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1話完結の短編となります。1800字ほどあります。人狼の要素を含んだ雰囲気作品なので、ふんわり読んでください(*..)

⚠️注意⚠️

・らだぴく ・タヒネタ

登場人物(敬称略)

・紺野らだ男|らっだぁ

・白井ぴく兎|ぴくとはうす



月明かりに照らされる校舎に古いピアノの音が響く。上手いとも下手とも言えない旋律は、長い、永い間の努力の賜物だ。


「…先輩」


ピアノの音が止まる。


『…白井、なんでまだ居るん?』


「それはこっちのセリフです」


短い沈黙。青白い月光に照らされる音楽室は、静寂に包まれる。


「街に、人狼が出たからって下校することになったじゃないですか」


『委員会の仕事があって』


「先輩、生徒会には入ってないですよね。仕事あったの、生徒会だけですよ」


『…』


「ねぇ、人狼って先輩でしょ」


『ッは?…んで』


「見ちゃったんです。満月の夜に先輩が狼になるの」


カーディガンの青年は、ふわりと微笑む。見た目の可愛らしさとは裏腹に、その笑みはまるで蜘蛛の糸のような、逃れられない、恐ろしさがある。


『見間違いじゃない?』


「先輩ってさ、孤児なんでしょ?だから、昔の写真とかないんだっていつも言ってたじゃないですか」


『…急になんだよ』


「この前ね、図書館で昔の記録見てたら、先輩がいたんだ」


『…は?』


「嬉しそうに笑ってたよ、今と同じ顔でさ」


青年は、”先輩”の言葉など気にも止めずに話す。ひとりで詩を紡ぐように、静かに、とても楽しそうに。


「今まで、人狼だなんてこの街で出たこと無かった。でも、先輩は昔からずっと、ずっと、名前を変えてこの街にいたんですよね」


『何が言いたいんだよ、』


「今、人狼の被害が出たってことは、限界なんですよね。人の肉を食べない生活は、そう長くは続けられないんでしょう」


『…でも、人は喰いたくない』


「そんなこと言ってるから、人に見られちゃうんですよ」


『俺は喰ってない』


「うん、喰べてないですね。ちょっと、自制が効かなかっただけ」


青年はゆったりと先輩の傍へと歩いていく。


「ねぇ、先輩。僕を喰べてください」


『は?』


「だめですか?今なら、誰にもバレない」


『そういう問題じゃない、お前は…ぴく兎は、』


「そんな、人間みたいなこと言わないで」


青年_白井ぴく兎は悲しむように言う。


「僕は、先輩が人間じゃないみたいだから好きなんです。僕のこと、笑い飛ばしてくれるから」


『それとこれとじゃ話が違うだろ』


「違わない、僕は先輩の為なら人だって殺せる。バレないようにご飯を用意できる」


まるで冗談のように、狂気を感じる程に真っ直ぐに、白井は先輩_紺野らだ男の目を見て言う。


「でも、らっだぁはそれを求めてる訳じゃないでしょ?」


『俺は、お前に殺人鬼になってほしいわけじゃない』


「知ってる、殺人鬼になって欲しくもないし、食糧にしたい訳でもない。…僕のこと、愛してるから」


白井は夜風に吹かれ、ふわりふわりと揺れる白いレースカーテンへと近づく。


「ねぇ、らっだぁ」


白いレースカーテンを、頭に被せて悲しそうに微笑む。


「結婚式しよう」


『は…?』


「ここで、ふたりだけの。人狼と人間の結婚式をさ」


『なんで…急に』


「僕たちは、生きる時間が違うから。だからさ、ここで結婚式して、らっだぁが僕のことたべてよ。そしたら、ずっと一緒にいられるから」


『いや、だよ。おれだけ置いてかれる』


「…僕がいなくなったら、らっだぁはまた、人を好きになるの?」


『そんなの、』


「わかんないよね、ごめんね。でも、僕わがままだから、もしらっだぁが僕の居なくなった時に好きになる人が僕の生まれ変わりだったらいいなって思うんだよ」


白井は、独白のように語る。紺野への想い、自身が人間である事の悔み、そして、紺野に出会ったことで変わった自身の人生について。


「だからさ、らっだぁ。僕のことたべてよ」


白井は、にこりと笑う。喰われることへの恐怖など1ミリも感じさせない笑顔で。


「そうしたら、僕もらっだぁもひとりじゃないよ」



翌朝、人狼の被害者が出たとニュースが流れる。


〔今朝、私立仁楼高校で人狼の被害に遭ったと思われる遺体が見つかりました。片方の遺体は損傷が激しく、身元の特定が難しいですが_〕


街は、いっそう騒がしくなることだろう。人狼が、人間を食べたと。


〔もう一方の遺体は、17歳の仁楼高校の生徒、白井ぴく兎さんであることが分かっています。〕


その人狼が、もうこの世にはいないことも知らずに。

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