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待ってましたァァ!ひろぱの嫉妬部分が滲み出てきてますね!!👍🏻大好きです〜!
結局あの後は、何も出来ずに時間だけが過ぎていった。気付けば2日も会っていなくて、段々と心の内のモヤモヤもなくなっていくような気がした。
特に何を思うでもなくスマホの画面上に映し出される様々な動画を眺めていれば、久しぶりに見た名前から電話がかかってくる。通話ボタンを押し応答すれば、想像していた声が返ってきた。
「若井ー!今どこいるー?」
「今家。」
聞き慣れたはずの声なのにどうしてもまた頭にあの日のことがチラつく。
「若井いちご好きだよね?なんかね、新しく出来たカフェにめっちゃ美味しいいちごパフェあるんだって!暇だったら行こ!」
通話越しでも伝わる揚々とした声に思わず圧倒される。ちらりと時計を見やり、同時に鳴った腹の虫に苦笑いをして、了承した。
「いいよ、迎え行くから待ってて。」
「わぁ…結構お洒落だね。」
雰囲気のある扉を開けると、客人を迎える鈴が鳴る。壁に掛けられた沢山のアンティークな小物達が歓迎してくれたようだった。
「いらっしゃいませ。空いてるお席へどうぞ。」
物語の舞台だと言われても違和感が無いくらいのお爺さんが出てくる。丸い眼鏡に、よく伸びた白い髭が最初に目を引く。後ろで纏められた髪がより一層空間に惹き込ませる。
「若井!あの席あったかそう〜。」
振り向いた拍子で涼ちゃんの髪型がふわりと宙に舞う。整った顔立ちに、センスのいい衣服はこの店にしっかりと溶け込んでいた。
「あんま人から見えなさそうだしちょうどいいね。」
先に席に着いた涼ちゃんを追って、反対側に腰を下ろす。言っていた通り陽の光が椅子を温めてくれていて、心地良さに自然と目を細める。
「はい、メニュー。何食べようかな〜。んー、オムライス…美味しそう。…え、きのこカレー…?」
着席するや否や、早速メニューを手渡される。素直に受け取り、写真と文字に目を走らせていれば前から思考する声がずっと聞こえてくる。涼ちゃんらしいな、とページを捲り自分の食べるものを探しているとピタリと声が止んだ。
「え…何?」
メニュー表から顔を上げると、両手で頬杖をついてこちらを見つめる涼ちゃんが居た。やけにご機嫌な様子に、さっきのカレーか、と納得して会話を投げかける。
「きのこカレー、美味しそうだね。」
一瞬、表情に困惑が滲む。
「え、?あー、そう!このカレー頼むんだ〜。」
ちょうど開いていたページに写真が載っていたようで、指をさして微笑まれる。不審な素振りを気にしつつも、隣に合ったナポリタンに目を惹かれた。
「俺も決まった。」
タイミング良く通りかかった店員に声を掛けた涼ちゃんが注文してくれた。
「あ、若井も珈琲でいい?」
「大丈夫。」
珈琲、という単語にここがカフェなことを再度認識した。あまりカフェで食事をすることがないから何処か新鮮だ。
「めっちゃ美味しそう〜…頂きます!」
「いただきます。」
出来立ての料理は僅かに湯気を放っていて、美味しそうな香りにごくりと唾を飲む。もう食べ始めている涼ちゃんに、早いよ、と笑いかけながら自身もフォークを取り、ナポリタンを器用に巻き付ける。口に運ぶと久しぶりに食べる懐かしい味が口内を満たした。
「1口食べる?」
掛けられた声に目を向ける。食べる?と言いながらナポリタンから目を離さない様子に心の内を察した。
「食べたいんでしょ。」
バレちゃった、と微笑む相手にフォークを渡そうとすると、予想外の行動に思わず手が止まる。小さく口を開き、ナポリタンが入れられるのを待っているようだった。
「え…。」
口から零れ落ちた言葉のトーンがあまりにも低くて、自分でも驚いた。そんな様子を見てか、
慌てて謝罪を述べられる。
「ご、ごめん!きもかったよね…。」
きっとここで、”そんなことないよ”とでも言うべきなのだろう。だが、口から出た言葉は全く違うものだった。少しだけ。ほんの少しだけ嫉妬が滲み出てしまう。
「…誰にでもしてるの?」