テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
瀟洒な宿屋の前に、記者らしき男たちが中腰で待機している。ハンチング帽をかぶった彼らは、左右に分かれて出入り口を見張っていた。
「来たぞっ。タイミングを逃すなよ」
二人の男性記者が包囲の輪を縮めると、出口からうら若き女性が現れた。
ふわりとなびかせたブロンドヘアの毛先には、軽いパーマがかかっている。末広の二重瞼が美人顔を引き立てていた。一見聖職者風の青いローブを纏っているが、際どいスリットが内面とのギャップを示している。
「おはようございますっ。ゾノドコ新聞ですぅ」
丸顔&丸鼻の男性記者が女性に肉薄する。
「僧侶のミレニさん、ですよね。勇者様は見当たりませんが、別行動でしょうか?」
片割れの痩身記者がすかさず追いすがる。
「事情があるのよ、詮索しないで頂戴」
ミレニが面倒くさげに視線を逸らす。するとその裏から、こっそり宿屋を出てきた者がいた。
「ん、なんだこいつら。君の知り合いか?」
若い貴族風の優男がミレニに問いかける。彼女が頭を抱えた瞬間を記者連中は見逃さなかった。
「これはっ! 昨夜はお楽しみだったということで、間違いないでしょうか?」
「魔王討伐の旅の最中に、こんな破廉恥な所業が許されるとお思いでか?」
怒りに沸いたミレニが胸の谷間から杖を取り出す。
「あ~、もう。面倒くさっ!」
言うや杖を振るうと、周囲に濃霧が立ち込める。
「ぐわっ! なんだこりゃ?」
「幻惑の魔法を使いやがった! ひどい奴だ」
煙でむせた記者たちが激しくせき込む。霧が晴れたとき、ミレニたちは姿を消していた。
***
馬車を降りたユミヨたちは、湖畔で水飲み休憩をとっていた。目前には歓楽街らしき集落がある。周囲の荒野とケバケバしい街並みのギャップは激しく、違和感ありありだった。
「この街はリディオパークという旧市街さ。勇者パーティの一員、僧侶ミレニが待機しているらしい」
モズルフが、腕組みしつつ前方を指さす。
「共和連合お抱えのプリーストですよね。美人らしいから、実物会ってみたいなぁ」
ユミヨが興奮気味に語る。
「勇者様が大怪我してるってのに。別行動とは感心しねぇな」
ロコモンがしかつめらしく意見をのたまう。
「僧侶らしからぬ奔放な性格と聞いている。我が社のゴシップ担当が張っているところだ」
モズルフが渋面で喉を鳴らす。
「私たちも、そこに合流するのですか?」
平板な口調で尋ねたユミヨに対し、モズルフは頭を振る。
「君には街頭インタビューを実施してもらう。これを見たまえ」
モズルフがジャケットの内ポケットから地図を取り出す。ユミヨが覗き込むと、目前の市街地の簡易地図だった。
「その門から入って左端が居住区。君は右エリアのメーンストリートに張ってもらう」
「承知しました。インタビューの内容を教えて下さい」
ユミヨがいそいそと筆記用具を用意する。
「勇者の故郷凱旋に対する意見を聞きたい。忖度無しの、率直な意見を引き出してくれたまえ」
「初めてだけど、頑張ってみます!」
ユミヨが意気軒昂に両手を握る。
(ミレニさんは勇者パーティと合流するはず。その場所も分かっているし、取材ついでに行ってみよっと)
ユミヨは地図の左上、居住区に注目する。その外れには、今は廃れた商館がポツネンと佇んでいた。
#ファンタジー