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#アモアスoc
ベルリウム
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ベルリウム
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コンコン、と。立ち並ぶ扉の中でも少しだけ重厚な船長室の扉が、ノック音を響かせる。
「水色か。入れ」
ちらりと視線を上げた黄色は、再び書類に目を落とした。視界の隙間に覗いたのは、予想通り水色の足元。タスクの進み具合やら保管庫の物資やら、そういった船内状況の定期報告だろう。そういえば前回水色がここを訪れたのは、最近ではない気がする。
「報せに来たぞ。受け取れ」
「感謝する」
「んー、そうだな、別に今月も目立った問題はなかった。強いて言えばあの問題児野郎共がカフェテリア爆破したくらいか?」
「それを問題と言うのだろう」
呆れながら紙束を受け取る。変わらないタイトル、変わらない表紙に目を遣って、中身をパラパラと確認する。タスク進捗、船員のスキャン診断結果、保管庫の物資の記録、予算額と実績額、カフェテリア爆破の件について―――。
報告書の裏表紙まで辿り着いて、一息吐こうとしたところで、ふとコーヒーカップが目に入る。何かを思いついたわけではないけれど、なんとなく、ページを捲り直す。
さっき見たページ。前も見た内容。ずっと同じ情報。―――少しだけ、違う場所。
「……コーヒーフレッシュが減っていないな」
「コーヒー、フレ……?……ミルクのことか?」
「そうだ」
保管庫の記録。馴染みの薄い名前が記された欄の横に、先月も見たような、そうでないような数。確か先月は、これよりもう少し数が多かった。買い足してはいない。だから、減っていないだけ。
「お前、ミルク入れないだろ。毎回ブラックで飲んでる印象しかないんだが」
「いや、委員長が……」
ふっと目が逸れる。報告書を閉じて、机の隅に置く。
「委員長? あー、まあ確かにあいつは入れそうだな。ブラック飲むやつの気が知れなーいとかほざいてそうだ」
「言われたな、実際に。……そうか、しばらく来ていないな」
「長期遠征じゃなかったか? また宇宙船渡り歩いてんだろ、ご苦労なこった」
肩をすくめる水色に、静かな眼差しを向ける。それでいて伏せ気味な黄色の瞳を見て、水色がハッと我に返った。何か気に障ることを言ったか、と少し顔色を悪くする。
「で、委員長がどうした?」
「いや……今回は随分長いな、と」
「そうか?」
「いつもなら今回の半分くらいで帰還するはずだ」
「詳しいな。マジかよお前、そんなこと覚えてんのか。別に、そんくらい大したことじゃないだろ」
「あくまで傾向だ。異常だから何かトラブルがあったのではないかという話をしている」
一体全体どんなヘラヘラ顔を思い出したのか、水色が少し眉を顰めた。そんな彼の耳に届いたのは、澄まし顔の船長がコーヒーを啜る音。まるで何でもないかのような顔で、ブラックコーヒーを身体に流し込む彼。
「異常か。ありえる範囲だろ。それともなんだ、上司が全然帰ってこなくて不安か?」
「不安、ではないな。奴は自分の価値を見誤ることが多い。今回もまた忘れてはいないだろうな、という感覚だ」
「……それ、不安って言うんじゃねぇのかな」
まぁベクトルは違うかも知んねぇが。そう呟く水色の声が聞こえなかったのか、黄色が問い返す。しかし水色は首を振って、今しがた手放したばかりの報告書を指差した。
「そんじゃ、用は済んだ。仕事頑張ってくれ。じゃ」
「ああ、また」
気怠そうに手を振って扉へ向かう水色の背を、じっと眺める。
扉が閉まり切ってしまってからも、黄色の手の中のボールペンは回り続ける。
くるくる。ぐるぐる。
一回転、止まって、逆回転。半身を起こしては沈めて。出していたペン先を、しまってみる。
なんだか奇妙な心地で。ボールペンがずっと踊るせいで、そのあとしばらく、仕事が滞った。
(自我)
AIさんにうちの子の話をリクエストさせたら、「本音が漏れる黄色」をリクエストされました。
書きました。
かわいいですね。
コメント
3件
いい、すごくよき 何やかんや些細なことから委員長のことを思い出しちゃう船長が今日も尊い あと最後のボールペンの描写で上手く言えないんだけど、余白か何かが生まれてる感じがしてなんか、あの、あれです、綺麗、快い、落ち着く
ああ、なるほど……! 黄色がコーヒーフレッシュの減り具合から委員長の不在を気にするの、すごく良いなと思いました。本人は「不安じゃない」って言うけど、ペン回しが止まらなくなっちゃうとこで全部バレてる(笑)。報告書の些細な数字から相手を想う気持ちが滲む描写、とても好きです……!🌷