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R
23
#執着
さぶれ
1,448
「んっ、何して……!」
突然のことに、驚いて身体を突き放す。
「……キスぐらいで、騒ぐなよ。いいだろ?」
酔っているとは思えない力強さで腕が引かれ、厚い胸板に引き戻される。
「ちょっ、と……」
抗う間もなく、再び唇が迫り寄る。男性的な色気から目が離せないまま、
「ぅん……」
わずかに開いた唇の端を割り、舌の先がねじ込まれた。
「ね、待って……!」
身体を押し戻そうにも、両腕で強く抱き込まれ抵抗もできない。
「……社長、んっ……」
どうにか逃れようと腰をよじった時、エレベーターが止まりドアが開いた──。
咄嗟にフロアに飛び出そうとしたのを、閉めるボタンが押され、片腕にグッとまた抱き締められた。
「あっ……」
開いていた扉が目の前で閉まり、エレベーターが最上階に向かい上昇を始める。
「……俺の部屋に、来いよ……」
耳元で吐息を絡め囁かれる。
「でも私……彼のところに、」
「いいから」
有無を言わせぬ口ぶりで言い、
「今日は、俺のところに来い」
命令するかのように、じっと私を見つめる。
「でも……」
「俺の言うことが、聞けないのかよ?」
逆らえない。強引さに惹かれてしまう気持ちを抑え込めない。
閉じられたエレベーターの密室からは逃げられないまま、やがて最上階まで運ばれてしまった──。
最上階に着くと、フロアの全てが一つの部屋になっていて、春樹の住む部屋とは桁違いな広さに驚きが隠せなかった。
中へ入ると、私を片方の腕に抱いたまま鷹騰社長がソファーにドッと倒れ込む。
広すぎるくらいのリビングをキョロキョロと見回しながらも、相変わらずがっしりと手に抱かれたままの肩が熱く火照ってくるのを感じていた。
キスの衝撃に引きずられ、ついここまで来てしまったけれど、鷹騰社長の部屋になんて本当に来てもよかったんだろうか……。
「……。……あの、社長……大丈夫なんですか?」
なんとか他へ意識をずらそうとして、様子を窺ってみるけれど、
間近に香るアルコールとメンズトワレの入り混じる精悍な男の匂いに、胸はよけいにドキドキと高まるばかりで意識せざるを得ない。
お願いだから、ちょっと私から離れてくれないかなと思っていたところへ、
「……大丈夫だ……だが、水を少し持ってきてくれないか?」
そう返事があって、完全にタイミングを見失っていたのをようやく離れる口実ができたことにホッとして、ソファーを立ち上がった。
「水は……どこに、あるんですか?」
立ってはみたものの水のありかさえもわからないとか、半端ないスケールなんだけど……と、ソファーにもたれる社長を振り返った。
「そこに、サーバーがあるだろう……」
指差す先を辿ると、部屋の隅にウォーターサーバーがあるのが目に入った。
グラスに水を入れソファーへ持っていくと、
「飲ませろよ……」
と、再び命令口調が飛んだ──。
飲ませろって……と、鷹騰社長の背中に手を当てがい、ソファーから身体を抱き起こした。
「……飲んでください……水」
こうすればいいんだろうかと、戸惑いつつも口元へ傾けたグラスが、
「……そうじゃない」
胸元に突き返されて、「……だったら、どうすれば……?」と、グラスを手にしたまま、うろたえて尋ねた。
「その水、おまえが飲めよ」
そう彼から答えが返って、
「……えっ、どうして……」
ますます頭に疑問符が浮かんで、どうしたらいいのかがわからなくなる。
「飲めよ、いいから」
眉間にしわが寄せられたあからさまにムッとした顔つきで、そう言い下されて、従わずにはいられないような気分で、水の一口をごくっと飲んだ。
「……飲んだよな?」
訊かれて、無言で頷くと、
「飲んだら、こうするんだよ」
いきなり手首が捕まれぐいっと引かれて、
「うん……っ」
彼の顔が眼前に迫り寄ったかと思うと、唇が奪われ飲み込み切れずに口の中に残っていた水分が舌で絡め取られた。
一瞬何をされたのかもわからないまま、呆然と口を開いていると、
「……水が、足りない」
彼が低く呟いて、
「……もう一口、飲ませろよ」
酔って微かに赤く潤んだ眼差しで、じっと私を見つめた。
「……もう一口って……、」
恐る恐る口にするのに、「わかってるだろ」言い含めるような一言が戻る。
その自信に満ちた口ぶりに、直視する目線の鋭さに、抵抗すら忘れて、
まるでそうしなきゃいけないかのようにグラスから水を含むと、彼の顎に手を添えて口移しに水を飲ませた……。
口の端から垂れた水を片手で横に拭う仕草に、目が吸い寄せられる。
「……うまかったぜ……水」
「……何、言って……」
一気に頬が赤らんで熱を持つ。
「……キス、してもいいか?」
真っ赤になった顔が見咎められて、何も言い返せずにいると、
「嫌だと言わないってことは、いいんだよな?」
唇が重なり食むような激しさで口づけられた。
強く抱く腕に、深く差し入れられる舌に、知らず知らず気持ちが引きずられていく。
突っ張ねることもままならずに、巧みなキスに翻弄される内、
「……ベッド、行かないか?」
そう誘いかけられて、
「えっ……」と、思わず返事に詰まった。
「……行こうぜ。ソファーじゃ狭い……」
答えも聞かずに、膝裏に片手を差し込むとそのままグッと私の身体を横抱きに抱え上げた。
「ま、待ってください……」
突然に抱きかかえられ、断る機会を失う。
「俺を拒む理由なんて、ないだろ?」
私の意思なんて初めから関係ないとでも言うようなセリフとともに、ベッドの上に身体が投げ出された──。
コメント
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あおいです🤍 第23話、読ませていただきました。 社長の強引さに引きずられていく感じ、すごくドキドキしました。エレベーターの密室から最上階の部屋、口移しの水のシーン…ひとつひとつの距離の縮め方が巧みで、抗えない空気感が伝わってきます。最後にベッドに投げ出されるまでの流れ、もうどうなるんだろうって息を詰めて読みました。続きが気になります…!