テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#のあさん愛され
永 遠 .
16,101
#からぴち🌈🍑
さめさん
1,193
# 『王子様は、私だけに意地悪。』
⚠hret|恋愛・甘々|読み切りノベル
start
「ヒロくんって、本当に王子様みたいだよね」
そんな言葉を、私はもう何度聞いただろう。
重い荷物を持ってくれたり、ドアを開けて待っていてくれたり。誰かが困っていれば、何も言わずに手を差し伸べる。
それが、hr裙という人だった。
「et彡、これ重くない?」
「あ、大丈夫だよ」
「ほんと? 無理してない?」
「してないってば」
そう答えたのに、彼は私の手から荷物をひょいっと持ち上げた。
「じゃあ、俺が持ちたいから持つね」
「……何それ」
「だめ?」
にこり、と笑う。
その笑顔を見せられると、何も言えなくなる。
……ずるい。
本当に、ずるい人だと思う。
*
撮影が終わった午後。
みんなで片づけをしていると、na彡が小さくため息をついた。
「hr彡って、本当に気が利きますよね」
その視線の先には、飲み物を配っているhr裙がいた。
「na彡、これ好きだったよね?」
「あ、ありがとうございます!」
「どういたしまして」
「ほんと、王子様みたいです」
「えー、そんなことないよ」
困ったように笑うhr裙。
……ほら。
まただ。
誰にでも優しくて、誰にでも笑いかける。
別に、悪いことじゃない。
むしろ、いいことだ。
分かってる。
分かってる、けど。
「……et彡?」
「っ、なに!?」
突然名前を呼ばれて、思わず肩が跳ねた。
いつの間にか、hr裙が目の前に立っていた。
「どうしたの? ぼーっとして」
「別に、なんでもない」
「そっか」
彼は少し首を傾げてから、私の顔を覗き込んだ。
「……あ」
「え?」
「髪、なんかついてる」
「うそ、どこ?」
慌てて髪に触れようとすると、hr裙が私の手をそっと止めた。
「待って。取ってあげる」
「いや、自分で――」
言い終わる前に、彼の顔が近づいた。
「……っ!」
ふわりと、甘い香りがした。
長い指が私の髪に触れる。
ほんの数秒。
それだけなのに、心臓がうるさい。
「はい、取れた」
hr裙は小さな糸くずを見せて、いつも通り笑った。
「……ありがと」
「どういたしまして」
「……自分で取れたのに」
「うん、知ってる」
「じゃあ、なんで?」
すると彼は、少しだけ目を細めた。
「取ってあげたかったから」
「…………」
……ほんとに。
この人は。
「……そういうの、誰にでもやってるの?」
気づけば、そんなことを聞いていた。
「え?」
「……なんでもない!」
私は逃げるようにその場を離れた。
背中越しに、彼の小さな笑い声が聞こえた気がした。
*
それから数日後。
私は、自分でも嫌になるくらい機嫌が悪かった。
理由は分かっている。
……いや。
分かりたくないだけかもしれない。
「hr裙、これ教えてくれない?」
「いいよ。どこが分からない?」
撮影の合間。
別の女の子に話しかけられたhr裙は、いつもの優しい笑顔で応じていた。
「わあ、ありがとう! やっぱりhr裙って優しいね!」
「そんなことないよ」
「彼女になった人、絶対幸せだろうな〜」
……。
胸の奥が、ちくりと痛んだ。
「……et彡?」
隣にいたurが、私の顔を覗き込む。
「なんか怒ってる?」
「怒ってない」
「いや、絶対怒ってるだろ」
「怒ってないって!」
「……あっそ」
urはそれ以上何も言わなかった。
ただ、少しだけ呆れたように笑っていた。
……最悪。
自分でも分かってる。
hr裙は何も悪くない。
誰にでも優しいのは、最初から知っていた。
それなのに。
どうして私だけ、特別じゃないと嫌なんだろう。
*
「et彡、一緒に帰らない?」
帰り支度をしていると、後ろから声がした。
振り返らなくても分かる。
「……今日は一人で帰る」
「え?」
「ちょっと寄るところあるから」
嘘だった。
本当は、何もない。
ただ、今の自分を見られたくなかった。
「そっか」
あっさり引き下がる声。
……なんだ。
もう少し、引き止めてくれてもいいのに。
そう思った自分に、また嫌気が差した。
「じゃあ、俺もついていこうかな」
「……は?」
顔を上げると、hr裙は当然のように笑っていた。
「どこ行くの?」
「……なんでついてくるの」
「et彡と一緒にいたいから」
「…………っ」
本当に。
どうしてこの人は。
そういうことを、平気で言うんだろう。
「……勝手にすれば」
「うん。勝手にする」
嬉しそうに笑う彼を見て、私はますます顔を上げられなくなった。
*
夕方の帰り道。
二人で並んで歩いているのに、会話はほとんどなかった。
私が黙っているからだ。
「……et彡」
「なに」
「今日、俺なんかした?」
「……別に」
「そっか」
少しだけ沈黙が落ちる。
「じゃあ、なんで怒ってるの?」
「怒ってないってば」
「……ほんと?」
「ほんと」
するとhr裙は、私の前に回り込んだ。
「じゃあ、こっち見て?」
「……やだ」
「なんで?」
「……見たくないから」
「そっか」
そう言って、彼は少しだけ笑った。
「俺は見たいんだけどな」
「……っ、もう!」
思わず顔を上げる。
「hr裙って、ほんとそういうとこあるよね!」
「そういうとこ?」
「誰にでも優しくして! 誰にでもそんなこと言って!」
言ってから、しまったと思った。
でも、もう止まらなかった。
「王子様はみんなに優しいもんね!」
「…………」
hr裙が、目を丸くする。
それから。
「……ふっ」
小さく笑った。
「な、なんで笑うの!?」
「いや……ごめん」
彼は口元を手で隠している。
……絶対、笑ってる。
「……もう知らない!」
横を通り過ぎようとした、そのとき。
きゅっ。
手首を掴まれた。
強くはない。
振りほどこうと思えば、簡単にできるくらい。
「……et彡」
さっきまでと違う、少し低い声。
思わず足が止まった。
「もしかして」
彼は私の顔を覗き込んで、
「……嫉妬した?」
「っ!!」
顔が、一気に熱くなった。
「し、してない!!」
「ほんと?」
「ほんと!!」
「……そっか」
hr裙は小さく笑って、私の手を離した。
「俺は、ちょっと嬉しかったけど」
「……え?」
「et彡が、俺のこと気にしてくれてるって分かったから」
「…………」
何も言えない。
心臓が、痛いくらいに鳴っている。
「……ねえ、et彡」
彼が一歩、近づく。
「俺さ」
いつもの余裕のある笑顔が、少しだけ消えた。
「誰にでも優しくしてるつもりなんだけど」
「……うん」
「……好きなのは、一人だけだよ」
風が吹いた。
夕焼けが、彼の灰色の髪を淡く照らす。
「…………誰?」
聞きたくない。
でも、聞きたい。
そんな気持ちで、私は彼を見上げた。
hr裙は、少し困ったように笑った。
「……言わなきゃ分かんない?」
「……分かんない」
「そっか」
彼は、私の手をそっと取った。
そして。
「……et彡だよ」
世界が、止まった気がした。
「……え」
「俺が好きなのは、et彡」
「…………」
「ずっと、好きだった」
その声は、いつもより少しだけ緊張していた。
「……うそ」
「ほんと」
「だって……hr裙、誰にでも優しいじゃん」
「うん」
「私だけじゃないじゃん……」
「……そうだね」
彼は少しだけ視線を落とした。
「でもさ」
繋がれた手に、ほんの少し力がこもる。
「誰にでも優しくはできても」
「……うん」
「誰にでも、好きになってほしいわけじゃないんだよ」
「…………」
「俺のこと、見ててほしいって思うのも」
「俺のことで嫉妬してほしいって思うのも」
「……俺だけを好きでいてほしいって思うのも」
一度、言葉を切る。
「et彡だけ」
……ずるい。
こんなの。
ずるすぎる。
「……王子様のくせに」
震える声で、そう呟いた。
「結構、わがままじゃん」
すると彼は、少し照れたように笑った。
「……et彡の前だけね」
*
「……ねえ」
「ん?」
「私、ずっと勘違いしてた」
「何を?」
「hr裙は、誰にでも同じくらい優しいんだって」
「……うん」
「だから、好きになっちゃダメだと思ってた」
hr裙の表情が変わった。
「……et彡?」
「だって、期待しちゃうじゃん」
俯いたまま、言葉を続ける。
「私だけ特別なのかなって」
「でも、他の子にも同じことしてて」
「勝手に期待して、勝手に落ち込んで……」
もう。
隠せなかった。
「……私だって」
ぎゅっと、彼の手を握り返す。
「hr裙のこと、好きだよ」
*
しばらく。
何も聞こえなかった。
不安になって顔を上げると、
「…………」
hr裙が、固まっていた。
「……hr裙?」
「……ごめん」
「え?」
「……今、ちょっと余裕ない」
耳が。
真っ赤だった。
「……えっ」
初めて見た。
いつも完璧で、誰にでも優しくて。
まるで王子様みたいな彼の。
こんな顔。
「……ふふっ」
思わず笑ってしまう。
「な、なに?」
「hr裙でも照れるんだ」
「……そりゃ照れるよ」
「へえ?」
「……好きな子に好きって言われたんだから」
「…………っ」
……やっぱり。
ずるい。
*
「……et彡」
「なに?」
「一つ、お願いしてもいい?」
「……なに?」
彼は少し迷ってから、私の目をまっすぐ見た。
「……俺の彼女になってください」
丁寧で。
真剣で。
どこまでも、彼らしい告白。
私は少しだけ笑って、
「……はい」
そう答えた。
「よろしくお願いします、王子様」
するとhr裙は、ほっとしたように笑った。
「……ねえ、et彡」
「ん?」
「その王子様っていうの、やめない?」
「なんで?」
「……恥ずかしいから」
「えー?」
私は少し考えるふりをしてから、彼に近づいた。
「じゃあさ」
「うん?」
「私だけの王子様、っていうのは?」
「…………っ」
また。
耳が赤くなる。
「……それ、反則」
「ふふっ」
さっきまで余裕たっぷりだった人が、今は私の一言で照れている。
なんだか、少し嬉しかった。
*
「……et彡」
「なに?」
「手、繋いだままでいい?」
私は、繋がれた手を見下ろした。
そして。
彼の指に、自分の指を絡める。
「……聞かなくてもいいのに」
「……そっか」
「うん」
「じゃあ、これからは遠慮しないね」
「……え?」
彼が、いたずらっぽく笑った。
「彼氏だから」
「…………!」
……ああ。
やっぱり。
この人には、一生勝てない気がする。
でも。
それでもいい。
だって。
みんなの王子様だった彼が。
今は。
私の隣で、私だけを見て笑っているから。
「……大好きだよ、et彡」
「……私も、大好き」
夕焼けの帰り道。
繋いだ手は、家に着くまで離れなかった。
そして私は、初めて知った。
王子様だって、好きな人の前では余裕がなくなること。
それから。
そんな王子様を、もっと好きになってしまうこと。
『王子様は、私だけに意地悪。』
―― END ――
なんか、思いついたので、書いてみました!
のびますよーに!☆
コメント
1件
あおいです🤍 読ませていただきました! 夕焼けの帰り道、手を繋いだままのシーンがすごく甘くて、胸がきゅってなりました。ずるいほど優しい王子様が、ヒロインの前だけ余裕なくなるギャップ…たまらないですね。「俺だけを好きでいてほしい」って言葉、めちゃくちゃ刺さりました。読み終わって、ほこほこした温かい気持ちでいっぱいです🌷素敵な物語をありがとうございます!