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「じゃあ、真奈美さんのミシンの部屋をお披露目しようか」
「楽しみだね。私も見ていないんだよ」
「え……そうなんですか?」
「先を考えると、篤久の好きなようにやればいいと思ってね」
まだ現役のご主人様だけれど、常に何年も先を見ておられるのかもしれない。
ダイニングから3人で二階へ上がると
「どちらから見る?」
篤久様が私に聞いた。
ご主人様もおられるのに、私が決められないでしょ?
「そりゃ、ミシンの部屋だよ」
よかった…すぐにご主人様が言ってくれて助かった。
「父さんに聞いていなかったのに…真奈美さん、いいの?」
「はい、楽しみです!」
「うん、じゃあ、開けてみて」
篤久様が私の背中をそっと押すので、私が先頭になってミシンの部屋の前まで行く。
「いいですか…開けても…」
「「どうぞ」」
「…失礼します…」
「いや、真奈美さんが使う部屋だからね」
という篤久様の声を聞きながら、そっと…ゆっくりと……静かにドアを開ける。
「ぁ……」
ここはどこ……?という空間に、私は動きを止めてしまった。
後ろから長い腕が伸びて、ドアをそっと押す……ってことは、篤久様が私の背中に密着しているので、私は視界からの情報と、背中の感触とを同時に理解することが難しい。
「どうかな?使えそう?」
その声に、ロボットよりも不自然な動きで私は室内に入る。
「すごく……素敵…こんなの想像できなかったです……」
入った真正面には窓がある。
そこは鮮やかな黄色いシェードカーテンが降ろされている。
その下には
「本棚……?」
「造作家具を作ってもらった、本棚兼飾り棚かな。自由に使って」
12個のスペースが作られた棚があって、いくつか洋裁の本があり、さらに真新しいミシン糸が飾るようにして置いてある。
右手が一面の壁なのだけれど、そこには端から端までの造作デスクがあり、その上に2台のミシンが並んでいる。
そして……
「これは、アイランドキッチンのように真ん中にあるね」
ご主人様が部屋の真ん中にある、何も置いてないテーブルのようなものをトントンと叩いた。
「真奈美さん、分かる?使える?」
「……断裁とかの作業台…?」
「さすが、使ってもらえたら嬉しい。この下の棚に、道具は揃っているから」
それにトルソーが置かれた部屋は……
「本格的……驚きました…」
「いつでも自由に使ってくれていいから。お茶を淹れる場所とか、冷蔵庫とかもスペース的には作れたんだけど、そうすると真奈美さんがここから出ないだろ?だからやめた。その分はオープンクローゼットにしてあるから、作品の保管とかに使って」
コクコク……もう言葉がないよ。
「壁紙もいいな」
「真奈美さんが好きって言っていた中から、ここに合いそうなものにした。あ、エアコンも新品にしたし、ドアノブ交換もしたから。床は真奈美さんの希望通り、絨毯でなく板張り…だったよね?」
「ありがとうございます…細かい糸くずとか、ゴミが落ちやすいので絨毯でない方がいいです……何作ろ……嬉しい…」
「ゆっくりと考える時間も楽しんで」
そう言って篤久様は私の頭をポンポン……として、とても嬉しそうに笑った。
私は、その何百倍も嬉しい…
コメント
2件
わぁ〜꒰ღ˘◡˘ღ꒱。o♡ お部屋もだけどドアを開けた時、篤久様の胸が真奈美ちゃんの背中に密着してるっていうのにも(〃'艸'〃)キャー♡です💓 窓の黄色のシェドーカーテンからは優しい光が差し込んでくるでしょ、棚にはミシン糸🧵が飾られて、大テーブルがあって、お部屋の情景が目に浮かんでくる**...˚。⋆🍀⋆*嬉しいね〜🥹✨ 篤志様がおっしゃった「先を考えると…」とは2人が一緒に歩む未来のことなのかな🌈♥️✨ もう一つのお部屋もワックワク〜( * ॑˘ ॑* ) ⁾⁾
素敵🥹🥹今まで嫌な思いや大変な思いをしてきた真奈美さんだから、篤久様の溢れまくってる愛情を思う存分受け取って🥹🥹あの母娘に復讐するためにじゃなく、これからは自分の好きな物を作って🥰あ~最高🥰