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なんて壮絶な死に方だろう、コユキがそんな風に思っていると明(アキラ)が言葉を続けた。
「ごっつうおめるで、あらけるついでやから、だんないんな」
「?」
――――え、やばい! 全然わかんない? これ、日本語だよね?
まさか、口にして聞く訳にもいかないので、適当に会話を続けるコユキであった。
「ええ、おめるであらけっちゃいますよね、やっぱり、だんだんだいんじゃないですかね! ところで、これ家まで戻ったら、ちゃんと洗って返しますので」
「? お、おお、返すなんててんぽもない、あげるゆーとるやん、それより命の恩人に敬語言われるときづつないわ、タメ口にしておくんない、年も近そうやん」
――――やばい、まだイマイチ分かんないわ、タメ口って所だけわかったけど……
そのとき丁度、秋日影の喉笛を掻っ切って血抜きをしていた組合員が二人に近付きながら声を掛けた。
「そういや、秋沢さんってお幾つなんですか? 俺と同じ位かな? 俺、三十九ですけど」
「あ、同い年……」
「え、辻井(ツジイ)ちゃん三十九なの? ガチでタメじゃん! ってか、何中?」
「あ、鎌田(かまた)なんすよ!」
「え! じゃあ、南野(ミナミノ)とか知ってんじゃないか? 柔道やってた!」
「うおぉ、何? 知ってるんです? アイツんち俺んちからめちゃくちゃご近所で……」
「あのー、盛り上がってる所悪いんですけど、結局このツナギどうすればいいんですかね?」
すかさず明が答えた。
「やから、せんどだんないゆーとるやん、はきつかん……」
「あー、秋沢さんの言葉は地元の人でもむつかしいんだよ、その服は整理する予定だったから、貰ってくれって言ってるんだよ、あと、助けてもらったんで敬語やめてって、タメ口で頼むって、あ、年齢は、聞いたら失礼だったよね? 女の人? だよね?」
コユキは、さっき同い年って言ったじゃん! ちゃんと聞いとけよ田舎者っ! と心の中で毒づいた。
因み(ちなみ)にコユキの故郷はここよりも、ほんの少しだけ田舎であった。
(見渡す限りの大茶園)
――――それにしても、タメ口か…… それもそうか! ガンくれた、肩当てた、足踏んだも多生の縁、とかいうし、ここはフランクに話してみるか!
「よかろう、そこまで言うなら、このみすぼらしい襤褸切れ(ぼろきれ)を貢物(こうもつ)と認めて着てやろうでは無いか! 感謝するがいい愚民ども!」
「「え?」」
「思えば、あの程度の小物如きに、情けなくも這いずり回って、背を向け腰を抜かしていた、地虫に等しいうぬ等(ら)如きを助けてやったのだ、いま一つ献上させてくれよう! あの、あれだ、確か? そうだ! 茶糖ブリリンとかいったか? それを貰ってやろう、感謝して差し出すが良いわ!」
茶糖ブリリンってそれ、お前じゃん?
それにしてもコユキのタメ口(?)は酷すぎだろう、コミュ障にも程があるってものである、少しは辻井ちゃんを見習って欲しいものだ。
「あ、それもしかして『シャトーブリアン』の事なんすかね?」
「あーそうか! 流石は辻井ちゃん!」
「……そう言った筈だが?」
「「…………う、ウン、ソウダネ」」
「当然だ」
その後、明も快くシャトーブリアンを送ることに同意し、コユキは幸福寺の住所を教えて帰路につく事になった。
丁度、血抜きが終わった牛(もう名前では呼ばないのだ)を積載し終わった辻井ちゃんが、松阪駅まで送ってくれてらくちんであった。