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「ね、涼音さん。今日は、どこまで付き合ってくれる?」
薄暗いバーの個室。
琥珀色の液体が入ったグラスを指でくるくる回しながら、陸が笑った。
その向かいで、華奢な身体をソファに投げ出すように座っているのが、白月涼音。
「どこまでって、えっちって意味? んー……別に、全部でもいいけど?」
あっけらかんとした返事。
色っぽい目元に無邪気な笑みを浮かべて、涼音はグラスを掲げる。
「ていうか、陸くんのえっち、好きだよー? 上手いし、やさしいし。気持ちいいし!」
「……ふふ、ありがとう。でもさ、涼音さん。俺、たぶん……本気になっちゃったかも」
「え? なにが?」
「――涼音さんに、だよ」
「えっ、やだなにそれ。やだ、そういうの、ダメだよ?」
くすくす笑って涼音は頬を染める。けれど、その目はどこか冗談だと思っている。
「だってさ、付き合うとか面倒じゃない? 気持ちって重いし……僕、セフレくらいがちょうどいいの。ね?」
その言葉に、陸の目がわずかに伏せられる。
(ほんと、天然……でも、そこがまた……)
「――じゃあ、俺のことも、ただのセフレ?」
「え? うん。でもね、けっこう好きなセフレだよ?」
「……そっか。なら、好きって言わせるまで抱いてあげる。何回でもね」
そう言って、陸は涼音の腰を引き寄せ、唇を奪った。
グラスがテーブルに落ち、氷がカランと音を立てる。
熱くて、甘くて、やさしいキス。
それなのに、涼音の胸の奥がちくりとしたのは、なぜだろう。
(え、なにこれ……キスだけで……変な感じ……)
涼音はまだ知らない。
これは、ただのセフレじゃなくなる恋のはじまり。