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「なつ、座ってていいって言っただろ。俺が全部やるから」帰宅するなり、いるまは手際よくスーツを脱ぎ捨て、黒いエプロンを身に纏った。
キッチンに立つその背中は、会議室でプレゼンをしている時と同じくらい凛々しくて、でもどこか家庭的で……。なつはついつい、カウンター越しにその姿を見惚れてしまう。
「……いるま部長。手際が良すぎます。……あ、手際がいいね、いるま」
「……なつ。今、何て言った?」
いるまが包丁を止めて、ニヤリと意地悪そうに笑う。
「……え、いや……手際がいいなって……」
「その前。『部長、手際が良すぎます』って言っただろ? ……ふふ、会社での俺のこと、そんなにかっこいいと思ってるんだ?」
「……っ、うっせーよ! 職業病だろ、こんなの!」
顔を真っ赤にするなつを見て、いるまは満足げに野菜を炒め始める。
「いいよ。なつの敬語、実は嫌いじゃないんだ。……俺を『上司』として尊敬してくれてる証拠だろ? 家では『恋人』として、めちゃくちゃに甘やかすけどな」
お風呂から上がり、パジャマ姿の二人は寝室へ。
さっきまでキッチンでテキパキ動いていたいるまだったが、ベッドに腰を下ろした途端、ふぅ……と大きなため息をついて、なつの膝に顔を埋めた。
「……なつ。……俺、やっぱり今日の会議、言い方きつかったよな」
「……まだ気にしてたのかよ。……いるまさん、……いるま。大丈夫だって」
「……あんなに冷たくしといて、家ではこんなにベタベタして……。なつに『情緒不安定な上司』だって思われてないか心配で……」
昼間の「鉄仮面」はどこへやら。
なつのパジャマの裾をギュッと握りしめ、不安そうに見上げてくるいるま。
なつはそんな彼が可笑しくて、愛おしくて、自分からいるまの首に腕を回した。
「……あのさ。会社での厳しいお前も、家での情けないお前も、全部含めて『いるま』だろ。……俺は、どっちのお前も好きだよ」
「……なつ……っ」
「だから、……もう反省会はおしまい。……ほら、……寝るぞ。部長」
なつが茶化すように言うと、いるまの瞳に、昼間とは違う「熱」が宿った。
彼はなつを軽々と横抱きにすると、そのままベッドに沈め込む。
「……『部長』って呼んだ罰。……今日は寝かせないからな」
「……っ、……ずるいぞ、職権乱用だ……っ!」
「いいだろ? ……これが、俺たちの『残業』だよ」
耳元で低く囁く声は、いつもの厳しい指示よりもずっと、なつの心を震わせる。
カーテンの隙間から月明かりが差し込む中、二人の夜は、仕事の疲れさえも甘い熱に変えて、深く溶け合っていった。
コメント
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わあ、第6話、読み終わりました……! いるまさんの「鉄仮面」が家でポロリと外れて、なつの膝に顔を埋めて不安をこぼすシーン、めちゃくちゃ愛おしかったです。あのギャップ、たまらないですね。オフィスでの厳しさも家での甘えん坊も「全部含めて好きだよ」って言えるなつ、すごく大人でかっこいい。お互いを認め合う関係性がじんわり沁みました。あと、エプロン姿で包丁握るシーンの描写、ちょっとした職業病ネタが効いてて、思わず笑っちゃいました。月明かりのベッドシーンまで、仕事の疲れを甘く溶かすような温かさがあって、素敵なエピソードでした! 次も楽しみにしてますね。