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思えばこの日の午後は急転直下の驚きに溢れていた。
若しかしたら、学生たちの選抜試験を面倒だとさぼり、弟子に任せきりにしていたレイブが、ドタマに来てしまった学院長ズィナミに呼び出された前日から今日の運命は定められていたのかもしれない。
久しぶりに実施した選抜試験。
いつも通り無双を果たしたレイブに対して、多分に個人的興味が勝った感じのズィナミの挑発からのガチ勝負。
突然告げられたモンスタースタンピートに色めき立つ学院の中で、『役立たず』なレイブ一派は常と変わらず食料集めに出掛けてしまった。
結果……
敵の脅威の度合いを測り損ねた挙句、気が付けば呼吸もままならないモンスターたちの攻撃によって圧死直前まで追い詰められてしまっていた。
死を覚悟した瞬間、スリーマンセルのギレスラ、ペトラと力強く手を握り合ったレイブの前には、大量のモンスター達を爆殺し、ニヒルな笑顔を浮かべる男前が現れた。
話をしてみると、男前は子供の頃から事ある毎にスリーマンセルをちょいちょい助けてくれていた存在、神様であり悪魔のアスタロト、魔界の最高位に君臨する魔神である事が明らかに……
スタンピートの原因だと思われた邪竜、実はメッセンジャーであった竜王配下、四天王筆頭らしいメルルメノクを可愛いラマス、尊いアスタロトと配下の悪魔の力によって救う事を為し得たレイブは胸を撫で下ろした。
生き長らえただけでなく、強大な力を得たメルルメノクに倣うように、魔術師修練所、通称バストロ学院の幹部達は次々とアスタロト配下の強大な悪魔たちをその身に宿していく。
永の歳月、鍛え続け求め止まなかった魔術師や闘竜、獣奴としての未来を消す事になると気が付く事も出来ないままで……
悪魔らしく歪んだ笑顔に戦慄したレイブに対して、身に宿った魔神、アスタロトは言葉を続ける。
世界は変わった…… と
そして続けて掛けられた言葉はレイブを更に困惑させるに充分な物であった。
悪魔たちは戻ってくる……
アスタロトの発した言葉の真意は一体何を顕しているのか。
レイブたちスリーマンセルの行く末、そして彼等の家族とも言うべき学院の面々の未来とは、そしてラマスを始めレイブにしか頼る者を持たぬレイブ一派、七名を待ち受ける運命は……
息を飲み、じっと成り行きを見守るレイブの前で、全てを見透かすかのような深く不思議な光を湛える瞳を持つ、魔神アスタロトは言葉を続けたのである。
『ほれレイブ、あいつ等の話もついたみたいだぞ』
「あいつら? ああ、学院長と竜、メルルメノクか? あっちで話していたんですね」
こちらに歩いてくるズィナミ・ヴァーズと、少し後ろを付いてくるメルルメノクに顔を向けて答えたレイブの脇では、長めの話に飽き始めてしまったラマスがクローブ、四葉のヤツなんか探していたりした、ほんわかしていてとっても平和だ。
ズィナミの目には先程までアスタロトに対して浮かべていた敵意の類は既に無く、寧ろごく親しい者に対する親愛の情っぽい色が浮かんでいた。
「アスタ様少し宜しいでしょうか? メルルメノクの話を聞きましたら何やら緊急事態の様でぇ」
受けるアスタロトも同様に緊張とか皆無である。
『ほう、緊急、か』
「ええ、メルルメノク、アンタから話しなさいな」
『は、はい、実はですね……』