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連れて行かれたのは、食堂の隅にある臨時のミーティングスペースだった。
「座れ。今すぐここで修正しろ」
先生に促され、私はパイプ椅子に小さくなって座る。先生は向かい側に座ると、腕を組んで私の手元をじっと見つめてきた。
「……ミスをしたのは、浮ついているからか?」
「いえ、そんな……すみません」
「昼間の審判は悪くなかった。だが、詰めが甘い。コートの外で気を取られていては、選手を支えることはできん」
先生の声は低くて怖かったけれど、その指摘はぐうの音も出ないほど正論だった。私は冷や汗をかきながら、震える手でペンを走らせる。
「……あの、先生。成瀬先輩は……」
あまりの沈黙に耐えきれず、話を振ってみると、先生は一瞬だけ視線を泳がせ、不自然に喉を鳴らした。
「……成瀬か。あいつなら、さっきまでここにいた」
「えっ、そうだったんですか?」
「ああ。だが……少し話し込んでな。顔が赤いとか言って、今はもう自分の部屋に戻らせた」
先生はそう言うと、わずかに乱れたネクタイを直すように指先を動かした。いつもは隙のない先生が、どことなく落ち着かない様子で、窓の外の闇に視線を逃がしている。
(……成瀬先輩、もしかして、何かやったのかな?)
追い返されたにしては、先生の反応に「毒気」がない。むしろ、何か言い知れない余韻を振り払おうとしているような……。成瀬先輩の「バーベキュー作戦」が、意外な形であの先生に爪痕を残したのかもしれない。
「……朝倉。手が止まっているぞ」
「あ、すみません!」
先生の鋭い声に引き戻されたけれど、私の頭の中では、成瀬先輩の真っ赤な顔と、今の先生の「間」が交互に浮かんで消えた。