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唐突に降り始めた雨がサマーコートの肩に染み込む。
南国の空に、風にそぐわない、静かな雨が。
街の喧騒だの熱だのを吸って、申し訳程度にコンクリートの地面を泡立たせて。
モノクロの世界で道しるべを失ってしまった私は、優しい水のカーテンに包まれて立ち往生する。
ここまで来てしまった。
雨脚がまた強くなった。今度は痛みすら感じるような強さ。
一応鞄に傘は入っているけれど、もうだいぶ濡れてしまっているうえに、風だって激しく揺さぶりをかけてくるもんだから、
きっと差したところで意味はないんだろう。
あなたはこのモノクロ世界で何を思ったんだろう。
寂しかったのかな。それとも、外の世界から隠れることができて、安心した?
単純に、体が濡れるのは困ったなあ、とだけ思ったのかも。
____なぜ私はこんなにもあなたに固執するのだろう。
コンクリートの防波堤にしゃがみこんだ。
雨は海を激しく叩きつけるけれど、海は凹むこともなく、慌ただしく波打ちながら雨粒を飲みこんでしまう。
晴れていたのなら、きっと家族連れだの、どこからかの観光客もいたんでしょうけど。
もとより今日の予報は雨で、それで無くとも雨季で空は曇っていて、お出かけには全く適さない天気だって、誰もが思ったはず。
なんで私はそんな日を選んだんだろうね。あなたに「ばかだなあ」って笑い飛ばして欲しかったから?
でもやっぱりここにもあなたは居ない。
まあそうだよね。あなたが行方不明になって六十年は経ってるんだから。
でも私は、あなたを探さずにはいられないのだ。
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