テラーノベル
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目を開けるとそこは自室のベッドの上だった。頭がぼんやりとして上手く働かない。
「お目覚めですか」
頭上から聞こえた声に反応してティアナはゆっくりと身体を動かし声の主を見た。
「モニカ……」
「先程医師に診て貰いましたが、特に大事はないそうです。レンブラント様からお伺いしたお話から察するに、少しティアナ様には刺激が強かった様ですね」
苦笑するモニカから彼の名前を聞いた瞬間、一気に記憶が蘇る。
(そうだ、私教会でレンブラント様と……)
顔も身体もどうしようもなく熱い。
「でも私どして……」
彼と口付けを交わし、彼はティアナの首元に顔を埋めて口付けたり舌で舐めたりしていた。その事に心臓が破裂しそうな程恥ずかしくなって次第に頭がクラクラして記憶はそこで途絶えた。
その後一体どうやって屋敷に戻って来たのか分からない。レンブラントはどうしたのだろう。
「レンブラント様は……それにモニカ、貴女どうして」
「実は……行く宛のなかった私は、ずっと教会でお世話になっていたんです。そんな時、偶然にもレンブラント様が教会へいらっしゃりお会いしたんです。そこで少しお話を致しまして……私の話を聞いたレンブラント様は数日後に今度はティアナ様を連れてくるから少し話してみたら良いと言って下さいました。教会でティアナ様とレンブラント様がお話を済ませた後、私はティアナ様とお話をして頂ける予定だったんです。ですがその前にティアナ様が倒れしまわれて」
気を失ったティアナをレンブラントは抱き抱えて屋敷まで送り届けてくれたそうだ。その際に心配したモニカは、居ても立っても居られなくなり一緒に屋敷に帰って来たと話してくれた。
「モニカ、また教会に戻ったりしないわよね」
「ティアナ様……」
「貴女が居ない間、ハナもミアもあたふたしてばかりで余りに仕事にならなくて大変だったわ。やっぱりあの二人は貴女がいないとダメみたい。それに……貴女がいないと私も寂しい」
モニカの瞳から大粒の涙が流れた。彼女が涙を流す所を初めて見た。見えない様にと手で顔を覆うが、隙間からこぼれ落ちていくのが見えた。
「申し訳、ございません」
何度となく謝罪を繰り返すモニカに「もう謝らないで」と声を掛けると、言葉が上手く出ない様子で涙はそのままに何度も頷いていた。
「お帰りなさい、モニカ。帰って来てくれてありがとう」
ティアナはベッドから起き上がりモニカを抱き締めた。
「仲直りは出来た見たいだね」
暫くして部屋にはレンブラントが入って来た。もう帰ってしまったとばかり思っていたので、ティアナは目を見張る。だがその一方で嬉しく思った。
「レンブラント様」
モニカは彼に譲る様にしてティアナから離れると部屋を出て行った。するとレンブラントは透かさずティアナを抱き寄せた。
「ティアナ、気分はどうだい」
「大丈夫です」
「そう、なら良かった。でも君が倒れた時は心臓が止まるかと思ってしまったよ」
「申し訳ありません……」
彼に心配を掛けてしまった事だけでなく、折角のデートを台無しにしてしまったと申し訳なさで一杯になる。
「謝る必要はないよ。僕が少し調子に乗り過ぎてしまったんだ。寧ろ謝るなら僕の方だ。許してくれるかい?」
「勿論です! あの、レンブラント様も許してくれますか」
「愚問だよ」
この日レンブラントはフレミー家の屋敷に泊まっていった。夜遅く寝る寸前までたわいの無い話をして過ごし、また少し彼との距離が縮まった気がした。
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