テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ライブを終えた夜。ホテルの廊下を歩くふっかは、 どこか浮かない顔の佐久間を思い出していた。
本番中も笑っていたけど、
あの“らしい笑顔”の裏に、何かを隠していた気がする。
(……なんか、無理してたよな)
部屋に戻って 軽く髪を乾かしていると、 隣の部屋のドアが静かに開く音がした。
「さく?」
「……あ、ふっか」
顔を出した佐久間は、いつもの調子で笑ったけど、目元 が少し赤いように見えた。
「疲れてるだろ?今日も一緒に寝よ。
昨日、すぐ寝れたって言ってたし」
ふっかの声は自然だった。
ただ心配してるだけ。
けど、佐久間は小さく首を横に振った。
「今日は……いいや。大丈夫」
「え、そう?なんか冷てぇな」
「そんなことないって!ちょっと疲れただけ!」
そう言って笑うけど、 笑顔の隙間に、どこか壁のようなものがあった。
(……なんだろ。俺、なんかした?)
ふっかはそう思いながらも、 「ゆっくり休めよ」とだけ言って部屋に戻った。
ドアが閉まる音が、いつもより遠く感じた。
ベッドに横になっても、眠れない。
「嫌われたのかな……」
そんな言葉が頭の中に浮かんで、
自分で首を振る。
(いや、そんなわけ……)
でも、理由のわからない距離が 胸の奥を静かに締めつけた。
さくまには嫌われたかもしれないと思うだけでどうしよ、と思いぎゅっと苦しくなってそればかり考えてしまっていた。
一方で佐久間は、 ひとりの部屋で天井を見つめていた。
涙をこらえながら、
「ふっかのせいじゃないよ」と心の中でつぶやく。
本当は、隣に行きたい。
でも、行ったらまた期待してしまう。
だから今夜は、離れていることを選んだ。
お互いを大切に思っているのに、
その優しさがすれ違ってしまう夜だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
900
93
KamassKRRR (くらリ