テラーノベル
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今日はライブのリハーサル。
初めての会場だったから色々と裏のルート等を確認して楽屋に戻る
大森「おつかれ〜、、、あら?」
扉を開けると知らない人が居たため涼ちゃんの方を見ると、ここの会場の責任者らしく、俺達にわざわざ挨拶しに来てくれたみたいだ
大森「あ、初めまして。大森です。これからよろしくお願いします」
『こちらこそ!いつも曲聞かせてもらってます!』
大森「え〜嬉しい、ありがとうございます!」
自分で言うのもなんだが、ここまで知名度が上がると、こういう”誰かに挨拶”をするのは大体スタッフがしてくれるから新鮮で嬉しかった。
だけどさっきから視界の端で座っている涼ちゃんと若井の顔が曇り続けているのが妙に気になった
『いやぁ〜、それにしても大森さんは凄いですね!昔は”要らない”なんて言われてた藤澤さんをここまで持ち上げたんですもんね!』
若井はゆっくりとその人を睨みつけ、涼ちゃんの肩はビクッと震えた。
あぁ、そういうことか。
大森「藤澤は自分の努力でここまで来たんですよ〜。凄いですよね、彼らって本当に凄いんです笑」
悪気は無いような言い方だった。
でも俺もモヤッとしたのは確かで、その人が気を遣わない程度に訂正する
『いやいや笑。でも藤澤さん1人じゃ何も出来なかったでしょう。やっぱり曲を作った大森さんが一番凄いんじゃないですか?笑」
大森「いや…..それは違くて、」
俺が返事に困っていると、いつの間にか俺の後ろに若井が立っていた
若井「…要するに、うちの藤澤は無能で、大森に縋りついてるだけの人間って言いたいんですか??」
『、は?』
大森「若井、ちょっと…」
若井「そうとしか聞こえないんですけど。悪気が無いからって嫌味が正当化される理由にはならないでしょ笑」
若井がそこまで言うと、その人は怒りながら楽屋を去っていった
大森「お前言い過ぎだよ若井、。どーすんのよ、もうすぐ本番だよ?」
若井「あの人、わざとだよ。話聞きたいなら本人から聞きなよ」
そう言って若井も楽屋を出た。
…気まづい。涼ちゃんと二人きり
藤澤「…ごめんね、俺のせいで。俺は大丈夫だから後でみんなで謝りに行こうね」
ふと口を開いた涼ちゃんを見ると、にっこり微笑んでいた。
昔の涼ちゃんなら、今頃膝を抱えて泣きじゃくっていただろう。
けど今の涼ちゃんは優しく笑って周りの事もきちんと見ている。
確実に成長しているのだ、彼は。
大森「….ちょっとまってて」
俺は走って会場を出た
大森「ただいま」
藤澤「おかえり…。どこ行ってたの?」
10分もかからなかったと思う。
俺は机の上に袋を置いた
大森「…若井には内緒ね。」
口に人差し指を当ててから袋の荷物を取り出す
藤澤「わ!これめちゃくちゃ高いやつじゃなかった?!」
明らかにテンションが上がってる彼を見て俺は頷く
大森「そ。隣にお店があってさ、後で買おっかなーって思ってたの」
どっちがいい?と差し出したのはバニラとストロベリーのアイス。
話を聞くなら重い空気にはしたくなくて、走って買いに行ったのだ
藤澤「どっちがいいって……そんなの俺がバニラ選んだら元貴何も食べれないじゃん笑。元貴いちご嫌いでしょ?」
そう言って涼ちゃんはストロベリーのカップを受け取った
大森「分かってんじゃん笑」
大森「んー!うまぁ」
藤澤「ほんと?いちごもめちゃくちゃ美味しい!」
目の前で涼ちゃんが口を開ける。
図々しい奴め。と思いながらも俺の分を掬って口に入れてやると嬉しそうに頬張った
大森「…で、さっきの人は?なんであんな涼ちゃんに酷いこと言ってたの?」
食べ終わる前に聞いちゃおうと、涼ちゃんの方を見る
藤澤「あ〜えーっとね、昔の….バンドメンバーなんだよね」
大森「え?涼ちゃんバンドした事ないって言ってなかった?」
藤澤「実は1回だけ組んだことあったんだけど、解散が早すぎて言うまでじゃないかなって」
大森「へぇー。で、解散理由が涼ちゃんってこと?」
彼が小さく頷く。
藤澤「俺はその時あんま本気でやろうとか考えてなくて、熱意の差で喧嘩して解散して…そこから連絡も取らなかったから、多分向こうはずっと俺のことが嫌いなんだと思う」
よくある話だ。と相槌をうちながら納得した。
大森「涼ちゃんはさ、悔しくないの?あんな言われてて…」
だって昔はあんなに弱かったじゃん。と言いかけた所を涼ちゃんは優しく笑った
藤澤「大人になろうって思ったんだよね。遅すぎるけど、2人の背中を見てこんなんじゃやっていけないなって」
大森「でもさっき涼ちゃん怯えてたよ。若井が反撃してる時も」
イジるように言うと、涼ちゃんは恥ずかしそうに下を向いた
藤澤「そりゃ…言われたら傷付くよ?それにあの時は若井にまで飛び火がいってほしくなくて、それが怖かった。傷付くけど、昔とは違って俺には俺のことを大切にしてくれる人が居るから、今更あの人に嫌われたってなんともないよ」
言い終わる涼ちゃんと目が合う。
クサいしウザい。
けど何故か照れてしまって、俺は焦って話を逸らす
大森「…あとで謝りに行こ。お菓子、、とか持ってかないと、」
それと同時に2人の携帯から通知音が鳴って、それを確認した涼ちゃんがクスッと笑った
藤澤「謝りに行かなくても….良さそうだね笑」
え?と顔を上げて涼ちゃんの画面を見ると
“謝罪完了。なんかめっちゃ良い人だった。そして元ギタリストらしい” (若井)
そんなトークと共に2人のツーショット。
大森「いや普通に仲良くなってんじゃん笑」
藤澤「喧嘩したけど、良い人ではあったからなぁ笑」
あの時怒って出ていったはずの若井が、自分の過ちに気づいて1人で謝りに行けたのも、自分に自信を持って強くなれた涼ちゃんも、目に見えてなかっただけでちゃんと2人は大人になれていた。
そんな2人が嬉しくて、溶けたアイスを口に入れた。
大好きで大切で誇りな2人が、どうか深く傷付く事がありませんように。
なんて願いながら今日も俺達はステージに立つ
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