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料理の片付けをした後、焚き火の近くで二人で座っていると、少しずつ明るくなってきた。



もうすぐ朝が来ることを告げるように、鳥たちの鳴き声が聞こえ始める。


それと同時に、火が消えて、気持ちのいい穏やかな風が吹いた。


まるで、新しい道に進むことをこの大自然が歓迎してくれているかのように感じた。




「明るくなってきたね。そろそろ出発しよう。

これ以上、ジイや村の皆には迷惑を掛けられないから……。


僕は旅の続きをするつもりだけど、かけらはこれからどうするの?」



「私は……――」



少し寂しい気持ちを感じて口を止めた時、太陽が昇ってきて眩しい光が私とレトを照らす。


それは寒い空気を忘れさせてくれるように暖かい。


目を閉じてすぅっと深呼吸してから決めたことを伝える。



「この世界の四つの国を知るために、旅を始めてみたい。

だから、まずは他の国に行ってみるよ。

きっと、戦争を終わらせる手掛かりが見つけられるかもしれないし」



「かけら……。そうなると、一旦お別れだね……」



何も分からないから、私は答えが見つかるまで歩き続ける。


この世界の平和に繋がることができたら、助けてくれたレトのためにもなるだろうし。恩も返せる。




「これ、貸してくれてありがとう」


マントを脱いで丁寧に畳み、留めていた紐を上に乗せてからレトに返す。



私は何も持たず、姿を隠さず、作業着だけ着て旅に出るんだ。


地図がないから行く先も決めていない。


たった一つだけあるものは、何とかなるだろうという根拠のない自信。



これが私の旅の始まり……――




「じゃあね、レト。

次に会った時は美味しい料理をご馳走できるように頑張るから」



「ありがとう。かけら」



少し寂しい気持ちがあるけど、私はレトに背を向けて歩き出す。



昨日通った道を戻って、広い平原に出てから、自分が行きたい道を選んで進もう。


土地勘がないから国境がどこなのか分からないけど、歩いていればそのうち着くはずだ――




しばらく歩いてから森の中に入り、木を優しく揺らす風の音が聞こえる静かな場所に着いた。



レトは、私と違う道を歩いているのかな……。



気になるけど、こんな私と一緒にいない方がいいんだから、これでよかったんだ。



レトはグリーンホライズンの王子で、やることがたくさんあるのだから……。



頭を横に降って、ポンポンッと頬を叩いて気を引き締める。



どこまでも続いている青い空を眺め、手を伸ばしても届かない太陽を見て求めていた自由を感じる。



今の私は、自分らしくいることができて幸せだ……。



誰もいなくて、なにもないからそう思えるんだろうけど……。



同僚たちに傷つけられるようなことを言われないこの環境は居心地よく感じる。



仕事で精神的に疲れて家に帰る生活をしていた時とは大違いだ……――




地面に薄っすらと見える道を歩いていると、行き先が二つに分かれた場所に辿り着いた。



どちらを進んだらいいんだろうか……。



看板も設置されてないし、見た感じどちらを選んでも深い森へと続いていそうだ。



昨日、レトが風が冷たいと言っていたみたいに寒くなってきている。


そろそろ夕方になるかもしれないから、街に行って暖かい場所を探したいところだ。



人がいそうなのはどっちだろう……。



右かな……?

それとも左……?



この選択で夜をどう過ごすかが決まりそうな気がする。


立ち止まって考えていると、草むらの向こうからガサガサと音がして何かが近づいてくる。



動物……?

それとも、人……?


なんだか、怖い……。



どうしたらいいの……?


誰か、助けて……――





「かけら!」



草を掻き分けて現れたのは、体中に葉っぱをつけた王子だった。


爽やかで清楚なイケメンなのに、今は短い髪が乱れていて、土で汚れたズボンを穿いている。



「レト!?」



「はぁ……、はぁ……。やっと……見つけた……」



膝に手をついて、呼吸を整えながら話してくるレト。


どれだけ必死になって私を探していたんだろう。



「僕も……、かけらと……一緒に行く……」



「だっ、ダメだよ!

レトはグリーンホライズンの王子様なんだよ?

私は他の国に行くんだから、危険な目に合うかもしれないし……」



「はははっ……。そうかもしれない……。

でも僕は……、まだ王ではないから……、自由だ……」


国を大切に思っている王子が争い合っている他国に行くなんて……。


一体、どうしてしまったんだろう。



すぐに理由を聞きたいけど、私はレトの背中を擦って呼吸が落ち着くのを待つ。



「大丈夫だよ、かけら……。

久しぶり走っていい運動になったから……」



「その格好……。

草むらを歩いて来たんだね」



「うん。獣道を歩いたからね……。

かけらと別れてから……、心がモヤモヤして、ずっと消えなかったんだ……。

なんで僕は一緒に行かなかったんだろうって……」



「この国にいるのは、当たり前じゃないの……?

レトは王子なんだし……。

それに、王様の役目だってあるんじゃ……」




「父である国王は、僕のことを構っている暇なんてない。いつも放ったらかしさ……。


でも、やりたいことは自由にさせてくれる。


だから僕は、戦地に行かないで、ずっとこの国を旅してきた。

見て回ったところがないくらいにね……。



でも、同じことを繰り返していても、この国は何も変わらないって思うんだ。


前に踏み出さないと、新しい道は開けない……」



「だけど、レトは……――」



「これからする旅で何が起こっても責めたりしないから安心して。

それに、かけらは……、僕が守る」



先に行かないように私の腕を掴み、引き止めてくるレト。


その手の力から、強い意志を感じる。



恐らく、振り払ってもまた掴んでくるだろう。


決意をしたように真っ直ぐな眼差しで私を見つめてくるのだから……。




「本当に……、一緒に来てくれるの……?」



そう言ってみると、レトは微笑んでから私の腕を離し、握って欲しそうに手を差し出してきた。



「僕の夢は、民の生活を幸せにすること。

グリーンホライズンを平和に導くために戦争を終わらせたいんだ。

そのために、かけらと旅をして、この世界のことをもっと知りたい」



「この先、どうなるか全く分からないよ……?」



「覚悟してるよ。もう、決めたことだから」




私は、王子を止めることができずに手を握ってしまう。


きっと、グリーンホライズンの人たちは全員反対するだろう。


見つかったら、村でされたことよりも大変な目に合うかもしれない。


それでも、私はレトと一緒に前に進もうと思う。



心細かったから、来てくれたのが嬉しくて涙が浮かんでくる。



私はもうひとりじゃない。味方がいるんだ……。



レトの手をぎゅっと握ると、今まで見た中で一番の笑顔を見せてくれた。



「僕はかけらと一緒に過ごしたいんだ。

これからよろしくね」



恋戦〜王子様たちに溺愛されて〜

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