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友達に「夏穂の書く小説ってなんかあれだよね、AIみたい」って言われて鬱っぽくなっちゃった夏の穂です。
誰がAIじゃぼけ!!
まあ確かに言葉選びはそれっぽいかも知れないけどさぁ!!!
リクエストもらいましたので今回も二本立て頑張ります・・・!
「中也の行動一つ一つで不安になる太宰。」
ごめんちょっと太宰がめんどくさい女になっちゃった(めんどくさい女の子大好きなんですすみません)
その日、太宰治はひどく情緒が不安定だった。
普段であれば、どれほど周囲が慌てふためくような事態が起きようとも、彼女は涼しい顔で煙に巻く。すべては自分の手の平の上だとでも言うように、不敵に、あるいは酷く退屈そうに微笑んでいるのが彼女の日常だ。
だが、中原中也という存在が絡むと、その完璧な仮面は容易くひび割れる。それどころか、最近の太宰は自分でも制御できないほど、彼の一挙一動に過敏になっていた。
「手、繋がないのかい」
夕暮れ時のヨコハマ。人通りの少ない裏通りを並んで歩いている時、太宰は小さく声を漏らした。
いつもなら、中也が強引にその細い手を引くか、あるいは太宰がからかうように指を絡める。しかし今日の中也は、外套のポケットに両手を突っ込んだまま、前を向いて歩いていた。ただそれだけのことだった。
「ああ? 今荷物いっぱい持ってんだろ、お前。危ねぇから前見て歩け」
中也の声はいつも通り、少しぶっきらぼうで、けれど確かな響きを持っていた。彼の手には、太宰が買い漁った本や小物の入った紙袋がいくつか握られている。中也なりの気遣いだった。
だが、今の太宰の耳には、それが「お前と手を繋ぎたくない」という拒絶に聞こえてしまった。
心臓が、きゅっと冷たく縮む。
どうして。いつもなら荷物なんて重力で浮かせるか、片手にまとめて空いた手で私を捕まえるくせに。もう、自分に触れるのが億劫になってしまったのだろうか。
「……そうだね。歩きにくいものね」
ぽつりと呟いた声は、中也の足音にかき消されるほど小さかった。
太宰は俯いた。視界が急速に歪んでいく。一度溢れ出しそうになった不安は、せき止める間もなく彼女の胸を支配した。
中也が自分を嫌いになったらどうしよう。呆れて、どこかへ行ってしまったらどうしよう。
そんなこと、起きるはずがないと理屈では分かっている。中也の向ける視線が、どれほど深く、狂おしいほどの熱を孕んでいるか、誰よりも知っているのは太宰自身だ。
なのに、一度泥沼に嵌まった思考は、彼女を奈落へと引きずり下ろしていく。
ポツ、と、アスファルトに黒いシミができた。
雨ではない。太宰の大きな瞳から零れ落ちた、大粒の涙だった。
一度流れてしまえば、もう止められなかった。太宰は歩みを止め、その場に立ち尽くした。涙が次から次へと溢れて、視界を完全に遮っていく。
「おい、太宰? どした、置いてくぞ」
数歩先で足音が止まり、中也が振り返る気配がした。
太宰は必死に顔を伏せ、外套の袖でゴシゴシと乱暴に目を擦った。けれど、擦れば擦るほど涙は溢れ、鼻の奥がツンと痛む。しゃくり上げそうになる呼気を、唇を噛んで堪えた。
「……おい、嘘だろ。お前、泣いてんのか!?」
中也の慌てた声が近づいてくる。ガサリと紙袋が擦れる音がして、すぐに彼の気配が目の前に迫った。
中也は慌てて荷物を地面に置き、太宰の肩に手を伸ばした。だが、太宰はその手を拒むように、一歩後ろに下がってしまう。
「……触らないで」
「な、っ……なんでだよ! どこか痛むのか? それとも誰かに何か言われたか!?」
中也の声は純粋な心配と、焦燥に満ちていた。
普段の太宰なら、その慌てようを見て「また私の完璧な嘘泣きに引っかかっちゃったね」と意地悪く笑うところだろう。だが、今の彼女にそんな余裕は微塵もなかった。
中也が焦れば焦るほど、自分のせいで彼を困らせているという罪悪感が募り、さらに涙が溢れるという悪循環に陥っていた。
「……中也が、悪いんだ」
ずる、と鼻を押し殺した声で、太宰は子供のようにそっぽを向いた。
涙で濡れた睫毛が張り付き、白い頬には幾筋もの涙の跡が光っている。鼻の頭をほんのり赤くして、ぽろぽろと涙を零し続ける彼女の姿は、およそ「ポートマフィアの元最年少幹部」や「武装探偵社の一反木綿」とは思えないほど、ただただ無防備で、可憐な一人の少女だった。
「俺!? 俺が何かしたか!?」
「した! 大ありだ! 中也が私に冷たくするからだ……っ」
とうとう我慢できなくなり、太宰の声がひっく、と大きく震えた。
一度決壊した感情は止まらない。太宰は両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んで本格的に泣き出してしまった。
「う、ぅ、ぐすっ……中也のばか、嫌い、大嫌いだ……っ」
「おいおいおい! 待て、落ち着け手前! ここで泣くな、俺が酷いことしたみたいだろ!」
実際、周囲を通る数少ない通行人が、怪訝そうな、あるいは白い目で中也を見て通り過ぎていく。中也は頭を抱えた。
だが、それ以上に目の前でボロボロと涙を流し、小さな身体を震わせている恋人が心配でならなかった。
中也はため息をつくと、地面に置いた荷物をひっ掴み、しゃがみ込む太宰の脇に手を差し入れた。
「ほら、立つぞ。こんなとこじゃ話もできねぇ。俺の家、すぐそこだからよ」
「嫌だぁ……置いていけばいいじゃないか、どうせ私のことなんて、もう、どうでもいいんだろぅ……っ」
「んなわけねぇだろ! いいから来い!」
中也は半ば強引に太宰を抱き上げた。重力操作を使うまでもなく、彼女の身体は驚くほど軽かった。太宰は中也の胸に顔を埋めたまま、小さな拳でポカポカと彼の胸を叩いたが、それもすぐに力尽き、彼のシャツの襟元をぎゅっと掴んで、子供のように声を上げて泣き続けた。
中也の自宅に辿り着くまで、太宰の涙が止まることはなかった。
玄関に入り、鍵を閉めた瞬間、中也は大きな溜息を吐きながら太宰をリビングのソファにそっと降ろした。
太宰はソファの隅に丸まり、膝を抱えてまだ微かに肩を揺らしている。目を真っ赤に腫らし、ふくだるんだ唇を尖らせている姿は、酷く可哀想で、そして破壊的に可愛かった。
「……で? 俺が何したって言うんだよ。言わねぇと分かんねぇだろ」
中也はキッチンから温かいタオルと、お湯を入れたグラスを持ってきて、太宰の前に屈んだ。
太宰はチラリと中也を見つめ、またすぐに視線を逸らす。
「……中也、今日、全然私を見てくれなかった」
「あ?」
「歩いてる時も、ずっと前ばっかり見て。私が手を繋ごうって言ったのに、荷物があるからって断った。いつもなら、どんな手段を使ってでも私の手を握るくせに」
中也は目を丸くした。そんなことで、この世の終わりのように泣いていたのか、と。
「それに、さっき車が通り過ぎた時、中也、私を庇ってくれなかった。いつもなら、危ないって言って腰を抱き寄せるのに、今日はただ『避けろ』って言っただけだった。……もう、私を守るのも面倒になったんだ。私のこと、飽きちゃったんだ」
ぽろぽろと、また新しい涙が太宰の頬を伝う。
それは客観的に見れば、あまりにも理不尽で、あまりにも被害妄想が過ぎる言いがかりだった。中也からすれば「前を見て歩かないと危ないから」「車は十分に離れていたから」という、ごく真っ当な理由がある。
だが、今日の大宰には、その一つ一つが「愛の欠如」に繋がって見えてしまったのだ。
中也は呆れたように天を仰いだ。けれど、その顔には怒りなど微塵もなく、むしろ愛しさが爆発しそうなのを必死に堪えるような、歪な笑みが浮かんでいた。
「手前なぁ……」
中也は温かいタオルを太宰の顔に優しく当て、涙の跡を 丁寧に拭ってやった。太宰はされるがままになりながら、じっと上目遣いで中也を見つめている。その潤んだ瞳が、あまりにも健気で、胸が締め付けられる。
「いいか、よく聞け。手前が余計なもん買い込むから、紙袋の取っ手が千切れそうだったんだよ。重力で浮かせたら、中身がひっくり返るような繊細なガラス細工が入ってただろ。だから両手で大事に持ってやるしかなかったんだ」
「……あ」
「車のことだって、あんな狭い道で俺が手前を抱き寄せたら、それこそ車輪に外套が巻き込まれる可能性があった。だから口頭で注意したんだよ。……ったく、俺が手前に飽きるわけねぇだろ。脳みそ腐ってんのか」
中也はタオルの上から、太宰の額をコツンと小突いた。
太宰は瞬きを繰り返し、中也の言葉を理解しようと必死に頭を働かせた。そして、自分の勘違いだったと完全に理解した瞬間、今度は恥ずかしさと、安心感と、やっぱりまだ残る寂しさで、またしても胸がいっぱいになってしまった。
「う……あ、うぅ……っ」
「おい、また泣くのかよ!?」
ふぇ、と声を上げて、太宰は中也の首にがっしりと抱きついた。ソファから身を乗り出したため、中也はバランスを崩して、そのままフローリングの床に尻餅をつく形になった。太宰はその中也の身体に伸しかかるようにして、彼の首筋に顔を埋める。
「だって……だってぇ……!」
「わかった、わかったから。悪かったよ、不安にさせて」
中也は諦めたように笑い、太宰の背中に腕を回した。細い背中が、しゃくり上げるたびに小さく跳ねる。
普段はどれだけ言葉を尽くしても本心を明かさない太宰が、こうして子供のように感情を爆発させて自分にしがみついている。その事実が、中也の独占欲と庇護欲をこれ以上ないほど満たしていた。
「中也のばか……。もっと私を甘やかしてよ。いつでも、どんな時でも、私を一番にしてくれないと嫌だ……」
「へいへい。いつでもお前が一番だよ」
「言葉だけじゃ足りない……。もっと、ちゃんと示して……」
掠れた声で 囁く太宰の髪に、中也は何度も優しくキスを落とした。
首筋に触れる太宰の涙が熱い。その熱を感じるたびに、中也の中で何かが疼いた。
中也は太宰の腰を抱き上げ、今度は自分が上になるようにして、ソファへと彼女を押し込んだ。
「ん……っ、中也?」
突然の視界の反転に、太宰は涙で濡れた睫毛を震わせながら、中也を見上げた。
中也の瞳には、先ほどまでの呆れたような優しさは消え失せ、底なしの暗い情熱が灯っていた。太宰の不安をすべて焼き尽くしてしまいそうな、濃厚な愛の視線。
「言葉じゃ足りねぇんだろ? じゃあ、身体に教え込んでやるよ。俺が誰の、何に狂わされてるか」
中也の大きな手が、太宰の頬を包み込む。親指で、まだ 濡れている目元を優しく、けれど強く 擦った。
「ちゅうや……っ」
「お前が泣くたびに、俺の心臓がどれだけバタついてるか、手前は知らねぇだろ。……可愛い顔しやがって。全部、俺のせいで流した涙だと思うと、頭がおかしくなりそうだ」
中也の顔が近づき、その唇が太宰の涙を 舐めとるように 触れた。
目元、頬、鼻の頭、そして 最後に 強く 唇が重ねられる。
いつもより少し強引で、けれど どこまでも 執着に 満ちた キスだった。
太宰の口内を 蹂躙する 中也の舌は、彼女に 考える 隙を 与えない。太宰は 息が 苦しくなりながらも、中也の 首に 回した 手に ぎゅっと 力を 込めた。
「ん……、ふ、あ……、ちゅ、や……っ」
ようやく 唇が 離れた 時、太宰の 唇は 赤く 腫れ、瞳は 先ほど とは 違う 意味で 潤んでいた。
中也は 太宰の 衣服の ボタンに 手を かけながら、獰猛な 獣のような 微笑みを 浮かべる。
「今夜は 寝かせねぇからな。手前の その 不安な 頭ん中、俺だけで いっぱいに してやるよ」
「……うん。壊れるくらい、いっぱいにして……」
太宰は 弱々しく、けれど 確かに 嬉しそうに 微笑み、再び 中也の 唇を 迎えるために 目を 閉じた。
不安で 泣き虫な 彼女を 完全に 満たせるのは、世界で 唯一、この 傲慢で 獰猛な 重力使いだけだった。
毎回長文書くくせに毎回精神が磨耗してるぜへっへっへ
次のリクエスト!
「甘やかしたい中也と甘え下手太宰」
冷たい雨が窓硝子を叩く音が、静かな室内に規則正しく響いている。
外の世界の喧騒から隔絶されたこの高級マンションの一室は、いつもより少しだけ肌寒く、そしてひどく静かだった。
ソファの上、中也は手元にある書類を膝に置き、隣に丸まっている小さな体躯に視線を落とした。
太宰は、中也が普段愛用している大ぶりの黒い外套にすっぽりと包まれ、膝を抱えるようにして小さくなっている。いつもなら饒舌に皮肉を並べ立てるその唇は固く結ばれ、外套の襟元に半分ほど埋もれていた。
ただでさえ白い肌が、薄暗い部屋の明かりの中で、まるで今にも消えてしまいそうなほどに青白く見える。
中也は小さく息を吐き、書類を近くのテーブルに放り出した。
「おい、太宰」
声をかけると、外套の隙間から、濁った琥珀色の瞳がじっと中也を見上げてきた。そこには、普段の彼女が纏っている自信に満ちた、あるいは人を食ったような笑みは一切ない。ただ、ひどく不安定で、どこか怯えたような、迷子の子どものような色彩が宿っていた。
中也は迷うことなく、その細い肩を引き寄せた。
太宰の体は、驚くほどに軽くて脆い。中也が少し力を込めれば、それだけで壊れてしまいそうなほどだった。
「寒ィのか。手が冷たくなってんぞ」
中也は太宰の細い手を両手で包み込み、自らの体温を分け与えるようにゆっくりと擦った。
対する太宰は、拒絶こそしないものの、どうしていいか分からないといった様子で完全に硬直している。その指先はピクリとも動かず、ただ中也の大きな手に預けられているだけだった。
「……中也」
「あ?」
「……何、それ」
太宰の声は掠れていて、今にも消えそうだった。
その問いの意図を、中也は正確に察する。太宰は、自分が今受けている「温情」の理由が分からないのだ。
彼女は、傷つけられることや、利用されること、あるいは誰かを欺くことには異常なほど慣れていた。だが、ただ純粋に、見返りもなく、大切に扱われるということに対しては、驚くほどに無知で、そしてひどく不器用だった。
「何これ、じゃねェよ。冷えてるから温めてんだろ。文句あんのか」
「文句というか……。意味が分からないよ。私は別に、怪我をしているわけでもないし、君に何かを要求した覚えもない。それなのに、どうしてそんな風に……過保護に、するの」
太宰は視線を泳がせ、中也の手から自分の手を引き抜こうとした。
だが、中也はそれを許さない。少しだけ力を込めてその手を握り直し、今度は太宰の体をまるごと、自分の胸の中に引き抱いた。
「うわっ……ちょっと、中也!?」
「いいから黙ってろ。お前は考えすぎなんだよ、いつでも」
太宰の背中に腕を回し、しっかりと抱きしめる。
中也の胸に顔を押し付けられる形になった太宰は、小さく息を呑んだのが分かった。中也の体温と、ほんのりと香る煙草と高級な香水の匂いが、太宰の嗅覚を満たしていく。
「お前はなァ、普段あんなに頭が回るくせに、こういう時の対応は義務教育受けてねェ餓鬼以下だな」
「……悪かったね、まともな愛され方なんて教わってこなかったものでね」
自嘲気味に呟かれた太宰の言葉に、中也の胸の奥がズキリと痛んだ。
ポートマフィアの最年少幹部。かつて「双黒」と呼ばれた相棒。彼女が歩んできた道は、常に血と硝煙に塗れていた。誰も彼女を「普通の女の子」としては扱わなかったし、太宰自身もそれを望まなかった。
けれど、今こうして中也の腕の中に収まっている彼女は、どうしようもないほどに小さく、脆い、一人の女だった。
「知ってるよ。だから今、俺が教えてんだろ」
中也は太宰の頭に顎を乗せ、その柔らかい髪を大きな手で優しく撫でた。
普段の粗暴な中也からは想像もつかないほど、その手つきは繊細で、甘やかすような慈愛に満ちている。
「愛され慣れてねェなら、これから慣れりゃあいい。お前が『もう十分だ』って逃げ出すくらい、俺がいくらでも甘やかしてやるよ」
「……そんなの、必要ない」
「要るか要らねェかは俺が決める。お前はただ、黙って俺に甘えられてりゃいいんだ」
中也の言葉は、どこまでも強引で、そして圧倒的な包容力に満ちていた。
太宰は、中也の胸に額を預けたまま、じっと動かない。拒絶の言葉を口にする割には、中也の体から離れようとしないのは、彼女の身体が本能的にその温もりを求めているからだ。
「中也は本当に、お節介で、乱暴で……馬鹿だね」
「何とでも言え」
中也はフッと笑い、太宰の背中をゆっくりと一定のリズムで 叩いた。
幼子をあやすようなその動きに、太宰の身体の緊張が、ほんの少しずつ、微かに解けていくのが伝わってくる。
太宰にとって、他人の好意や優しさは、いつ破裂するか分からない爆弾のようなものだった。裏があるのではないか、これを失ったらどうなるのか、そんな思考が常に頭を巡り、素直に受け入れることができない。
けれど、中也の向けてくる感情だけは、あまりにも真っ直ぐで、太宰のひねくれた思考回路を力技で叩き潰してくる。そこには計算も、打算も、一切の裏もなかった。ただ「太宰を甘やかしたい」という、中也の純粋な欲求だけがそこにある。
「……ねぇ、中也」
「あ?」
「私は、君が思っているような、可愛い女じゃないよ。中身はドロドロに腐っていて、いつ君を裏切るかも分からない、最低の人形だ」
自らを貶めるような言葉を吐き出す太宰。それは、これ以上中也に踏み込まれたくないという防衛本能であり、同時に「こんな私でも、本当にいいのか」という、酷く歪んだ確認作業でもあった。
中也は太宰の髪を撫でていた手を止め、彼女の顎を指先でクイと持ち上げた。
強制的に視線が交差する。中也の青い瞳は、真っ直ぐに太宰の、不安に揺れる瞳を射抜いていた。
「お前が可愛い女じゃねェことなんて、出会った時から知るかよ。中身が腐ってようが、最低の性格してようが、そんなことは今更どうでもいいんだよ」
「じゃあ、どうして……」
「俺が、お前を可愛いと思ってるからだ。それで十分だろ」
傲慢なまでの断言だった。
太宰は、言葉を失ったように目を丸くした。そんな太宰の額に、中也は優しく自身の額をコツンとぶつけた。
「お前がどれだけ捻くれてようが、俺の包容力の方が一枚上手だってこと、いい加減覚えろ、太宰」
「……本当に、勝てないな、君には」
太宰は諦めたように小さなため息を吐くと、ようやく、自らの意思で中也のシャツの裾をギュッと、小さく 握りしめた。
ほんの僅かな、けれど確実な太宰からの「甘え」のサインだった。
中也の口元が、満足げに綻ぶ。
「最初からそうしてりゃいいんだよ」
中也は再び太宰を深く抱きしめ、今度はその頭や背中だけでなく、包帯で覆われた細い首筋や肩口を、慈しむように何度も撫でさすった。
太宰は、中也の胸に完全に顔を埋め、小さな呼吸を繰り返している。その身体は、先ほどよりも確実に温かさを取り戻していた。
「……少し、眠いかもしれない」
外套の中から、籠った太宰の声が聞こえる。
「寝ろ。目が覚めるまで、どこにも行かねェから」
「……本当に?」
「おう。俺の言葉を疑うな」
中也がそう言うと、太宰は小さく「ん」とだけ鳴らし、それ以上は何も言わなくなった。
規則正しい、穏やかな寝息が中也の胸に伝わり始める。
不器用で、傷つくことを恐れて、愛されることに怯えていた少女。
そんな彼女を、中也はその有り余る過干渉なほどの包容力で、ゆっくりと、時間をかけて溶かしていく。
外の雨はまだ降り続いていたが、この部屋の中にだけは、二人だけの、ひどく甘やかで温かい時間が確かに流れていた。
コメント
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一気にリクエスト答えて頂いて本当にありがとうございますううう! だざさんはこのぐらい不安定な方が可愛いですよね! 私的に絶対だざさんはメンヘラなんですよね! なつほさん毎回長文で尊い物語書いていてほんとに尊敬でしかないです!
2作品目は、“ただ自分が大切にされて愛される”ということを知らない太宰さんに、なんの理由がなくても愛されることを教える中也の姿が素敵でした。 これからも、中也からの真っ直ぐな想いを受け取って、自分が愛されることが“当たり前”のようになるまで感じていって欲しいです!! いつも本当に素敵な作品ありがとうございます! どの作品も大好きですが、今回のお題が自分好みすぎてお気に入りです!
まさかの2作品を、同時に読めるなんて!! 1作品めは、周りの人から見たら“めんどくさい”性格をした太宰さんも、中也の前ではそんなモノ関係ないんだと実感できる作品でした!! しかも、そんな性格もまで愛して太宰さんの不安を拭う中也がめちゃカッコイイ!!