テラーノベル
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ーーーー「さて、ニイナ様。まずは、いかがいたしましょう?世界を破滅へと導くための第一歩をお聞かせください? 」
ニイナは、小さく息を吐き、足を動かし始めた。
「そうね、まずは情報の整理が必要ね。ついて来て…というのがあってるのかわかんないけど…。私の部屋に行くわよ」
ーーーー「これはこれは、案外質素なお住まいなのですね。」
ニイナが住んでいるのは、街外れにある寂れたビルの屋根裏に近い一室だ。家具ははソファと机、机の上に置かれた古びたランタンだけだった。
「最低限生活できればいいのよ。…そういえば、貴方のことはなんて呼べばいいの?名前が無いのも不便だわ」
頭の中に響く声は「うーん」と悩むそぶりを見せ、少し寂しげに呟いた。
ーーーー「お好きにお呼びください。元々名前のない存在でございます」
「そう?じゃぁ…声で」
ーーーー「……。左様でございますか。少々投げやりでは?もう少し、こう…愛着の持てるものにしてください」
ニイナの適当さに、声は呆れたように文句を言う。
「もう、わがままね。じゃあ、『V』。voiceのV。どう?これなら満足」
ーーーー「えぇ、とても満足です」
ニイナは机に大きな紙を広げ、事務的にペンを走らせる。「防衛都市;セレクトピア」の地図が、形作られていく。
「見て、V。これがこの街の正体よ」
研究成果の裏に描かれた、完璧な同心円。中心に点を打ち、そこから放射状に線を引くその様は、獲物を待つ蜘蛛の糸のようにも見えた。
「セレクトピア」は知能指数によって人間を家畜化する学術評議会の檻だ。上層市民には金の腕輪と特権を与え、下層市民には銅の腕輪と、いつ奪われるかもわからない「仮初の人権」、そして終わりのない屈辱が与えられる。
そして、科学の光から追い出された魔法生物たちは「非科学的存在」として烙印を押され、最外周の「隔離区」で憎しみを飼い慣らしている。
「中心から外へ、素敵なグラデーション…。まるで腐っていく果実の断面みたい」
ニイナは中心部、評議会が鎮座する「第0地区;ルシュルーの瞳」にコンパスの鋭い針を突き刺した。そのまま、恍惚とした、しかし温度のない瞳でその「穴」を見つめる。
「中心は神の庭。外側は、その庭を維持するためのゴミ捨て場。ルシュルが人間を救ったあの日から2000年、この街は完璧な『選別機』になった…でもね、溜まり過ぎたゴミはどこに流れてくと思う?」
彼女はランタンの火を地図へ近づけた。瞬きもせず、火に照らされた黒いインクを見つめる。ペンのインクが熱で滲み、「隔離区」を黒く塗りつぶした箇所に火が移っていく。炎は音もなく地図を侵食していく。
灰になっていくセレクトピアを、ニイナはクリスマスツリーを見上げる子供のような、無垢で残酷な瞳で見つめていた。
「まずは隔離区のドラゴン達と接触して、協力関係を築く。……外側から、この街を飲み込むの」
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