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「さあ、そしたら、お昼にしましょう」と母
予約していた、懐石料理が届き4人でいただく
「会社は、どうするんだ?」
「後任が出来るまでは、続けようと思うの、新人を育てないと……1年ぐらいかかるし、誰か選んでもらうように人事にお願いしないと……」
「まあ、人事部長には話しておくが……」
「人事部長に話したら、全員に話が回るわよ」
「そうだろうな、まあ、めでたいことだし、いいんじゃないか?」
「いいの?」
「ん? 何か都合悪いことでも?」
「あ、そうだね、特にないか……」
──お父さんに見つからないように、隠してたんだった。もう隠す必要がなくなった。
「お父さんが、案外、スムーズに許してくれたから、拍子抜けしちゃった」
「ん? そうか? 杉野くんのことは、若手の《《やり手》》だということは、聞いていたからなぁ、美優らしい選択だな、と思ったよ」
「そうよね、お父さんのお眼鏡にかなう人は、洋平しか居ないわよね。でも、それだけじゃないから、私は、洋平の人柄に惹かれたんだから……」
──美優〜♡とニコニコしながら見つめる洋平
「そうね、誠実そうで、とっても優しそうね」と母
「あ、いえいえ恐縮です」
「優しいわよ〜」
さすがに、惚気に聞こえたのか
父が、咳払いをしながら、黙々と食べる
いくつになっても、娘は可愛く
会社の上司という顔ではなく、父親の顔になった
洋平は、一瞬|怯《ひる》んだ。
「美優、お爺ちゃんの所へ行ったの?」と母
「あ、うん、久しぶりだったから……」
「お婆ちゃんから電話があったわ」
「そうなんだ」
「お爺ちゃんが、杉野くんは良い奴だから、応援してやれ! って言ってるって……」
「あは、そうなんだ……」
「なんだ、先に話したのか?」
「うん、お爺ちゃんに聞けば、お父さんのことが分かるかなぁ? と思って……」
「なんだ、それ! で、親父はなんて?」
「洋平の課長昇進も推してくれてたんだって、もちろん私の彼氏だとは知らなくて……だから、太鼓判を押してくれた」
「そうか、親父の耳にも入ってたか? 杉野くん、会社から相当期待されてるな、これからが大変だな」
「はい、光栄です」
「頑張ってどんどん昇進してもらわないと……」
「はい、全力で頑張ります」
「あまり、力まないようにな! 会社人間になって家庭を顧みないと、家庭不破になって、美優からこっちへ苦情が届くからな」
「はい、そうですね、気をつけます」
そう言って、父にお酌をしている。
洋平は、車なので、ノンアルコールで……
父がお酌をしてくれている。
「運転代行に任せて、呑んだら?」と父は、勧めたが
洋平は、「このあと、指輪を買いに行きたいので……」
「お〜そうか……」
美優は、知らなかったので驚いた!
「少し前に買いに行こうと思っていたのですが、その前にご両親にご挨拶を〜と思いまして……私は勉強不足で、お父様、お爺様が同じ会社だとは、その時、初めて伺いまして……」
「そうか、それなら良かった。祖父が役員だからと美優に近づく奴も居るか? と思っていたから」
「お父さん! なんて言い方」
「だから、杉野くんは違って良かったっていう話だよ」
「うん、そうだね」
「洋平さんは、純粋に美優を見初めてくれたのよね?」と母
「はい! そうです」
「良かったわね。この子ももう27歳だし、いつ結婚するのかしら? と心配してたのよ」
「そうだったの?」
「そうよ。で、いつ入籍するの?」
「洋平のご両親にもご挨拶に行ってからよね」
「はい」
「ご両親は、何をされてるのかしら?」
「両親とも教師をしております」
「あら、そうなの?」
「はい、父は高校の教師で、母は小学校の教師です」
「そう。ご兄弟は?」
「5つ下に弟が居ます」
「あらそうなんですね。美優の1つ下ね」
「はい。弟も小学校の教師なので、私だけが違う世界です」
「なぜこの会社に?」と父
「もともとは、私も教師を目指していましたが、理系に興味を持ち、突き進むと面白かったので……」
「そうか、だから聡明なんだなぁ」
「いえいえ、恐縮です」
「さあ、これから指輪を買いに行くなら、あまり引き留めてもね」
「うん、じゃあそろそろ行って来る」
「ご馳走様でした。ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します」
と、洋平が言うと、父が
「こちらこそ」と、洋平に握手を求めた。
──良かった
「それでは、失礼致します」と、丁寧に……
「じゃあ」と……
玄関で、母と別れた。
見えなくなるまで、母が見ているので……
角を曲がり、
車に乗るまで、洋平は無言で……
車に乗り……
「はあ〜良かった〜」と、美優に抱きついた。
「ふふふふ、頑張ったね、ありがとうね〜完璧だったよ」
「うん、良かった〜」
チュッと、軽くして
「じゃあ、指輪買いに行こう」
「うん、ありがとう。驚いたよ」
「この前、あまりに驚きすぎて、買いに行けなかったから……婚約指輪と、結婚指輪も注文しておこうか……」
「うん、いいの?」
「イイよ」
「洋平のご両親には?」
「母には、電話で話してある。喜んでた。もう俺31だし、結婚しないんじゃないかって心配してたみたい。また、美優に会わせてねって言ってたから……」
「そっかあ〜嬉しいなぁ〜」
「来週でも、ウチの実家へ行こうか?」
「え? あ〜そうよね。なんか緊張する」
「今度は、美優の番。大丈夫だよ。美優は完璧だ!」
「そんなことないよ。あ〜今から緊張しまくり〜」
「大丈夫」って、手を繋いでくれた。
そのまま、宝石店へ
「え? こんなに高級なお店で買うの?」
「きちんとした物を買いたいから……」
「いらっしゃいませ」
「婚約指輪と結婚指輪を見せていただけますか?」
「かしこまりました。こちらが婚約指輪、あちらが結婚指輪になりますので、まずは婚約指輪からどうぞ」
「ありがとう」
「どれがいい?」
「え〜たくさん有り過ぎて……」
「そうだね〜これなんかどう?」
「え!」
洋平は、とっても大きくて高価な指輪を指差した。
思わず無言で、首を横に振った。
「ん?」
「そんなに高価な指輪は……」と小声で……
お店の方が、ガラスケースから出した。
「最高の輝きと品質のダイヤモンドでございます」
「うわ〜とっても綺麗ですね」と、洋平
「もう少し小ぶりで綺麗に見えるものなら……」
「どうして? 小さい方がいい?」
「うん、小さい方が使い易いし……」
「美優、こっちの方が綺麗だよ」
これから先だって、お金がかかるのに、指輪にそんなにお金をかけなくても……と、美優は思った。
何点か並べてもらい、指に嵌めて確認
洋平は、大きい1粒ダイヤを勧めた。
美優は、やはり小ぶりの方がいい。
「遠慮してない?」
「うん、だって小さい方が可愛いし、嵌めてても
違和感がないし…」
「そう?」
「うん」
「じゃあコレで……」
「かしこまりました。ありがとうございます」
「ありがとう」
「どういたしまして……」
サイズを調整していただき、刻印をしてもらい、
後日、引き取りに来ることにした。
「では、結婚指輪は、こちらになります」
「シンプルなのがいいね〜」
「うん、これなんかどう?」
「可愛い〜出来ればキズが目立ちにくい物がいいなぁ〜」
「そうだな〜」
「洋平は、ずっと嵌める?」
「嵌めるよ」
「じゃあ、シンプルなこっちかなぁ〜」
「うん、そうだね〜」
「プラチナがいいね〜」
「うん、すごく綺麗ね〜」
「美優のには、この小さいダイヤが入ってるのが綺麗で可愛いなぁ〜」
そっとケースから出してくださった
「うんうん、可愛い〜」
「じゃあコレにする?」
「うん」
こちらも、日付、イニシャルを刻印してもらうことに……
「では、よろしくお願いします」
「ありがとうございました」
「ね〜」
「ん?」
「やっぱり、指輪が出来上がるまで、皆んなには黙ってようか?」
「え〜俺は今すぐにでも言いたいのに〜」
「ふふ、そうなの?」
「うん、それに、きっと人事部長から回るよ」
「そうよね〜それからでもいいかな」
「どうして、美優はそんなに隠したがるの?」
「隠したいわけじゃないのよ。私だって堂々と公表したい! でも、洋平ファンからバッシングを受けるかも……」
「えー? そんなの居ないよ〜」
「居るよ、ほら帰国した日も若い子たちが騒いでた
じゃない? 洋平は気づいてないだけだよ」
「おかしいな? そんな告白は、一度も受けてないけどなぁ〜」
「ふ〜ん、そうなんだ。鈍感ね……」
「美優だって、俺と一緒に歩いてるのに、男たちが振り向いてるの、気づいてないの?」
「え? 嘘!」
「本当だよ、だから俺は、その度に、わざと美優の肩を抱き寄せてる」
「え? そうだったの?」
「そうだよ!」
ちょっと不機嫌そうな洋平
可愛くて、わざと、ニッコリ笑いかけると、
すぐに笑った
──早く抱きしめたい!と思う洋平
「ふふ、帰ろうか?」
「うん、晩ご飯どうしようかなぁ?」
「疲れたでしょう? 何か買って帰ろうか?」
「うん、そうね〜」
「なぁ〜美優、もう入籍して一緒に住もうか?
もったいないし……」
「うん、そうだね〜」
「美優の方に行こうかなぁ〜」
「良いけど……」
「イイの?」
「うん、イイよ」
「将来は、どこに住みたい?」
「う〜ん、そうだなぁ〜今はまだ仕事してるから、会社にも実家にも近くて便利だけど、やっぱり実家に近い方がイイかな?」
「美優が後任を育てて、仕事を辞めたら、また、引っ越す?」
「マンション?」
「マンションでもイイし、郊外に家を買ってもイイし実家からは離れてしまうか……」
「え? それより洋平、お金は?」
「俺さあ、ずっと海外だったから、ほとんどお金使ってない。手当も出たし、出張費も全部出たし、案外貯まってるよ」
「そうなんだ。ね〜結婚式はしないの?」
「もちろんするよ。大切な御令嬢と結婚させてもらうのに……特にお父様、お爺様は、盛大に行われるのを楽しみにしておられると思うよ」
「こんな時期だし、小さくてもイイから式、披露宴はしたいなぁ〜」
「うん、明日、探しに行こうか?」
「うん、嬉しい〜」