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第2話
nmmn
rtkg
学パロ
付き合っている設定
第1話の続き
夕方、オレンジ色の光が差し込む教室は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
机が整然と並び、窓際のカーテンが風に揺れている。
カゲツは自分の席に座り、机に突っ伏して深く息を吐いた。
――思い出すだけで顔が熱くなる。
昼休みにクラス全員の前で、あんなふうに乱れてしまったこと。
「……最悪や」
小さく呟く。羞恥と後悔で胸がいっぱいだった。
「何が最悪なんだよ」
不意に声が降ってきた。顔を上げると、窓辺に寄りかかるリトがこちらを見ていた。
制服の第一ボタンを外し、ゆるくネクタイを垂らした姿。いつもの穏やかな笑顔はなく、少しだけ困ったような表情をしている。
「宇佐美……」
思わず呼んでしまう。反射的に視線を逸らした。
リトが机を回り込み、カゲツの隣に腰を下ろす。
「カゲツ、怒ってる?」
「当たり前やろ……。なんであんなふうに……っ」
「俺だって、あそこで止めたかったよ」
リトの低い声が重なり、カゲツの胸がざわめく。
「でも、クラスの前で突っぱねたら、逆に変に思われただろ」
「でもっ……。ぼく……恥ずかしくて死ぬかと思った」
唇を噛む。頬がまだ火照っているのが分かる。
リトはしばらく黙ってカゲツを見つめ、やがてふっと笑った。
「……可愛かった」
「はぁ!?」
「必死で声を押し殺そうとして、でも抑えきれなくて……あれ、俺しか知らない顔だと思ってた」
耳元に低く囁かれ、全身が熱くなる。
「あほ……っ、みんなに……見られたのに……」
「見られたからこそ、余計に思ったんだ」
リトの手が机の下でカゲツの指に触れる。
「俺だけのものにしたいって」
ぎゅっと手を握られる。
大きく温かな掌に包まれると、昼間の羞恥と不安が少しずつ和らいでいくのを感じた。
「……リト」
無意識に、普段は呼ばない名が零れる。
呼んでしまった瞬間、リトの目が嬉しそうに細められた。
「今夜、俺の部屋に来る?」
「なっ……」
「ちゃんと、俺だけが知ってるカゲツを見せて」
囁きに心臓が跳ねる。
夕陽の中、教室の影に溶けるように、リトの顔が近づいてきた。
唇が触れそうな距離。
昼間のざわめきが遠い記憶に霞んでいく。
――ふたりの秘密は、まだここで終わらない。