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その日は、雨予報だった。
スマホの通知が鳴る。
「来て、今すぐ」
元貴からだ。
時々こうやって突然呼び出される。
その度に、俺は何処かで期待をしてしまう。
正しく綺麗に愛されるわけないのに。
それでも、まだ嫌いになれない。
ずっと縋ってる。
適当にアウターを羽織って、傘も差さずに外に出た。
雨で視界が滲む。
街灯の光が水たまりに反射して、ぼんやり揺れる。
なんとなく、雨に濡れたアスファルトの匂いが不快だった。
服が濡れて肌に張り付き、じわじわと体温を奪われていく感覚がする。
早く、声が聴きたい。
触れられたい。
温もりを感じたい。
ドアの前に立つ。
いつも通り、鍵は開いていた。
ドアを開けると、湿った外の空気が一気に部屋の熱に飲み込まれる。
「……元貴?」
弱々しく絞り出した声が玄関に落ちた。
返事はない。
代わりに、服から滴る水が玄関を汚す音がする。
しばらくして、廊下の奥からゆっくり足跡が近づいてくる。
少し髪が乱れていて、黒いスウェットに身を包んだ元貴が現れた。
「……濡れてんじゃん」
元貴の声は、落ち着いていて、淡々としている。
別に怒られたわけじゃないのに、
「…あ、ごめん…」
なぜか謝罪の言葉が出た。