テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
――司令部――
警報が、
一段低い音に切り替わった。
「敵艦隊、
予測侵入ラインを越えました」
分析官の声に、
空気が引き締まる。
スクリーンに表示される赤点は、
予想よりも速い。
「……早いな」
参謀が呟く。
「こちらの迎撃配置では、
包囲されるまで——
四十分もない」
恒一は、
立ったまま画面を見ていた。
数字も、
戦術も、
やはりよく分からない。
分かるのは——
「間に合わない」という空気だけだ。
「ガンダム出撃準備を進めろ」
指揮官の声。
恒一は、
反射的に返事をする。
「……了解」
それだけで、
役目は果たしたことになる。
だが。
次の報告が、
流れを変えた。
「敵主力、
戦艦級ユニット一隻を確認」
「前回と同型です」
——あの影。
雲を割って降りてきた、
黒い塊。
「……また来たか」
指揮官は、
短く息を吐いた。
「鹵獲目的は変わらない」
「こちらを“壊さず”
押さえに来ている」
「このままでは——」
参謀が、
言葉を続ける。
「ガンダムは、
時間を稼げても
包囲を破れません」
沈黙。
恒一は、
そのやり取りを聞きながら、
ただ立っている。
自分の話ではないように。
指揮官が、
ゆっくりと口を開いた。
「……判断する」
全員の視線が集まる。
「地下の“切り札”を使う」
一瞬、
音が消えた。
参謀の一人が、
声を絞り出す。
「——封印を解くのですか」
「他に選択肢はない」
指揮官は、
恒一を見る。
「ガンダムだけでは、
守れない」
「お前を囮にする気はない」
恒一は、
その言葉の意味を
完全には理解していなかった。
だが。
「……はい」
そう答えるしか、
なかった。
――地下区画――
重い扉が、
開く。
警告灯が、
次々と消えていく。
恒一は、
遠くからその様子を見ていた。
直接、
近づくことは許されない。
だが。
床が、
わずかに震えた。
低く、
腹の底に響く振動。
モビルスーツの起動音とは、
明らかに違う。
「……なんだ、
これ」
誰に向けたわけでもない、
呟き。
返事は、
ない。
「ガンダムは予定通り出撃する」
「地下の兵器は、
戦況に応じて——
段階的に展開」
指揮官の声が、
通信に乗る。
「恒一」
名前を呼ばれ、
背筋が伸びる。
「お前は、
命令通りに動け」
「それでいい」
「……了解」
理解していなくても。
選択していなくても。
戦争は、
もう動き出している。
格納庫。
白い機体が、
静かに待っている。
シラヌイ。
「……行くぞ」
誰に言うでもなく、
恒一は乗り込む。
その足元で。
地下深くで。
長く眠っていた“何か”が、
ゆっくりと起動を始めていた。
戦艦であることを、
まだ誰も口にしないまま。