テラーノベル
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待ち合わせは、駅前。
人多くて、音もうるさくて。
早く着きすぎて、
改札の柱にもたれながらスマホ見るふり。
(まだ来てへんよな)
(いや、もしかしてもう…?)
顔上げて、
何気なく人の流れを見る。
——その中に、
見覚えありすぎる黒髪。
一瞬、呼吸止まる。
(……あ)
まだ少し遠くて、
こっちに気づいてへん。
歩き方も、
服の雰囲気も、
あの日と一緒やのに、
今日はちゃんと「待ち合わせ」してるってだけで、
心臓の音が違う。
足、止まる。
(やば……実在してるやん)
頭で何考えてたか分からんくらい、
ただ、目で追ってもうて。
狛がきょろきょろしながら立ち止まって、
スマホ見て、
顔上げて——
目、合う。
ほんの一秒。
狛、ちょっと驚いた顔して、
次の瞬間。
ぱぁって、
あの笑顔。
……あかん。
胸、ぎゅってなる。
狛が小走りで近づいてきて、
少し息切らしながら。
「……あ、いた!」
「こんばんは!」
声が前より近く感じた。
「こんばんは」
俺の声、
思ったより落ち着いてなくて、
自分で分かる。
一瞬、
立ち止まったまま。
近い。
思ったより。
気まずい沈黙、
でも嫌じゃない。
狛が先に、
ちょっと照れたみたいに笑って言う。
「なんか……前より緊張しますね」
それ聞いて、
肩の力抜ける。
「……俺もです」
二人で、
同時に笑って。
その瞬間、
「2回目やのに、初対面みたい」って思う。
でも、
この距離、
この空気。
ゆっくり始まっていく感じが、
たまらなく心地よかった。
(あぁ、
ちゃんと会えてよかった)
心の中で、
そう思いながら。
「行きます?」
って言ったら、
狛が
「はいっ」って、
少しだけ遅れて近づいて歩き出す。
——まだ触れてへんのに、
もう、隣におるだけで胸いっぱい。
「……あのさ、LINEの名前しらはく…やん?」
きょとん。
俺も突然タメ口きいてもうて驚くけど
「やから、その……
なんて呼べばええか分からんくてさ笑」
一瞬の沈黙。
狛の目、ぱちっとして——
すぐ、ふにゃって笑顔になる。
「わ、っ……あ、ごめんなさい」
その笑顔がもう反則で。
(許すけどやで……)
(いや、許すに決まってるやろ……)
心の中で一人悶えてたら、
突然、きゅって。
——手、掴まれた。
「……っ?」
驚いて見ると、
俺の手を両手で包んで、
そのまま、手のひらを上に向けさせる。
距離なくなる、
近い。
近すぎる。
吐息が、
普通に当たる。
「私、白藍 狛です」
しらあい…はく……、
そう言って、
指先で、
**すー…すー…**って
俺の手のひらになぞる。
「漢字は……
白に、藍色の藍…それで狛犬の狛、です」
なぞるたび、
くすぐったくて、
でも離したくなくて。
(……なんやこれ、ずるすぎる)
心臓、
エレベーターより早い。
書き終わったあと、
狛が顔上げて、
首ちょっと傾げる。
「海龍さんは……??」
——距離、
さらに詰まる。
顔、
ほんまにすぐそこ。
一瞬言葉飛んで、
視線迷子になってから、
「……海に、龍」
って小さく言う。
「りゅーってどの……?」
嬉しそうに目細めて、
今度は自分の手のひらを差し出す狛。
「じゃあ、書いてください」
(……終わった)
指、
震えそうになるの必死で抑えて、
そっと、
狛の手のひらに触れる。
ちっさ、…っかわい、
「海、は……こうで」
なぞりながら、
狛の指が、
無意識にぎゅっと絡んでくる。
エレベーター、
ぴんって到着音。
扉、
開く。
でも、
二人とも一瞬、動かん。
狛が、
はっとして手離して、
「あ……」
って小さく声出す。
俺、口元緩むの抑えきれんまま、
「……覚えた?」
って聞いたら、
「はい」
って、
またあの笑顔。
(あかん)
(2回目で、もう好きになる速度ちゃう)
そう思いながら、
並んで降りていく。
さっきより、
自然に近い距離で。
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