真っ白な部屋に
春の気配を感じさせる暖かな風が吹き込む。
もうすぐ冬も終わるというのに、
俺はまだこの部屋に閉じ込められている。
ようやく出られたと思っても、
気づけばまたこの部屋に戻ってきている。
普通の生活に憧れて逃げ出したこともあった。
でも、“普通”は手に入らなかった。
諦めるしかない。
それはわかっている。
紫 『桃く〜ん、入るよ〜?』
桃 『ん、』
いつものように、
そっけない返事が返ってくる。
紫 『調子はどう?』
桃 『普通、』
紫 『……嘘だね』
桃 『…嘘じゃない、』
桃くんは嘘をつくとき、
必ず俺から目線を逸らす。
今日はあまり調子が良くないのだろう。
紫 『…37.3、』
紫 『微熱あるよ』
桃 『……、』
紫 『頭痛いんじゃない、?』
桃 『…痛くない、』
桃くんは俺が初めて担当した患者。
彼のことは、5歳の頃から毎日のように見てきた。
小児がんを患って12年。
入退院を繰り返す日々で、
家よりも病院にいる方が多いはずだ。
完治したと思っても、
数ヶ月後に再発。
俺自身、なかなか完治させてあげられない自分に
落ち込むこともある。
完璧に取り除いたと思った腫瘍は、
また体内で息を吹き返し、彼を蝕んでいく。
これほど悔しいことはない。
同じように入院していた彼の仲間は
元気に退院する子もあれば
亡くなってしまった子もある。
毎日毎日、
自分はどうなるのだろうかと不安を抱えながら、
去りゆく仲間たちを儚げに見つめる彼。
普通の学校生活にどれだけ憧れているのだろう。
どれだけ苦しい思いをしているのだろう。
どれだけ病を恨み、どれだけ泣いてきたのだろう。
俺は、何をしてあげられるのだろう。
悩んでも、悩んでも、
答えは見つからないままだ。
紫 『…無理しても体は辛いままだよ』
紫 『……やっぱり、治療しようよ、』
桃 『嫌だ、』
これまで幾度となく受けてきた抗がん剤治療。
今回は、提案してからというもの、
ずっと断られている。
気持ちは痛いほどわかる。
辛い治療を受けても、
手術をされても治らない。
そんな苦い経験を、
彼はたった17年の人生で幾度となくしてきたのだから。
医者としては、もちろん治療を受けてほしい。
初めての治療から約10年。
体も成長して、
ほぼ成人と同じ扱いで治療ができるようになった。
昔よりも短期間で治療が可能ではあるのだが、
辛さも苦しさも変わらない。
それが彼にはわかっているのだろう。
紫 『…どうしても嫌、?』
桃 『……、』
紫 『…正直、』
紫 『この治療をしなかったら、がんは全身に転移していくと思う』
紫 『そうなったら…』
紫 『…俺には助けられない、』
彼の瞳が少し揺れた。
5歳だった彼も、今や17歳だ。
言葉の意味などまだ幼かったあの日に比べれば
容易に理解できるはずで、
それに対して自分がどう感じたかもなんとなくわかる。
だから、あえてストレートな言葉で伝えた。
自分で受け止めて、
自分で解釈して、
自分で自分の人生を決めてほしい。
紫 『…どうする、?』
桃 『……、』
桃 『…治療したら、治る、?』
その言葉を聞いた瞬間、
幼かったあの日に戻った感覚がした。
彼はあの日も言ったのだ。
「ちりょうしたら、びょうきなおる?」と。
俺は、答えを出せなかった。
そして、今も___
紫 『…100%、とは言えない』
紫 『でも、』
紫 『完治させたい』
紫 『…いや、完治させてみせるよ』
俺は、明確に目標を宣言した。
あの日とは違う。
きっと、俺も成長しているのだ。
あとは、彼の答えを待つのみだ。
桃 『…治療、する』
紫 『…!』
桃 『でも、』
桃 『わがまま、言ってもいい?』
紫 『…実現できるものなら、』
桃 『…青に担当してほしい』
紫 『…笑、』
紫 『もちろんだよ』
彼のいう“青”とは、
彼がまだ小さな頃についてくれていた看護師のこと。
俺と同期だから話しやすいし、
一度桃くんの担当は外れてしまっているけど、
彼ならきっと大丈夫だろう。
俺はすぐに青に事情を説明した。
彼は快く受け入れてくれた。
同期からいきなり桃くんの担当についてほしいと頼まれて、
どうしたものかと困惑したが、
桃くんからのご指名とのことだったので
もちろんOKした。
それにしても、
どうして僕なんかを選んでくれたのだろう。
気になって仕方がなかったので、
久しぶりに桃くんと会ってみようと思った。
青 『失礼しま〜す』
桃 『あ、青だ』
青 『青“さん”でしょ』
桃 『ふはっ笑』
桃 『変わってないね』
青 『桃くんは変わりすぎだよ』
青 『かっこいい声になっちゃったりしてさ』
桃 『そう?笑』
桃 『青は相変わらずガッサガサだね笑』
青 『なっ、!』
失礼なところも変わってないみたい。
ケラケラと笑う桃くんに
早速、本題の質問を投げかける。
青 『…ところでなんで僕を選んでくれたの、?』
桃くんは少し考えていた。
桃 『…こわいから、』
青 『こわい…?』
桃 『治療、こわいから、』
正直、驚いた。
こんなにも素直に答えてくれることに。
青 『…そうだよね、』
青 『何回も受けてきたもんね、』
桃 『…、』
桃 『青は優しいね』
窓の外を眺めながら桃くんは言った。
青 『優しいって思ってくれて嬉しいよ、』
僕はずっと、優しさから逃げてきた人間だからね。
僕が看護師として初めて受け持った患者さんは、
“黄くん”という子だった。
彼は重度の喘息を患っていた。
小児喘息ということもあり、
担当医も親御さんも、なかなか手術に踏み切ることができていなかった。
その頃まだまだ若かった僕は、
彼にとって話しやすかったのか、とても懐かれていた。
長話をするくらいの仲になり、
その中で、彼のまだ知らない
「外の世界」の話をすることも多かった。
走ったり、跳んだり、何も制限なく自由に運動をできる楽しさや、
大きな声で歌っても咳き込まずに生きられることも、
僕は何気なく話した。
そして、彼に勇気を与えたくて、僕は言った。
「黄くんも治ってきているし、もうすぐそういうことができるかもね」
それは、優しい嘘のはずだった。
いや、嘘ではなかった。
けれど、まだ小学校1年生の彼に、
それが嘘かどうかなんて、見極められるはずがなかった。
その優しさは間違っていた。
彼は、僕たちが目を離した隙に中庭に出て、
激しい運動に励んだようだった。
そして、その間に発作が起きた。
気づいた頃には、もう息はしていなかった。
そのまま息を吹き返すことも、なかった。
僕は悔やんだ。
目を離したこと、気付くのが遅れたこと、
何より、
間違った優しさを押し付けたことを。
もし、僕が勘違いさせるようなことを言わなければ。
僕がもっと発言に気をつけていれば。
誤解するかもしれないと、わかっていれば。
何より救いたかった命を、
絶対に助けることのできた命を、
僕が亡くしてしまったのではないか。
優しさは、時に残酷なのだと、
あの時知った。
それからというもの、
勘違いさせてしまう優しさを捨てた。
わざと、感情を無くした。
そうでもしなければやっていられなかった。
あんなに子どもが大好きで、
関わりを持てることに幸せを覚えていたはずなのに、
僕がかける言葉ひとつで、
今目の前にいる
可愛い可愛い子どもたちの命を奪ってしまうかもしれない。
そう考えると、怖くて何も言えなくなった。
事務的な会話しかできなくなった。
そんな時に出会ったのが、桃くんだった。
彼は無口だった。
いつも何かに怯えていた。
「この子には、優しくしてあげたい」
久しぶりに、そう思った。
でも、やっぱり僕にそんなことはできなかった。
一度間違った優しさを押し付けてしまった僕が、
正しく優しい言葉をかけるなんて絶対に無理だ。
そう思っていた。
だけど、桃くんは少しずつ心を開いてくれた。
何故だかはわからない。
でも、確実に口数が増えていった。
僕の前でだけは、怯えるような素振りを見せなくなった。
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
そして今、またこうして指名してくれて、
僕のことを優しいとまで思ってくれていて、
とても幸せだ。
青 『また今日からよろしくね』
桃 『…こちらこそ、/』
照れた様子で言う桃くんは、
もう子どもではないのに、何より可愛く見えた。
治療が始まる。
怖い。
すごく怖い。
何歳になっても怖い。
大人になっても、怖いものは怖い。
俺の両親は、俺が2歳の頃に亡くなった。
だから、親の顔も、声も知らない。
すぐに祖母に引き取られたが、
俺の病気が発覚して、
俺はすぐに入院生活になった。
祖母と生活した記憶も、あまりない。
俺が入院している間に、祖母も亡くなってしまった。
もう、俺に身寄りは無くなった。
愛情を受けないまま育った。
病気はなかなか完治しないし、
助けを求められる人もいない。
なんで俺ばかり、
こんな運命を与えられなければならないのかと、
何度思っただろう。
母親や父親がお見舞いに来て、
時には寝かしつけてもらっている同室の子を見て初めて、
俺には何もないと知った。
思い出は病院だけだ。
出掛けた記憶も、
遊んだ記憶も、
俺に愛情を注いでくれた人との記憶はない。
虚しい。
治療は怖いが、
俺が人生のほとんどを過ごしたこの病院から離れる方が
よっぽど怖い。
世間知らずの俺が世に出たところで、
一体何ができるというのか。
だから、治療はしたくなかった。
死んだ方が、マシだった。
でも、何度もその考えを変えてきてくれたのは、
紫ーくんと青だった。
紫ーくんは、物心ついた時から俺の担当だった。
物腰柔らかくて、
笑顔を絶やさない。
小児科医に選ばれたような存在。
なんの感情もなかった俺に、
愛情とはなにかを教えてくれた。
俺に身寄りがないことを知ってからは尚更だった。
親とまではいかなくても、
本当の兄のように接してくれた。
たくさん話してくれた。
治療の時は、俺が寝るまでそばにいてくれた。
治療を受けたくない、と言っても
紫ーくんは怒らず、ただ話を聞いてくれた。
「まだ桃くんと一緒にいたいな」
そう優しく言ってくれた。
青には、紫ーくんとはまた違う優しさがあった。
本人は「優しさなんてない」と言っているが、
俺はそうは思わない。
本当は誰よりも愛情深くて、
優しさを大切にしていて、
子どもが大好きな人。
見舞いに誰も来ず、暇している俺をみて
誰よりも遊んでくれたのは青だった。
青こそ、俺の親と言っても過言ではないかもしれない。
だから、愛してくれた二人に、
「最後の治療」を託したい。
そう思った。
桃 『げほっ…けほっ…、』
青 『ゆっくり息してね』
桃 『っ……、』
年々副作用が強く出てきている気がする。
治るか治らないかなど、俺自身は正直どうでもいい。
ただ、この苦しみから解放されたくて、
必死にもがいているだけだ。
紫 『なかなか落ち着かないねぇ…』
紫 『吐き気どめ増やそうか、』
青 『…はい、』
俺にはわかる。
身体がかなりまずい状態であるということが。
きっともう長くなんてなくて、
でも、それがどこか嬉しいような気もしていて、
本当は寂しくて苦しくて仕方ないはずなのに、
あまりにも死をすんなり受け入れている自分がいる。
早く解放されたい。
ただそれだけ。
紫 『…っ、』
青 『ちょっ…あぶなっ、』
紫 『ごめ、』
青 『紫ーくん…もう無理しちゃダメだって、』
紫 『…わかってる、』
紫 『でも…桃くんを助けないなんて無理、』
青 『っ…わかってるよね、』
青 『…もうすでに全身に転移してる、』
青 『治すことはできない』
青 『緩和ケアに切り替えるべき段階だよ、』
紫 『わかってるっ…、!!』
紫 『受け入れたくないの…っ、』
紫 『自分の子ども同然の子を…っ、』
紫 『見てるだけなんて…無理だよ、』
青 『………、』
青 『紫ーくん、』
紫 『っ…、』
青 『僕だって桃くんのことはとっても大切に思ってるし、紫ーくんに負けないくらい、大好きだよ』
青 『でも、それと同じくらい、紫ーくんのことも大切に思ってる』
青 『紫ーくんの今の状態で仕事するのは危険だよ』
青 『……入院、しよ?』
先天性心疾患。
これが無ければどれだけ楽しい人生だったかと、
幾度も考えた。
運動はまともにできず、
行動は全て親に制限された。
抗えない運命に何度も抗おうとした。
そのうちのほんの少しの抵抗が“医師になること”だった。
全員に反対されたが、反対を押し切って医師になった。
医師になってから、
定期的に行っていた手術の時間が取れず
無理して薬だけで生活していた。
しかし、
最近になって手術を受けていない弊害が出てきて、日常生活に支障が出てきている。
青ちゃんは初めから俺の病気は知っていたからこそ、
俺の最近の状態を見て本気で心配してくれている。
わかっている。
ありがたいとも思っている。
でも。
でも、違う。
俺は、桃くんの担当になった時に決めたのだ。
この子に一生を捧げると。
「死んでも助ける」と。
だから、今ここで
紫 『…入院なんて、できない』
青 『でも、』
紫 『出来ないものはできない、っ!』
紫 『………桃くんのところ行ってくる、』
俺はまた、現実から目を逸らした。
現実はすぐに目の前に現れた。
桃 『…紫ーくん、』
秒針の音だけが響く部屋で、声をかけられる。
桃 『正直…俺、もう無理っしょ、』
紫 『…っ、!』
紫 『そんなこと…あるわけ、』
桃 『あるよ、』
桃 『……自分のことくらい、自分でわかる』
桃 『紫ーくんには感謝してるよ、』
桃 『こんなにずっと一緒にいてくれてさ、』
桃 『…なんなら育ての親的な感じだし、?』
桃 『本当に本当に、感謝してる…から、』
桃 『…治療は、辞めたいかな』
桃 『本当に辛い、』
桃 『治すとか治さないとか…もう俺にはどうでも良いかも、笑』
桃 『…来世では絶対、紫ーくんの子供に生まれてくるから、』
桃 『ねっ…だから、』
紫 『もうやめて……っ!!』
思わず声を荒げた。
紫 『……死なないで、』
紫 『俺は…助けたいのに、ポロ』
紫 『ただ助けたいって…それだけだったのに、ポロ』
紫 『なんでこんな悲しいこと言われなきゃいけないの…、ポロ』
桃 『紫ーくん…、』
俺は今、医師としてあるまじき行為をしている。
患者を前に大泣きするなどありえない。
泣きたいのはいつだって、患者の方だ。
そんなこと、自分が一番わかっているはずなのに。
紫 『……ごめん、ポロ』
紫 『泣きたいのは…桃くんの方だよね、』
桃 『……俺のことを大切に思ってくれて本当にありがとう、』
桃 『…俺はそれで、十分だよ』
本当に、現実に向き合わなければならない時がやってきてしまった。
紫ーくんが泣き出したのには驚いたけど、
同時にそれだけ思ってくれていることが伝わって
初めて“愛”を心で感じたような気がした。
その後も、俺は気持ちを変えることなく、
治療をやめ、
緩和ケアに切り替えてもらった。
これは、俺が最期に選んだ幸せだ。
そして、紫ーくんと青にしてもらう、
「最後の治療」だ。
緩和ケアだって立派な治療なのだと、
受けている中でひしひしと感じる。
これで良い。
生きていくことが全てではない。
今日終わるかもしれない人生を、
必死に楽しむことが、何より大切なことなのだ。
『愛を教えてくれてありがとう』
彼の最期の言葉だった。
治療を辞めたいと本人に言われた時、
僕はなんと声をかけるべきだっただろうか。
生きる希望を無理に与えようとしたあの日。
ただ、その日を楽しんだあの時。
病院の庭に出られる喜びを二人で噛み締めた日。
彼との思い出は、全て鮮明に思い出せる。
本当の子どものような存在だったからこそ、
「あの時、こんな声かけをすれば」
「あの日、怒らずに話を聞いてあげれば」
という数えきれないほどの後悔が、
僕の中で出ては消え、出ては消えを繰り返す。
でも、今更後悔しても遅い。
彼が生きられなかった分を、僕は生きていかなくてはいけない。
もちろん、彼のことは一生忘れない。
絶対に。
そして、
まだ問題を抱えている人が一人、僕の隣にいる。
青 『紫ーくん…良い加減入院してよ、』
紫 『嫌だ、』
青 『もう……、』
このように、
イヤイヤ期の子どものようになっている大人がいる。
青 『…桃くんは、紫ーくんのこと悪く思ったりしてない、』
青 『むしろ感謝してたし、大好きなはずだよ』
青 『桃くんが大切な紫ーくんには、僕も生きていてほしいよ』
紫 『………、』
紫 『死んでも助けるって決めたのに』
紫 『助けられなかった、』
紫 『…死んだ方がマシだよ、』
紫 『桃くんは俺の生きがいだった、』
紫 『この子を助けるまでは生きるんだって思えた』
紫 『でも…もう生きる理由なんてない、』
紫 『このまま働いていても邪魔なだけだよ、』
橙 『あの時あんなに必死になって助けたったのになぁ』
赤 『死なれちゃ困るよ〜』
やっと来た。
彼らは紫ーくんの研修医時代の担当で、
紫ーくんが倒れた時にいつも助けてくれていた先生たち。
赤先輩は、僕の先輩でもある。
そこまで年は離れてない。
3個上の先輩。
橙 『青に頼まれて来ちゃったわ〜』
赤 『こっちも忙しいんだから子どもみたいにならないでよね〜』
紫 『………、』
紫 『やめてください…俺は死ぬんです』
橙 『そういうこと言わない!』
先輩たち、どうかお願いします。
…桃くんのためにも。
「大好きだった」なんて、言わないでほしかった。
それは俺が言うはずだったのに。
桃くんのいない世界は、とても暗く見えた。
俺は生きる気などないのに、
青ちゃんは毎日入院しろと言ってくる。
桃くんもこんな気持ちだったのかな、と少し考えて後悔する。
そんな日々に、突然現れた先輩二人。
橙 『俺が助けるからな』
赤 『良いから休んでなさい』
俺が何を言ってもこれだ。
結局、俺は二人によって勝手に入院させられたわけで、
毎日腕に点滴が刺さったまま生きている。
聞いたところによると青ちゃんが二人に懇願したらしい。
確かに、二人ほど人の意見も聞かず、無理矢理な人はいない。
でも、きっと彼らは「助けたい」という気持ちが誰より強い。
なんだか、初心を強制的に思い出させられている感覚だ。
「誰かに助けられた分、誰かを助けたい」
そんな気持ちで医師になったはずなのに、
いつの間にか忘れてしまっていたみたいだ。
桃くんの分も生きて、
誰かを助けないと。
そう思えた。
紫 『っ”…………、!』
赤 『紫ーくん、?』
赤 『橙くん!紫ーくんが!』
橙 『…心臓押さえてんな、』
橙 『ほんまは本人から手術受けるって聞きたかったけど、』
橙 『しゃーない、緊急オペや』
橙 『絶対助けるで』
赤 『大丈夫、助けるよ、』
紫 『ん………、』
青 『…紫ーくん、?』
青 『わかる?』
紫 『ん、』
青 『…よかった、よかった、ポロ』
橙 『起きたん?』
紫 『せんせ、』
橙 『…よかったな』
赤 『紫ーくん!良かったね〜!』
紫 『…ありがとうございました、』
赤 『どういたしまして〜』
橙 『…生きるってすごく尊いことや』
橙 『紫ーくんはよくわかってると思うけど、生きたくても生きられん人もおる』
橙 『まずは“今日”を大切に生きて』
橙 『誰かを助けるのはその後や』
橙 『医者は、そんな簡単に“死”を選んじゃいけない』
橙 『俺が助けた命なんやから、また誰かを救うために生きていってな』
紫 『…はい、!』
誰かを助けるだけじゃない。
人は誰しも誰かに助けられている。
誰かのために、
俺は救われた命をもって、
これからも生きていく。
もちろん、彼のことは忘れない。
これからも、ずっと。
🍀ご報告🍀
私Sayaは、この作品をもって投稿を辞めさせていただきます。
急なご報告となり、申し訳ございません。
今までたくさんの応援、ありがとうございました。
2年半、とても楽しかったです!
最後の作品がこんなので申し訳ないです!
またいつか現れた時には反応してやってください🙏🏻
ありがとうございました!
またいつか👋🏻
Saya
コメント
2件
めちゃくちゃ感動して心にぶっ刺さったと思った瞬間の衝撃すぎる情報でビックリしました…。 sayaさんが決めたことなら仕方ないですけど悲しいです🥲 今までほのぼのする話やこの話みたいに感動できるような話を書いて下さりありがとうございました! 新しく始めたら教えてくださいネ