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白。
どこまでも白い天井。
なつは瞬きを繰り返した。
焦点が合うまで少し時間がかかる。
腕も、足も、
まるで自分のものじゃないみたいに重い。
(……動かない……なんで……?)
困惑して視線をさまよわせていると、
「! なつくん 起きたんだね、
よかった!!」
弾むような声が耳に飛び込んだ。
なつが知っている、
あの明るくて元気な声。
横を向くと、満面の笑みで覗き込む少年。
「……こさめ……?」
「うん! なつくん、ほんまよかった……
死んでるかと思ったもん……」
胸を撫で下ろすように息をつく。
けれど、なつの頭は混乱のままだ。
「……これ、どういう状況?」
「んー、とりあえず……」
こさめは首をかしげながら言う。
その仕草だけはいつも通り元気で無邪気。
「骨折しないでよかったね」
「…………え?」
思考が止まる。
「だって……落ちたじゃん?
とにかく“奇跡的に”骨折してないの。
すごいよ?普通死んでるって」
なつの呼吸が一瞬止まり、胸がつまる。
落ちた——
え?
いるまは?
「……なつくんのせいで……」
こさめの声色が少しだけ重くなる。
「いるまくん、
ひどいことになってるんだよ?」
なつの心臓が跳ねた。
「…………は?」
「足、ボロボロ。
全身もあちこち折れとって……
今、治療費でめっちゃ大変なの」
世界がぐらりと揺れる。
「……まって……
本当に……訳わかんない……」
かすれた声でやっと絞り出すと、
こさめは眉をひそめて、
まるで“叱るように”言った。
「なつくんのせいでしょ。
なんで……お金残してないの?
最後だからって、全部使っちゃったん?」
その言葉に、
なつは本気で凍り付いた。
「まてまて……おかしいって。
金ならちゃんと残ってるはずだし……」
「残ってないから言ってんだけど?」
こさめは淡々と言う。
「口座、ほぼ空っぽ。
いるまくんの治療費の前払いで
全部消えとる」
「……は?」
声が震える。
理解が追いつかない。
胸の奥に冷たい何かが落ちる。
いるまが……全部払った……?
なんで?
なんで俺じゃなくて——
あいつが?
なつの喉が震えた。
言葉は出ない。
ただ、現実だけが重くのしかかる。
こさめは続けた。
「なつくん……ちゃんと説明、聞ける?」
その声は、もう子どもみたいな
明るさじゃなかった。
泣きそうなのをごまかすみたいに、
ぎゅっとシーツを握っている。
「いるまくんさ……落ちた時、
なつくん庇ったんだって。
最後の最後まで、なつくんの頭とか身体、守ろうとしてたみたいで…」
そこまで言うと、こさめは一度息を
呑んで、目を落とす。
「だから……全部、いるまくんに
衝撃いっちゃって」
「……っ」
「右足は粉砕骨折、左足も折れてる。
腰の骨も何本かいってるし、
内臓も……かなり、やばい状態で」
なつの心臓が冷たくなる。
呼吸がうまくできない。
こさめは続ける。
苦しそうに、
でも伝えなきゃいけないって顔で。
「まだ意識戻ってないんだよ、
いるまくん。
“奇跡があれば歩けるようになるかも”
って……そんな感じ」
白い天井がゆがむ。
「……俺……が……?」
かすれた声でなつが呟くと、
こさめは唇を噛んだ。
「うん。なつくんを突き飛ばして、
自分が下に入ったらしいの。
だからなつくん骨折もしなかったんだよ」
沈黙。
「それと……ね、もうひとつ。
治療費、ほんとに残ってなかったんだよ。
全部、何かに使ってたみたいで
……みんなで必死にかき集めてる」
「……そんなはず、ない……俺、残して……」
「残ってないの」
こさめが首を横に振る。
涙がぽたりと落ちた。
「なつくん……いるまくん、
ほんとに死ぬつもりだったでしょ?
だから……最後に全部、使っちゃったん
じゃないかって……みんな言ってる」
胸が焼けるように痛む。
息がしづらい。
指先が震える。
こさめは、涙でぐしゃぐしゃの顔で、
絞り出すように言った。
「ねぇ……なつくん。
どうしてこんなことになったの……?
なんで、二人で死のうなんて……
なんで、いるまくんがこんな目に……?」
病室の空気が、重く、痛く、冷たかった。
なつの呼吸が急に早くなる。
胸の奥がざわざわと波立って、
視界がぐらぐら揺れた。
「……いるま…、目覚ましてないの、
まじ……?」
声が震え、意識が現実から
遠のきそうになる。
こさめは眉をしかめ、もう呆れと悲しみの
混ざった顔で吐き捨てるように言った。
「だから言ってんだけど……
話になんないわ……」
そのまま、こさめは肩を落として
病室を出ていった。
扉が閉まるカチリという音だけが、
やけに大きく響いた。
――取り残された。
急に静かになった病室。
白くて冷たい空気が、なつの肌に刺さる。
「……っ、ぁ……」
涙か汗かわからないものが頬を
伝い始める。
息がしづらい。
頭が真っ白になる。
指が震えて、シーツを掴む手に力が
入らない。
――パニックだ。
このまま壊れてしまいそうなくらい。
けど、その渦の中で、なつの脳裏に
少しずつ、少しずつ“あの直前”の
違和感が 蘇る。
なんで、お金がなかった?
なんで、最後に全部消えてた?
払うために残してあったはずの金。
口座に残っていたはずの金。
消える理由なんて――ひとつしかない。
「…親……」
かすれた声で呟くと、
背中に冷たい汗が伝った。
思い出す。
母親の借金。
母が死んだあと、その借金が
“なつに”背負わされたこと。
そして――借金をした元の場所は実家。
つまり借金取りが向かう先は、
借りた家……父親がいた家。
「……借金取りに……追われてた……んだ……」
なつの手が震えを増す。
だからだ。
だから父親は――なつの口座に
手をつけた。
いるまとの将来のための目的で作られた
口座。
父親にはその情報が全部知られている。
つまり。
「……だから……お金……ないんだ……」
呆然と呟いた。
全部繋がった。
父親は借金取りに追われて、
なつの金を勝手に引き抜いた。
なつが死ぬ準備をしていた直前、
父が引き落としたせいで金が消えた――
そして。
いるまの治療費が払えない。
いるまが意識も戻らず、体もボロボロで。
なのに金がない。
なつの胸がズキンと痛む。
「っ、い、るま……」
呼吸が乱れて、涙が止まらない。
足も動かない。
何もできない。
でも――
頭の中でひとつだけ燃えるように
浮かぶ名前があった。
父親だ。
あいつが、全部壊した。
二人で逃げたはずの“最後の場所”を。
なつの大切な人を。
いるまの未来を。
震える手で、なつはシーツを掴んだ。
その震えには、恐怖だけじゃない。
――怒りがあった。
――憎しみがあった。
――そして、守らなきゃいけない
人がいた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
くそでかのQRコードからの動画本当に
良かった…😭
🎼に📢🍍に出会えてよかった。
📢🍍が世界救うんよ