テラーノベル
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21
「……っ、てて……」午後のオフィス。なつがデスクで資料を取ろうとした瞬間、昨日「残業(?)」しすぎたせいで痛めた腰に激痛が走った。
「おい、大丈夫かよ暇! 無理すんなって」
すかさず駆け寄ったのは、同期の佐藤だった。彼はなつの肩に手を貸し、顔を覗き込む。
「あ、悪い佐藤。ちょっと腰やっちゃってさ……」
「腰? 若いのに何したんだよ。ほら、湿布持ってるから後でやるよ。……っていうか、お前顔赤いぞ? 熱あんのか?」
佐藤が親しげになつの額に手をかざそうとした、その時。
「――暇。その資料の確認は終わったのか」
背後から、凍りつくような低い声が響いた。
振り返ると、そこには書類の束を手に、般若のようなオーラ(無表情だけど目が笑っていない)を纏ったいるま部長が立っていた。
「い、いるま部長……! はい、今ちょうど……」
「部長、暇が腰を痛めてるみたいで。少し休ませてもいいですか?」
佐藤が良かれと思って進言するが、いるまの視線は佐藤がなつの肩に置いている「手」に釘付けになっている。
「……腰、か。……私の指示が多すぎたせいかもしれないな」
(※心の中:昨夜、俺がやりすぎたせいだ。……っていうか、その手をどけろ。今すぐ離せ)
「佐藤、お前の担当分はどうなっている。他人の心配をする暇があるなら、自分のデスクに戻れ」
「あ、はい! すみません!」
佐藤が脱兎のごとく逃げ出していくのを見届け、いるまはなつに一歩歩み寄った。
周囲には他の社員がいる。いるまはあくまで「厳しい上司」の仮面を被ったまま、なつの耳元でだけ聞こえる声で囁いた。
「……なつ。……あいつと、随分仲が良いんだな」
「……部長。仕事中ですよ」
「分かってる。……でも、帰ったらお仕置きだ。……その肩、あいつが触ったところ、俺が全部上書きしてやるから」
「……っ、……仕事に戻ってください、バカ部長……!」
なつが顔を真っ赤にして資料で顔を隠すと、いるまは満足げに、でもどこか不機嫌そうに鼻を鳴らして部長席へと戻っていった。
その後のいるま部長の仕事のスピードが、嫉妬の炎で通常の3倍速になっていたのは、部内でも語り草になるほどだった。
コメント
1件
あ、7話読み終えました…!いるま部長の嫉妬、えぐいほどに可愛いですね…🤍「上書きしてやる」とか平然と言っちゃうの、重くてちょっと嬉しくなるやつです。最後の3倍速エピソード、笑いました。なつが赤くなって資料で顔隠すのも、もう付き合ってるみたいで尊い…!次も待ってます🌙