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「そもそも俺と加東さんが仲良くなって、何が生まれるんですか」
友情。と言い返したいのをグッとこらえて、落ち着かない涼の本音を待つ。
「好きな人を家に連れてくるんだから、追い出していいんですよ。……要は、先に言ってほしかったんです。そしたらすぐに消えますから」
とても小さいけど、中々抜けない棘みたいに突き刺さる言葉だった。
「消えるってどこに。どこか行く所あるのかよ」
「それはっ……そこからは、もう貴方には関係ありません」
……落ち着け、俺。
瞼を伏せて深呼吸した。荒立ってる時ほど冷静に。
これは彼と関わるようになって学んだ事だ。感情的になっちゃいけない。もっとややこしい事になるから。
「今出てったら、俺の恋人作りに協力するって約束はどうなるんだよ?」
テレビを見てゆったりしてる加東に聞こえないよう、二人は声を潜める。お湯を沸かしてるヤカンを尻目に。
「上手くいきそうじゃないですか。俺がいなくたって、もう大丈夫ですよ」
「何を根拠に言ってんだよ。何一つ進展してないだろ」
冷静に、ってのも上手くいかないものだ。ひとり熱くなっていくのが分かる。
「進展してますよ。大丈夫大丈夫」
適当にも程かある。こいつ、もうめんどくさくなってるな……?
でもこのままにしちゃいけない。その想いから怒りと焦りが募っていく。ブレーキをかけることなく、准は語尾を強めた。
「全然大丈夫じゃないだろ。大体、俺はまだお前に出て行かれたら困る! お前が誰なのか、全部話してもらうまでは!」
「話したじゃないですか! 何回も何回も……話したって、理解する気がないんでしょ? 俺が誰かなんて、そんなの考えなくても分かるはずなのに!」
反論。
胸の奥が痛んだ。
驚きと、ほんの少しの苛立ち。初めて言葉を言葉で返されたような不思議な感覚。
「何……言って」
けど、言ってる意味はビックリするぐらい分からなかった。それが結果的に涼をイラつかせてるんだろうけど。
分からないものは分からない。子どもみたいな言い分だけど、正直な感想だ。涼がなにか話してくれた記憶なんてまるでない。
───彼の目的が何なのか知りたい。
だから、分かりやすい言葉でちゃんと話して欲しい。そう思うのに。
知ったら、終わる。
何の根拠もないけど、そんな嫌な予感がした。