おはこんばんにちは
4話です。
(※新キャラきます)
それではどうぞ
学園の制度
ドアを開けて、教室の中へ一歩踏みだす。
クラス中の視線が、俺に集まっていた。
『何あれ……』
『前髪長すぎて顔見えないんだけど……』
『いや、それ以前にあのメガネだろ』
こ、こそこそ何か聞こえるっ……。
多分だけど、いい視線ではないのか……?
『は、初めまして、……潔 世一です』
できるだけ元気よく、そう挨拶をした。
ぺこりと頭を下げた俺を、みんなが、好奇の眼差しで見ている。
『よいちだって』
『名前と合ってなさすぎ、かわいそ〜』
『あたしだったらなまえかえるわね〜』
な、なんだか、まだ自己紹介しただけなのに、嫌われてるっ……!?
不穏な空気を察して、冷や汗が流れた。
『かっこいい男の子期待してたのに、がっかり……』
ぼそっと女の子の声が聞こえた。
がっかりさせてしまって……なんだか申し訳ない……。
ごめんなさいと、心の中で謝る。
『そうだ。潔 世一……お前は生徒会役員に決まったらしいぞ』
『え?』
先生の言葉に、教室内がざわついた。
生徒会役員?俺が……?
どう言った基準で生徒会役員になれるのかわからないけど……編入生がいきなり生徒会に加入なんて、いいの?
『潔 世一が入る代わりに、石田が生徒会から降格になる。あとでバッジ、交換しにこいよ』
『はぁ……!?』
石田さんと呼ばれた女生徒が、顔を青くしながら勢いよく立ち上がった。
『嘘だろ……編入早々生徒会?』
『あんな奴がFS生に……』
『バケモノだろ……』
な、なんだ……全然分からない……。
生徒会に入ることに、どんな意味があるんだろう……?
『潔 世一、これをつけておけ』
これ……?
先生から渡されたのは、Fと書かれたバッジだった。
F……?
『そこの空いてる席に座れ』
『は、はい!』
先生が指を指した席に、急いで座る。
なんだか、分からないことだらけだっ……後で先生に聞いてみよう。
バッジをどこにつけていいかわからず、ひとまずポケットにしまった時、左隣から視線を感じた。
ん……?
な、なんだろう……じっと見られてる……?
左隣に座っているのは、明るい髪色をした、背が高い男の子。
座っている状態でも背が高いと、ひと目でわかるくらい大きい。
かと言って、大柄というわけではなく、すらりとした細身のモデル体型。
この学校……綺麗な顔をした男の人しかいないのか?
そう思うくらい、整った顔立ちをしている人……が、俺のことを疑視している。
『え、えっと……』
困ってしまって苦笑いを浮かべると、彼はにっこりと微笑んだ。
『初めまして。キミ、生徒会に入るんだね』
生徒会……確かに、さっき先生がそう言っていたけど、よくわからないっ……。
『ってことは、頭いいんだ』
あ、頭?
『……ああ、ごめんな、自己紹介が先だった。俺の名前は御影 玲王。玲王って呼んでくれ』
彼……もとい、玲王は、そう言ってもう一度微笑んだ。
『俺も生徒会の役員なんだ。これからよろしくな』
そうなんだ……!それじゃあ生徒会のこと、玲王に聞いてもいいかなっ……。
そう思い、質問しようとした時だった。
『けっ、近くの席ふたりが生徒会とか、鬱陶しすぎやわ』
右隣の席から、ため息交じりの声が聞こえたのは。
『……え?』
驚いて振り向くと、右隣の席には黒髪の、少し強面の男の人がいた。
ひと言で説明するなら、「不良」と呼ばれるタイプの人。
彼もさっきの玲王と同じように、じーっと俺を疑視してくる。
紳士的な雰囲気の玲王と違って、いかつい彼に見つめられ少し怖気付いてしまった。
こ、怖いっ……。
『あ、あのっ……』
『凡、ほんま地味やな〜。その前髪どうにかした方がいいで』
あまりにもはっきりと言われ、いっそ清々しい。
『ま、ガリ勉には生徒会がお似合いなんちゃう』
嘘がつけない、裏表のない人なのかな……?と直感的に思った。
怖いけど……どうしてだろう、悪い人には思えない。
『なんや俺のことじっと見て。惚れたか?』
『ち、違います……』
『失礼やなぁ凡。そこは冗談でもうんって言いや』
ええっ……!
『お前みたいなうるさい奴、女にはモテないだろ』
後ろからまた違う人の声が聞こえて、振り返る。
……これまた整った顔をした人だっ……。
俺の後ろの席にいたのは、全体的に色素の薄い、さっきの人とは違くて静かな男の子。
心底面倒くさそうな顔で、強面の男の子を見ている。
『お前はいっつも失礼やな……!言っとくけどな、俺は生まれながらのモテ男やぞ!!見ろこの顔面!』
『うるさい……』
えっと……ふたりは、仲良しなのかな?
交互にふたりを見ている俺に、強面さんがハッとした表情になった。
『ああ、こいつは乙夜。乙夜 影汰や。……って俺が名乗るの忘れとった。俺は烏 旅人。名前もかっこいいやろ?』
強面さんが烏で……クールな男の子が乙夜、か。
というか、喋り方が……。
『関西弁……?』
『おう。初等部まで関西に住んどってん。ほら、乙夜も挨拶しいや』
烏にそう言われた乙夜が、ふんっと俺から顔をそむけた。
『生徒会だろ?こいつ、しかも男。仲良くするつもりない』
うっ……。はっきりと断られ少しショックを受けたけど、同時に疑問に思う。
乙夜は、生徒会が嫌いなのか?
『はぁ……こいつはこういう奴やねん、気にせんでいいで。女子にモテようとクールぶってんねん』
『ぶってねぇよ……』
ちっと、乙夜の舌打ちが響いた。
『凡の名前、潔 世一やったっけ?』
『ああ』
『世一って……また可哀想な名前やな』
烏は哀れむような目で、俺を見た。
『え、可哀想……?』
『アイドルのヨイチと一緒やん。その見た目で名前が世一はからかわれたやろ?』
……ギクッと、体から嫌な音がなった気がした。
『ま、世一って聞いたら誰でも絶世の美少年を想像するわなぁ……あんな綺麗で可愛い男、おらんやろうし……』
うっとりとした表情で、そう呟いた烏。
『ア、アイドルのヨイチ、知ってるの……?』
『はぁ!?逆に知らん奴とかおるんか?』
俺の質問に、烏は勢いよく立ち上がった。
そして、拳を握りながら、暑く語り始めた。
『別にドルオタとかちゃうんやで俺も! でも、もうアイドルっていう次元超えてるやんかヨイチは……!あれは天使やでほんまに!』
あ、あはは……。
嬉しいけど……じ、自分の話されるの……恥ずかしい……。それに、バレたらいけないから、き、気まずすぎるっ……。
『日本中はそりゃもうみんなヨイチの虜になって当たりま……』
『烏、うるさい』
まだ語り続けようとしている烏を、乙夜が止めてくれた。
心の中で、安堵の息を吐く。
『いや、誰でも好きやろあれは!! ヨイチに興味もたへん凡なんかおらへんで』
も、もうやめてぇ……。
『そ、そうなのか……』
なんて返事をすればいいかわからず、笑顔がひきつってしまう。
『今何やってんやろうなぁ……もう1回芸能界に戻ってほしいわ……』
……っ。
いざ、応援してくれていた人の生の声を聞くと……胸が痛んだ。
そう言ってもらえるのは、すごくうれしい。
でも、俺は……これからは潔 世一として、生きていくって決めたんだ。
『オタクっぽいよ、烏』
ずっと黙っていた玲王が、笑顔で烏に言った。
『なっ、ちゃうって言ってるやろ! ヨイチは別枠や!』
『ごめんな世一。烏がうるさくて』
『お前はほんまに……腹立つ奴やな……!!』
もしかして……玲王と烏は、あんまり仲が良くない……?
そういえば烏も生徒会の人は鬱陶しいとか言ってたし……もしかして生徒会って、嫌われてるのかな……?
『あと5分したら始業式に向かうぞ。各自、校則違反がないように身だしなみ確認しとけ』
先生の声に、烏が『めんどくせー』と言って舌打ちをした。
始業式……!
学校生活らしいワード、方が緩む。
『楽しみっ……』
『始業式の何が楽しいねん。変な奴やなぁ』
そ、そうかな……?
学校でしか体験できないことだから、イベントごとは全部満喫したい。
『そうだ世一、さっきもらったバッジつけないと。校則だから』
玲王の言葉に、ポケットにしまったバッジを取り出す。
『これ、どこにつけるのかな?』
『左胸のポケット』
『教えてくれてありがとう』
バッジ、かっこいいデザインだなぁ。
『……いつ見てもそのバッジ目障りやわ』
烏が、俺のバッジを見てあからさまに嫌そうな顔をしている。
そのバッジ……?
よく見ると、烏のバッジには ” L ” と書かれていた。
『このバッジ……何か意味あるの?』
俺の質問に、烏が目を見開いた。
『凡、うちの学校の制度知らんの?』
『編入生が知ってるわけないだろ』
乙夜が言った通り、俺はこの学園の制度なんてまったく知らない。
という以前に、制度って何……?校則じゃなくて?
『しゃーないから、俺が説明したるわ』
ごほんと咳払いをして、得意満面な顔をした烏。
『そろそろ廊下に出て並べ』
『ちっ、タイミング悪いわ。体育館に向かいながら話そか』
ちょうど先生が号令を出して、俺たちも廊下に出て体育館へ向かいはじめた。
歩きながら、烏が説明してくれる。
『この学校ではな、生徒の階級が3つに分けられてるねん』
生徒の階級……?。
『FS、NS……それと、LS』
えふえす、えぬえす、えるえす……? ぜ、全然わからないっ……。
『全部通称や。FSは FirstStar、一等星って意味な。NSはNormalStar、こっちはそのまま普通の星。……で、LSはLostStar。黒星って意味や。これだけ覚えといたらいける』
烏はドヤ顔で、そう言い切った。
『え、えっと……』
『烏、それじゃ分からないだろ』
困惑している俺に、玲王が追加で説明してくれる。
『FSは、生徒会の役員だけに授与される称号。ちなみに、生徒会に入るには素行の良さと成績が重視されるから、学年の中でも成績上位者だけに送られる称号だ』
そうなんだ……。だからみんな、生徒会ってワードに反応してたんだ……。
じゃあ、俺も生徒会でFSに入れたってことは、今のところ成績上位に食い込めたのかな……。
『……いいように言いすぎ』
ん?今、乙夜が何か言ったような……。
玲王は気にせず、話を続ける。
『次に、NSは一般生徒に贈られる称号。ほとんどの生徒がNSだよ。……で、最後にLSだけど……』
その時、玲王が一瞬……バカにしたように、あざ笑った気がした。
『これは、問題児に贈られる称号だな』
『違うわ!!お前、さっきから適当にほざくなや!!』
玲王の言葉に、烏が反論している。
『適当じゃない。俺はありのままを説明してる』
ええっと、つまり、玲王の説明が正しければ……FS、NS、LSの順で位付けられているってこと……?
『おおかた合ってるとはいえ、例外だってあるやろ』
例外?
『この学校には、 ” LOST ” っていう暴走族があんねん』
『ぼ、暴走族……!?』
それって……不良ドラマに出てくる、あの暴走族……!?
『そうそう。そのLOSTっつーチームに加入したら、LSになる』
ど、どうしよう……情報が多すぎて、難しいっ……。
『だから、不良生徒や問題児がLSになるんだ。ほら、何も間違ってないぞ』
ふふっと笑った玲王を、烏が睨みつけてる。
『……それだけじゃない』
ずっと黙ってた乙夜が、不機嫌そうに口を開いた。
『FSを放棄したら、自動的にLSになる』
『放棄……?』
『生徒会が嫌いな奴らは……生徒会に入ることを拒否して、LSになるんだ』
そんなこともあるの……?
『そうそう、乙夜は頭いいからな、ほんまは生徒会入れるけど、断ってLSになってん』
乙夜、断ったんだ……!
ええっと、つまり……頭の中がこんがらがる前に整理しよう。
成績上位者は生徒会に入り、FSという称号が与えられる。
その生徒会への加入を断った人間と、LOSTっていう暴走族に所属している人がLS。
それ以外の一般生徒はNS。ってことだよな……?
うーん、複雑……。
『まぁ、俺はLOSTにも入ってるけど』
『え……!』
ぼそりと呟いた乙夜の言葉に驚いて、思わず反応してしまった。
『何驚いてんねん。俺と乙夜はLSって言うたやろ?LOSTのメンバーやで。ていうか、今んとこ生徒会入り放棄人は全員LOSTのメンバーやし、LSの奴は全員LOSTや』
そ、そうなの……!
じゃあ、ふたりは暴走族ってこと……!?
『別に、そんなビビらなくても、俺らは一般生徒に手をあげたりしない』
『そうそう!俺らは他校からケンカ売られた時の壁みたいなもんや』
そうなんだ……。確かに、ふたりが悪いことをするような人に思えない。
暴走族と言っても、むやみに暴力を振るたっり、悪いことをする人たちではないのかもしれない。
決めつけるのは失礼だし、烏の言葉が本当なら、学園にとって頼もしい存在なのかな?
『ずいぶんいいように言うんだな。ただの問題児の巣窟だろ?』
玲王……?
『世一はこいつらみたいになるなよ』
まるで烏と乙夜を牽制するように、そう言った玲王。
なんだろう……え、笑顔が、ちょっと怖い気がするっ……。
『お前はほんまに……人を見下してしか生きていかれへん奴やな……』
『人聞きの悪いな。俺は世一のためを思って忠告してるんだ』
『けっ、ほんまにお前嫌いやわ』
あっ……。
やっぱり……烏と玲王は仲が悪いのかもしれない……。
というか、俺の勝手な想像だけど、生徒会とLOSTっていうグループは、対立してるのかな……?
FSの生徒とLSの生徒には、何か因緑があるのかもしれない。
烏と乙夜と仲良くしたかったけど……生徒会に入るってことは、俺もふたりに嫌われちゃうのかな……。
そう思うと、悲しくなった。
『……あ、じゃあ俺らはここまでやな』
体育館へ近づいた時、烏と乙夜が方向を変えた。
別の方へ歩いていこうとしているふたりを、慌てて引き止める。
『え? ふたりとも、どこに行くの?』
『始業式なんか出てられへんし、LOSTの溜まり場行くわ』
し、始業式をサボるの……!?
『サボって平気なのか?』
『おう、最低限の成績とったら進級できるねん。じゃあな!』
ひらひらと手を振って、歩いていく烏。
『玲王には気をつけたほうがいいよ』
……え?
乙夜は俺だけに聞こえるようにそう言って、烏の後を追っていった。
玲王に、気をつけたほうがいい……?
それは……どういう意味……?
『世一、早く行こう』
『あっ……う、うん!』
立ち止まってほかの人の邪魔になっていた俺を、玲王が引っ張ってくれた。
玲王はちらっと俺の顔を見て……前を向いたまま、口を開いた。
『あいつらとは仲良くしない方がいいぞ。ただの不良だから』
これは……想像以上に、仲が悪い……?
『それと、さっきあいつらが言っていた説明、語弊がある』
『烏の説明か?』
『ああ。FSは一等星、NSはただの星、LSは……黒星じゃなくて、言葉通り星無しだ』
玲王ははっと、鼻で笑った。
『輝きを失った、落ちこぼれのただの石ころって意味だからな』
そう話す玲王の表情は、笑顔なのに━━ひどく冷たく感じた。
玲王……?
『じゃあ、俺も行ってくるな』
『え?玲王はどこに行くんだ?』
もう体育館着くぞ……?
『俺は生徒会の役員だから、前に出なきゃ行けないんだ。世一も次からは招集かかると思うぞ』
あ、そうなんだ……。
俺たちとは違う入口に向かって、歩いていく玲王。
なんだか……不穏だったっ……。
この学園には、俺にはわからない何かが、あるのかな。
よくわからないけど……みんなと仲良く、楽しい学園生活を送れたらいいな。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♡300
コメント
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初コメ失礼します。違ったら申し訳ないんですけど、*あいら*先生ですか…?