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矢代チーフからは何も連絡などはないまま半月あまりが過ぎて、私ももう半ば諦めかけていた頃──
会社帰りに駅に向かう途中で、「川嶋さん!」と、背後から呼びとめられた。
この声は、矢代チーフだと思う。だけどどう反応したらいいのかもわからなくて、振り返ることもできずに立ちすくんでいると、
「川嶋さん」と、もう一度呼んで、矢代チーフが追いついてきた。
「これから帰りか?」
「はい……」とだけ頷く。
「だったら、一緒に夕食でも……」
言い終わらないうちに、頭を横に振った。
「……どうして?」
訝しげに首を傾げるチーフに、「だって、チーフはお見合いを……」そこまで口にすると、目尻に涙がじわりと溜まった。
ずっと音沙汰もなかった上に、お見合いも決まっているんだから、今になってもう声なんてかけてこないでほしいのにと、泣きそうなくらいに感じていた……。