが浮かびました。それが後半の別れの場面で切なく響いて、胸がぎゅっとなりました。 銀時が「ついてくんじゃねぇよ」と振り払う手の冷たさと、握りしめた拳の白さの対比がたまらなかったです。簪の鈴の音が一人寂しく鳴っているラスト、心に残りました……。 次は現代江戸なんですね。また違った彼らに会えるのが楽しみです🌷