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書くのめちゃくちゃ上手いですね!
【理想のお兄ちゃん】
俺は、いつだって兄弟の理想。
理想でいなければ、俺に価値など無い。
俺がそう思い、考える理由としては、
昔、母に言われたある”一言”が関係している。
当時6歳になる俺に母は言った。
「莉犬、貴方は皆のお兄ちゃん。6人兄弟の長男として生まれてきた義務があるの。」
と。
あの時は、ただ純粋にその言葉を呑み込んだ。
俺は、皆のお兄ちゃんで、お兄ちゃんになるために生まれてきたのだと言う事を素直に受け止め、必死に皆の頼れるお兄ちゃんになろうと努力した。
苦手だった勉強も、みんなの役に立つのなら…と、我武者羅に頑張った。
俺の一番嫌いな「人参」も、弟達が食べているの言うのであれば俺は顔色変えずに完食した。
全ては、弟たちの為。
そんな俺に、母は
「なんでそんなに劣化しているの。…こんなのになるのならば、”産まなければよかった”」
ズキッ…と、心に何かが突き刺さる。
初めての感覚に驚きを隠せなかった。
今までの努力は、全部無駄で。
むしろ「劣化」していたなんて。
「産まなければよかった」
その言葉が、これの脳にまとわりつく様に何回も何回もリピートされる。
それが、俺の心をぐるぐると掻き回す。
なに…これ…
気持ち悪い…
嫌な感じがする…
「ねぇ!!聞いてるの?!」
はははッ…
ぐちゃぐちゃだ。
心も体も全部。
大好きな母の言葉も耳に入らないなんて重症だ。
狂ってしまったんだ。
報われない努力に望んではダメだったんだ。
最初から母は”本当”の俺になんか興味なんか無いのだ。
期待など、持ってしまった俺が全て悪かったんだ。
俺は、母にとって要らない存在だった。
…ならば、何をしてもいいのでは…
何を犯しても母は俺に興味すら湧かないのだから注意なんてされない。
”いい子”を演じるのにも労力が要る。
なら、簡単で疲れない
”悪い子”をすればいいのだ。
誰も気にとめない。
それに、”本当”の俺になれる。
我慢したぶん、遊んでもいいのだ。
誰も心配しないからね…