テラーノベル
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しょうちゃんは彼氏がいる状態で真実田くんに服選びを手伝ってもらってて
いつかその現場をしょうちゃんの彼氏に見つかって
「おい。どーゆーことだよ」「あ、違うの。プレゼント選びを手伝ってもらってて」
「誤解です!本当に」「ふんっ」「殴ったね?父さんにも」「大丈夫?真実田くん。だから誤解だって」
「もういい。別れよ」「え」「彼氏に黙って男に会うって、誤解されて当然だろ。
そんなことをへーきでやるやつだとは思わなかった」「そ、そんなぁ〜」…的な展開になるのでは?
という汝実(なみ)の言葉を思い出しながら、いつものように駅前で希誦(きしょう)を待つ明空拝(みくば)。
「いつものようにお待たせー」
なんていう冗談を交わす仲になっていた。
「いえいえ」
しかし、明空拝はいまだに希誦に対して敬語。そしていつものようにアパレルショップ巡りをした。
カジュアルな、低価格帯の「24/7 magic」「Junk Junkie Junkest」「3 o’clock snacks」を巡り
試着を繰り返し、いつも通り〆(シメ)はファミレス。
「うん。やっぱスカートとかも似合うよね。顔が女顔だから」
実は今日は試着の途中で
…
「はい。次これね」
「あ、はい」
明空拝は希誦から渡されたコーディネートを受け取り、先程着たコーディネート一式を希誦に返す。
彼氏さんいるのに彼氏さん以外の男と2人で会ってるの、ヤバくないですか?
彼氏さんいるのに彼氏さん以外の男と2人で会ってるの、ヤバくないですか?
よし、こんな感じかな
と今日言おうと頭の中でシミュレーションしながら服を脱ぐ。上、そして下を脱ぎ、ハンガーに綺麗に戻す。
そしてパンツから履こうと思い、ハンガーにかかったパンツらしきものを探した。しかし
「…ん?パンツ…ないぞ?」
思わず声に出た。パンツはなかったがその代わり
「…」
ハンガーにかかった、脚を2本通す部分がない、ロングスカート的なものがあった。
「…これは、おしゃれなアウターとかではなく」
ハンガーにかかったそれをぐるっと1周見て見たが、どう考えてもロングスカートだった。
アウターは他にあるし、インナーというかYシャツもある。
「…履、くの?」
めちゃくちゃ抵抗があった。明空拝には姉がおり
明空拝が北海道にいるときもよく姉はスカートを履いて出掛けていた。
「みく(明空拝の呼ばれ方)女顔だし、スカート履いてみる?」
なんて冗談を言われたこともあった。しかしそのときも
「やだよ」
と相手にすらしていなかった。なので別にスカートを履こうと思ったことはないのだが
スカート履いた感じってどんなんなんだろ。とは思ったことはあった。
「…ふぅ〜…」
息を吐いて覚悟を固める。ハンガーから外し、脚を入れる。
「…うわっ。気持ち悪っ」
なにも布地を介さずに、太もも同士の肌がぶつかる。しかも
「なんか…スースーする…」
スースーした。コーディネート一式を着て、顔だけを試着室から出す。
「白風出(しらかで)さん?」
希誦はすでに次のコーディネートを固めて試着室前に立っていた。
「遅かったね」
「いや、あの…」
「あぁ、スカートだからね?」
「間違いじゃ、ないんですね…」
「うん」
「…」
「ほら、はよ出てきて」
固唾を飲んで、覚悟を決めて試着室のカーテンを開けた。
「おぉ〜…。やっぱ似合う」
「複雑な心境です」
…
なんてことがあった。
「いや、ま、メイクで顔面偏差値盛ってるんで」
と言うと希誦がぷっっと笑う。
「顔面偏差値盛るって言葉初めて聞いた」
「え、女子ってそーゆー会話してるんじゃないんですか?」
「んん〜…いや、正直知らん。私高校んときは陸上陸上だったし
ま、多少出かける時はメイクしてたけど、周りの女子に比べたらメイクの話とかには疎かったから」
「そうなんですね」
「うん。だから顔面偏差値盛るって言葉、なんかおもしろいなぁ〜って。
流行るかもよ?今年の流行語大賞取ったりして」
「いや、仮に流行って流行語大賞になったとしても、受賞するのは自分じゃないですよ」
「そお?」
「ニュースとかで受賞映像とか見てたら、出処がわかんない言葉は基本大賞にはならないし
大賞に輝いても、受賞するのは誰でもないですよ」
「そうなんだ?ニュースとか見ないから」
「そうなんですね」
不思議そうな顔をして飲み物を飲む明空拝。
「なに不思議そうな顔してんの。普通ニュースなんて見ないでしょ」
「そうなんですね。じゃあなに見るんですか?」
「…」
斜め上を見ながら考える希誦。
「…。テレビあんま見ないかも」
「見ないんですか?」
「ううぅ〜ん…。いや、まったく見ないことはないけど、百舌鳥さんが出てるバラエティ番組くらいかな」
「あぁ〜百舌鳥さん」
「うん。テレビで唯一おもしろいんじゃない?他はゲストがしょーもないアイドルとか
単純に飽きたタレントとかが出てて「あ、もういいわ…」って。なんか朝唐揚げ、昼唐揚げ蕎麦、夜チキン南蛮
次の朝、前の夜の残りのチキンがおかずとして出てきてって感じで胃もたれする感じ?
だからテレビもういいかなって」
「なるほど。陸上とかは見ないんですか?」
「見ないなぁ〜…。もう競技者としては引退したし
現役のときも自分との闘いだったから、あんま他の人のとか見なかったし」
「そうなんですね」
「真実田(まみた)くんは?スポーツなんかやってた?」
「あ、いえ。自分はスポーツはからっきしで」
「運動音痴タイプ?」
「まあ…、得意ではー…なかったので」
と苦笑いしてから飲み物を飲む明空拝。
「そっか。だからスカートが似合ったんだ」
ゴポッっとコップの中で飲み物を吹く明空拝。
「かっ…関係あるんですか?」
「いや、筋肉量も少ないし、華奢だし」
「あぁ…なるほど…」
でもスカート似合うって…複雑だなぁ〜…
なんて思いながらも楽しく話していた明空拝。
「あ、いや!違くて!」
と言う明空拝にキョトンとする希誦。
「今日は言おうとしていたことがあったんです」
「は、はあ」
姿勢を正し畏(かしこま)る明空拝。
「し、白風出さん、彼氏さんいるのに、彼氏さん以外の男と2人で会うのは
よっ、よろしくないんじゃないんでしょうか!」
よしっ!言えた!
と思った明空拝。しかし言われた当の希誦は平然とした顔のまま。
「ん?え?あ、声に出てなかった?」
あれ?言えてたと思ったけど、心の中だった?
そう思い
「し、白風出さん」
「はい」
「かっ、彼氏さんがいるのに」
と改めて言おうとしたら
「いや、ちゃんと聞こえてたよ」
と希誦が言う。
「え、あ、そうですか?」
「うん」
「でも、なんか、その、反応が…」
「うん。なに言ってんだろって思って」
「え?」
あ、口には出せてたけど、緊張で呂律回ってなくて理解されてない?
と思った明空拝は口をほぐすように「あおあい」と言うように口を開けて動かす。そして
「白風出さん」
「はい」
「彼氏さんがいるのに」
と改めて言おうとしたが
「わかったって」
と希誦に言われた。
「え?」
「聞こえてたってば」
「でも自分の滑舌が悪くて聞き取れなかったんじゃ」
「いや、…あぁ、だから口動かしてたのか」
と納得する希誦。
「いや、聞こえてたし、ちゃんと内容も理解してるって」
「でもなに言ってんだろうって」
「うん。彼氏なんていないのになに言ってんだろうって」
「…」
「…」
ん?
頭の中が真っ白になった明空拝。
「ん?」
ストローで飲み物を吸う希誦。
「ん?彼氏さんがいない?」
ストローで飲み物を吸いながらコクン頷く希誦。
「ん?今ここにいないってこと?」
ストローで飲み物を吸いながら左右に頭を振る希誦。
「え?今現在白風出さんにはお付き合いしている方がいらっしゃらないということ?」
ふっっと笑うと同時に咽せて咳き込む希誦。
「あ、大丈夫ですか?」
希誦は咳き込みながら掌を明空拝のほうに向けた状態の手を明空拝のほうに突き出す。
「…はあぁ〜…死ぬかと思った…」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。真実田くんがおもしろいこと言うから」
と言いながら人差し指を第二関節で曲げて、その曲げた部分で目頭の涙を拭く希誦。
「おもしろいこと、言いました?」
「なんかマチアプ(マッチングアプリ)で硬ぁ〜い人とマッチした感じだったわ。
マチアプやったことないから知らんけど」
「そ う なんですね?じゃあ彼氏さんはいらっしゃらない」
「いない彼氏にも敬語?使うのね」
「あ、そうですね」
「てかいまだに私にも敬語だよね」
「そ う ですね」
「なんで?硬いからタメ語で話してほしい感はあるんだけど」
「あ、いや、なんかタメ口って馴れ馴れしい感じがして」
と言われた希誦はストローで飲み物を吸った後
「え、私には馴れ馴れしくてよくない?」
と言った。
「あ、え、そうなんですか?」
「もう何回一緒に服の旅してると思ってんのさ」
「何回ですかね…」
斜め上を向いて思い出しながら指折り数える明空拝に
「いや、真面目に数えなくていいから」
と止める希誦。
「あ、そうですか?」
「ま、真実田くんが嫌なら敬語のままでいいけど」
「嫌では…ないんですけど…。がんばります」
「頑張らな…」
なくてもいいんだけどなぁ〜…
とは思いながらも
「うん。できる限りで」
という風に言った。
「…。ん?彼氏さんいらっしゃらないんですよね?」
「うん。いないよ?」
「…じゃあ弟さん?」
「ん?弟?弟はいるよ?」
「あ、弟さんなんですね」
「ん?自己完結しないでよ。私の弟がどうかした?」
「え、いや、彼氏さんの誕生日プレゼントを選んでると思ってたんですけど
彼氏さんいらっしゃらないって言ってたので、じゃあ弟さんの誕生日プレゼントなんだって」
「…。あぁ、この服の旅が?」
「はい」
希誦は小さく笑って
「違う違う」
と言った。
「え。違うんですか?」
「違う違う」
「てっきり自分をマネキンと見立てて、似合う服とサイズ感見てるのかと」
「あぁ〜なるほどね?でも私の男まだ小学生だから、真実田くんより全然小さいからね」
「あ、そうなんですね」
「うん」
「…じゃあなんで?」
と明空拝が聞くと希誦は空になったグラス刺さったストローをクルクル回す。
氷が氷同士、そしてグラスに当たってカラカラと涼しげな音を立てる。そして言いづらそうに口を開く。
「いやさ?私地味じゃん?」
苦笑いしながら言う希誦。
そ…うでもないけど
と思うが口を挟まずに聞く明空拝。
「だからカッコいい服とか可愛い服、奇抜な服、派手な服とか似合わないのよ。
さっき真実田くんが言ってたマネキンじゃないけど、真実田くんのほうが女子力高いし、女子として可愛いし」
男子なんですけどね…
と思うが口を挟まずに聞き続ける。
「だから、ま、私が着てみたい服を真実田くんに着せて満足してるっていう…。ごめんね?」
舌こそ出してはいないがてへぺろ的な感じで両手を合わせて謝る希誦。
「お詫びとして真実田くんの誕生日にスカートのコーディネートプレゼントするから」
「あ、いや、スカートは…」
「冗談だって。ちゃんとしたコーディネートプレゼントするから許してくれ」
「あ、いえいえ。許すとか。自分としては全然楽しいので」
「あ、そお?それならよかったけど…」
「…白風出さん」
「ん?」
「自分で着たいっておっしゃってましたよね?」
「おっしゃ、ま、おっしゃいましたよ?」
「…実は自分も、メイクしたくて悩んでたんです」
「そうなんだ?…たしかに最初会ったときはメイクしてなかったか」
「はい。でも流来(るうら)、あ、えぇ〜っと…杉木(すぎ)か、杉木流来に相談…というか、したんですよ。
そしたら自分に自信が持てた…いや、自信は持ててないんですけど…。
なんて言ったらいいのかな…。とにかく、1回、1回杉木流来に話してみてください!
悩んでるなら、なにか解決策が見つかる、…かもしれないんで」
「自信なさげ」
とクスッっと笑う希誦。
「すいません。悩み解決します!って言えたらいいんですけど
自分はこの世に絶対や100%はないって自分は思ってるし、自分が単純なだけだったかもしれないし」
「真面目か」
「すいません。自分が白風出さんの悩みを解決させてあげられたら一番よかったんですけど
自分はそんなスゴい人でもなんでもないので…」
「ううん。気持ちだけでも嬉しいよ。ありがとね、真実田くん」
と微笑む希誦。
「あ、いえ」
「…」
あれはぁ〜…悩み…ちゃ悩みなのか…
と思ったので
「うん。ありがとう。杉木くんに話してみるよ。期待はせずに」
と冗談混じりに言った希誦。
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