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ーーーー「おめでとう、君はこの世界の『黒幕』として選ばれた。さぁ、最高の破滅をプロデュースしてくれ」ーーーーー
「……は?」
突然、脳内に響いた謎の声に、思わずマヌケな声が漏れた。
評議会の末席、いわば「お飾り」の議員科学者であるニイナは、長い会議を終えて疲労の極地にいた。午後の柔らかな日差しが差し込む、静かな議事堂の廊下。そこに、場違いな自分の声が空虚に響く。
「何よこれ………。末期ね、疲れ過ぎてついに頭がおかしくなったんだわ…」
ため息をつき、雑念を払うように頭を振る。だが、歩き出さそうとした彼女の意識を、再びその声が嘲笑うかのように頭の奥で声が弾けた。
ーーーー「無視とは酷いな。これからこの世界を混沌に落とす同士じゃないか、仲良くしよう。それとも、執事とかの方がいいか?ニイナ様。」
楽しげな声に、ニイナの足が止まる…
「あー……本当にマズイわ。早く帰って、寝た方がいいわね」
現実逃避を決め込み、声を無視して歩き出そうとする。しかし、声は逃してくれない。
ーーーー「まぁ、戸惑うのも無理はないです。ですが、あなた様はその潜在的な魔王の要素を認められ、「黒幕」として選ばれたのです。どうか、私の言葉を信じてはいただけないでしょうか。 」
声の主は『執事』という設定が気に入ったのか、先ほどよりも慇懃な口調に変わっている。
ニイナはなおも無視を決め込もうとしたその時、目の前にゲーム画面のような半透明のウィンドウが現れ、彼女は思わず足を止めてしまう。
「…何これ」
そこには『*貴方の存在する世界と、貴方の望む結末を教えてください*』という無機質な文字列が並んでいた。
ーーーー「これは、君が望む世界はどんなものかを設定する画面です。ここに書かれたことは必ず現実になる。」
執事めいた声が、耳元で囁くように響く。
ーーーー「必ず、私がその結末になるようにサポートいたします。まぁ、シュミレーションゲームだと思ってくれて構いません。貴方の望む世界を、貴方自身で掴み取る。そこに行き着くためのサポートを私が行う………。どうです?面白そうでしょ?」
声が頭に深く染み込んでいく。
これがたとえ、ニイナの脳が見せている一時の幻影だとしてもーー。今の予測可能で、あまりに退屈すぎる現状に飽き飽きしていた彼女にとって、その誘いは甘美な毒薬のように魅力的だった。
「どんな結末でも構わないの?」
ーーーー「構いません。貴方様の望む世界を、結末を、お書きください」
彼女の唇に、薄く、どこか冷ややかな笑みが浮かぶ。
彼女は宙に浮かぶ画面に指を走らせ、澱みなのない動きで自身の望む世界を綴っていく。
『世界;「セレクトピア。学力至上主義と言う名の檻に閉じ込められた防衛都市。スコアによって貧富の差が断絶され、魔力生物は害獣として迫害される場所。」
結末;「*私がこの世界の権力者どもを弱体化させ、魔力生物を率いてに都市を掌握。悪の帝王として君臨する。そしてーーいつか現れる勇者のような青年に心臓を突かれて、華々しく散る*」』
「こんな感じかしらね。…少し子供っぽすぎるかしら、『悪の帝王』だなんて」
顎に指を当て、困ったように首を傾げて見せる。
対して、頭の中の声は高らかに笑い、芝居がかった口調で彼女の「野望」を讃えた。
ーーーー「素晴らしい野望です、ニイナ様!!なんとロマンに溢れた計画でしょう。虐げられた魔法生物たちを味方につけ、科学の名の下に支配される世界を蹂躙し、最後には勇者に討たれる…“悪の帝王”の 美学を感じます」
わざと悪の帝王を強調し、くすくすと喉を鳴らす声。
「うるさい、バカにしているの?」
声は笑いを堪えるように、声をくぐもらせ宥める。
ーーーー「滅相もございません。このような愉悦に満ちた計画に参加できること、この上ない幸せにございます……。ですが、少し意外でした。あなた様の中に「自身の死」があらかじめ組み込まれているとは」
「悪い?昔見た本に書いてあったのよ…悪役はどれだけ足掻いても、最後には死ぬものだって…それなら好きなことをやり遂げて派手に散って、みんなの記憶に呪いのように残ってあげるの。そっちの方が面白そうでしょ?私の絶望は永遠に語り継がれるのよ」
楽しそうに、まるで遠足の予定を語る子供のような無邪気さで、ニイナは死を語る。
ーーーー「流石はニイナ様。ご自身がいなくなった後さえも、絶望を継続させる。至高の計画でございます。」
「この世界が私を呪い、そして愛さずにはいられない……そんな物語の始まりよ」