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近衛兵団が、怒濤の如く帝王と丞相を玉座の間に引っ張って来る。王城は騒然となったが、ここで近衛兵団に立ち向かえるものは、まったくいない。
「お前たち!逆らってどうなるかわかってるんだろうな!お前らの命は握ってるんだぞ。
カシメロを呼んでこい!」
そこへ、カシメロとダニエラが登場!
「ダニエル!なぜここにいる?
おい!カシメロ!すぐにこの縄を解け!」
「帝王様よ!これを見てみろ!」
カシメロさんは、首輪のない首を帝王に見せて叫んだ。
「お、お前!首輪はどうした?」
「もう、どっかいっちゃったよ!
縄は解かねえ!お前のいうことも聞かねえ!」
「どうなってるんだ?誰でも良い!なんとかしろ!俺は帝王だぞ!ダニエル!なにをしている!早くしろ!」
「あなた、この状況わかってないのね。この王城は完全に解放軍が掌握したのよ。
今、あたしの同志が首輪を外して回ってくれてるわよ。首輪がなければ、あなたのいうことは、誰も聞かないわ。油断したわね。まさか、首輪を外せるなんて思ってなかったでしょうね!ふふふ。あたしもそうだけど。」
この間、僕たちは別行動で王城にいる人たちで、首輪のはめられている人たちから首輪を外す活動を黙々とすすめている。
「じゃあ、帝王様よ!最後に玉座に座っていいぜ。これで最後だからな。丞相も玉座の横に立たせてやるよ。最後の景色を楽しみな!」
「やめろ!やめろ!地位もやる。金も用意しよう。いくら欲しいんだ?カシメロ!」
「お前、わかってねえな!欲しいのは自由だよ。お前邪魔なんだよ。この国の奴隷たちは、幼い頃から自由を奪われて、無償で働き詰めだ。王城にいるやつも同じだよ。まあ、まだマシな方だがな。」
「だから、奴隷たちは解放するわよ。
あなたは引退することでいいかしら?
あたしは汚名を背負って簒奪する覚悟でここに来てるのよ。この国を変えるのよ!」
「こら!離せ!離せと言ったら離せ!わからんのか!あ!」
帝王が暴れるもんだから、その拍子に思いっきりこけた!と同時にものすごく硬い、カチコチの金属でできた玉座の肘掛けの部分に後頭部をぶつけて、思いっきり派手に倒れた!
「「え?」」
帝王様がピクリとも動かない。
「おい!おい!………………ダメだ!」
カシメロさんは帝王の脈を確認して、周りにそう告げた。帝王あっけない幕切れであった。
「自分で幕引きしちゃったわね。
まあ、この人も第一王子に生まれなければ、こんなにならなかったかもね。
でも、やってきたことへの罰は罰だわ。
国の政治については、この国の先代のせいもあるけど、自分の意思で引き継いだ訳だし、少なくとも、他の王子たちにしたことは、この人のせいだもの。同情はしないわ。」
「おー、そうだ。お前たち!第一王子をここに引っ張ってきてくれ!あいつにもお灸を据えておかないとな。」
近衛兵団が、急ぎ王子捕獲に動く。
程なくして、裸の王子が縄に繋がれて玉座の間に連れられてきた。
「なんなんだ、これは!
おー、カシメロ!縄を解け!
こいつら、頭がおかしくなったのか?」
「王子!玉座を見てみろ!」
「あ!帝王様!ホセ!どういうことだ?なぜ、帝王様が床に寝てるんだ!」
丞相のホセは、うなだれて一言も喋らない。
もう、喋る気力も失せているようだ。
「ダニエル公爵!なにがあったんだ?」
「もう……。頭悪いわね。クーデターよ。」
「は?……。どうして!」
「説明してあげるから、ちょっと待ってなさい!その前にその粗チンを隠しなさいな。
どうせ、日中から奴隷たちをいじめてたんでしょ。趣味の悪い。」
第一王子も状況が把握できたのか、愕然とうなだれていた。
そこに黒の軍団が近衛兵数名と玉座の間に到着!
「ダニエラさん!お待たせしました。王城にいる全員の首輪を外しましたよ!」
「ありがとう!お疲れ様!
相変わらず、仕事が早いわね。
じゃあ、今から宣言するわ!
現帝王は先ほど、自らお亡くなりになりました!そして、今後はあたしが帝王を引き継いで、この国を治めるわ!
文句のあるやつはいるかしら?」
この場で意を唱えられる人はいません。
ダニエラの他で、唯一、帝王の継承権を持つ第一王子だったが、今、自ら帝王となることは、命を捨てることになると、理解していた。
補足であるが、この世代もすでに王子は第一王子のみが唯一の生存者であった。理由は現帝王世代と同様で、すべて第一王子の仕業であった。
「はい!満場一致で決定よ。
第一王子様も少しは頭が回るようね。」
ダニエラは、現帝王の指から帝王の指輪を外して、自らの指に嵌めた。
この指輪が、帝王の証であり、呪いにより、一度嵌めれば、死ぬまで外すことはできない。
「ふふ。これであたしもいい死に方はできないわね。まあ、それも悪くはないわ。」
こうして、ダニエル・ビスケット公爵改めダニエラ・メヒカール帝王が誕生した。
息子は、カルロス・メヒカール第一王子に。
娘は、ナタリア・メヒカール第一王女に。
併せて、ダニエラさんの希望で、レイラも養子として、第二王女となった。要するにナタリアの妹ということになる。これについては、ナタリアが一番喜んでいた。
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