文化祭当日。
体育館のステージ裏には、緊張で顔をこわばらせた七人が並んでいた。
高嗣:「やばい……手汗止まんねぇ」
二階堂がドラムスティックを握りしめ、額を拭った。
太輔:「大丈夫だって。俺らならできる」
藤ヶ谷がギターを肩にかけながら、落ち着いた声で励ます。
健永:「……でもさ、本当に大丈夫かな」
千賀が不安げにキーボードの鍵盤を撫でる。
俊哉:「おいおい、今さら弱気にならないの!」
宮田が声を張り上げるが、その顔は誰よりも青ざめていた。
そんな中で、宏光がぽつりとつぶやいた。
宏光:「……花純ちゃん、見てくれてるかな」
その言葉に全員が静かになった。
――あの日の秘密基地で誓った想い。
いつか大人になったら、また彼女に会える。
それまでに自分たちは何を残せるのか。
その答えが、このステージにある気がした。
体育館に響く司会の声。
司会:「続いては、2年生有志によるバンド演奏です! 『スカイリーフ』のみなさん!」
どっと歓声が上がる。
体育館の幕が開いた瞬間、七人はまぶしいライトに照らされ、無数の視線に飲み込まれた。
裕太はマイクを握る手の震えを必死に抑え、観客席を見渡した。
そこに花純はいない。
それでも――彼女に届くようにと、深呼吸をした。
ドラムのカウントが響く。
高嗣:「ワン、ツー、スリー、フォー!」
演奏が始まった。
最初の一音は見事に外れた。
観客席から笑いが漏れる。
高嗣:「やばい!」
二階堂が顔を赤くする。
しかし裕太は負けなかった。
声を張り上げる。
裕太:「――届けたいんだ、この気持ちを!」
その瞬間、笑っていた観客が次第に静まり、歌声に耳を傾けていった。
藤ヶ谷のギターが鳴り響き、千賀のキーボードが重なり、宮田と渉のコーラスが加わる。
やがて体育館全体が、ひとつの音の波に包まれていった。
裕太は歌いながら思った。
――あの日、笑顔になってくれた花純。
あの笑顔をもう一度見たい。
今もどこかで聴いていてくれるなら、きっと届くはずだ。
最後のサビ。
声がかすれても、裕太は歌い続けた。
そして演奏が終わった瞬間――
体育館に、割れんばかりの拍手が響き渡った。
健永:「やった……!」
千賀が涙を浮かべて笑う。
高嗣:「俺ら、やれたよ」
二階堂が叫ぶ。
宮田が拳を突き上げ、渉が静かに頷き、宏光は微笑んでいた。
裕太はマイクを握りながら、心の中でつぶやいた。
裕太:「花純ちゃん……俺たち、ちゃんとここにいるから」