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フラフラと階段を上り、今日あった事全てを思い出す。眩い光の中で彼が暴力的な笑みを浮かべていた。私の腕を掴んで何か言っていた。多分阿婆擦れとか出来損ないとかそんなところの言葉だろう。死ぬほどに彼に使い回された。客のモノをしゃぶりまくったしステージの上で何分も踊りまくった。酒も飲みまくった。従業員たちは使い物にならないからと私が出たのだ。自業自得だ。そう知っていてもやはり憎い。口には精液の味が残っていて気持ち悪い。吐こうと思って部屋に入った瞬間ゴミ箱に向かった。喉の近くを指で何度も刺激してやっと今日食べた物、飲んだ物が全て出てくる。口元を拭いて酒を取り出し、一気に体に流し込む。またリセットだ。
少し気分もマシになった所で彼からのメッセージを見る。罵りの言葉が何通も来ている。それはまるで規則性を帯びているかのように並べられ、そして彼の怒りの色が現れていた。
「s,o,r,r,y」
そう返信して画面を閉じた。目を閉じて口に少し残った酒をじっくり味わう。惨めで悲しい味がした。強い物を切らしていたのだ。また買いに行かなくては。自分の財布の予算を頭の中で考える。働けば金は入ってくるのだ。使ってしまおう。明日は恋人と夜明けまで遊ぼう。男も女も引き連れて街のクラブで騒ごう。なるべく彼の知らないような場所で。
「私ったらまたヴァルのこと…」
気にしない気にしないと思っていても何故か気にしてしまうのだ。偶然会わないようにしたり仕事を入れられないようにしたり。
くだらなさすぎて苦笑してしまう。おかしな気持ちのまま私は眠ってしまった。
*
「お客をもっと増やさないと…だけどどうやって?またプランを考え直して?」
チャーリーは暖炉の前をウロウロしながら考えていた。彼女の経営する罪人を更正する地獄で唯一のホテル、ハズビンホテル。愉快な仲間たちに溢れた場所である。もっともっと罪人を救おうとすればするほど失敗する。
「チャーリー落ち着いて、一旦休もう」
ヴァギーがチャーリーにそう言うとチャーリーはソファに座りヴァギーの入れたお茶を一口飲んだ。向かいのソファに座っていたエンジェルダストはスマホを弄ったまま喋り出した。
「すごく困ってるみたいだね」
「お客が来ないのは致命的よ、エンジェル。ぬいぐるみや子犬でもいいから入れるべきかしら?いいえ、魂を救わないと意味が無いわ。大きなイベントを開くとか?いえそれも駄目ね、色々問題ありだわ」
一人で色々と考え込むチャーリーを見兼ねたエンジェルはにやりとして言った。
「一人いいのがいるよ」
するとチャーリーは身を乗り出して
「どこの誰!?紹介して欲しいわ!」
ヴァギーはそれを見て
「落ち着いて、お願いだから。…エンジェル、それは仕事仲間か何か?」
「いいや」エンジェルは続ける。「家族さ、俺のね。会いたいんなら合わせてやるぜ」
「会いたいわ!どんな人なの?」
エンジェルはスマホを机に置く。チャーリーとヴァギーはごくりと唾を飲んだ。
「危険な”旅”になるぜ」