テラーノベル
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帰宅してからの記憶は曖昧だった。シャワーを浴びて、やるべきことを済ませ、疲れですぐに眠りについた。
それから数時間後。不意に、重みを感じて目を覚ます。
「……?」
暗闇に目が慣れるまで、状況が掴めない。処理の追いつかない頭でぼんやりと見上げると、そこには私に覆いかぶさる雅の影があった。
「何、あんた。ジャケット取りに来るだけって言ってなかった?」
低く掠れた声で問いかける。その間にも彼の指先はシャツの裾から入り、私の腹を優しくなぞっていた。
雅は「ん?」と、とぼけたような声を上げ、暗い部屋の中で微笑んでいる。
「今日疲れてそうだったから、寝顔見て帰るつもりだったんだけど、こういう慰め方もありかなって」
「その発想にはあんたしかならないわよ。バカね」
心底呆れ果てて、私は奴の手を払い、素肌に触れさせるのを止めさせる。
強引に起こしておいて、何が慰めるだ。
雅は少しだけ笑って動きを止める。
「で、今日元気なかったじゃん。何で?」
「……本当に何もないのよ、無意識の内に仕事の疲れが出たのかもしれないわね」
吐き出した溜息と一緒に、嘘を混ぜ込む。
雅を押し退けて体を起こし、誤魔化すように私はわざとらしくシーツを軽く整える。
平然を装って答えたつもりだったけれど、雅の目は誤魔化せないらしく、彼は呆れ顔で笑った。
「お前、意外と嘘下手な」
図星を突かれても、私は口を割るつもりはなかった。
他の女との過去なんて聞きたくなかった。そう白状してしまえば、彼に「嫉妬してんの?」「俺のことそんなに好き?」と、揶揄われるのが目に見えていた。
認めたくないし、何より、それを知られて面倒な女だと離れられるのが、たまらなく怖かった。
「もう良いじゃん、本当に気にしてないのよ。寝れば忘れるし」
「俺等ってまだ割り切った関係とかそんなん続いてんの?だから話したくないわけ? 仕事の愚痴とかなら話すじゃんお前」
雅は私の肩を抱き寄せると、そのまま優しく頬を撫でてきた。
私が重たい女になれば、きっとこの男は離れていく。昔からそうだった。この男は束縛や執着を嫌い、何にも縛られずにいたい人。
そうなりたくないから距離を取ろうとしても、この男はそれを許さず、距離を詰め私の内側を暴こうとしてくる。
放っておいてくれれば、また明日からいつも通りの自分に戻れるのに。
雅の手の温もりから逃れるように目を伏せる。
「割り切ってるとかもうそういうのはわかんないけど、恋人だからって何でも話せるわけじゃないじゃない?」
精一杯の理屈を並べると、雅は「今更何を言ってんの」とでも言いたげに、眉を寄せて私を見た。
怪訝な顔をしていても、綺麗な顔をしていて、思わず感心してしまう。この男に、不細工な瞬間なんて存在するのか、なんて、それどころではないのに気になってしまう。
「なら早くいつも通りに戻れよ。気になんだろーが」
至近距離で額を弾かれ、鋭い痛みに思考が止まる。
「痛っ……!」と額を押さえる私を見て、雅は満足そうにふっと笑みを零した。なんてことない、ただの無造作な笑顔。
それだけで心臓が跳ねてしまうあたり、私はもう、取り返しのつかないところまで来ているらしい。
顔がいいだけじゃない。中身は最低で最悪のクズ野郎だと知っているのに、ふとした瞬間の考え方や、隣にいる時に感じるどうしようもない安心感に、心地よさを感じてしまった。
「帰んの面倒だな。風呂借りて泊まって行って良い?」
「最初からその気だったくせに。白々しい」
「それはそう。だけど、今日の夏帆は何か一緒にいてほしそうな顔してるから」
「そんな顔してない!」
「はいはい。いつになったら傍にいてくらい素直に言えるんだか」
何も言っていないのに、私の隠したい本音を勝手に引きずり出していくこの男が、心底腹立たしい。
まなこ〜友
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#ますしき
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コメント
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うわああああ第27話読み終わったよおおおお😭💕💕 雅、ほんとクズなのにズルすぎるよな?!「今日疲れてそうだったから寝顔見て帰るつもりだった」って言いながら結局泊まるとか笑っちゃうんだけど、そういうとこだぞ!!って感じ🤯💥 でもそれ以上に刺さったのは夏帆の心情。「面倒な女だと思われたくない」「離れるのが怖い」って、好きだからこそ素直になれないの、わかるよ…わかるよおおお…😢💔 「素直に傍にいてって言えるようになるのはいつだか」って雅に言われてるシーン、心臓ギュッてなった。もう二人の距離感、最高にエモい…!次話も待ってます!!!✨