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ただいま
薄暗い部屋。
山奥の、小さな診療所。
雨音が、窓を叩いていた。
ぽつ…ぽつ…。
ベッドの上に、×××は横たわっている。
顔は青白く。
呼吸は、かすか。
胸には包帯。
腕にも、包帯。
「……」
キルアは、ベッドの横に座っていた。
もう、何時間も。
いや――
何日も。
ゴンが心配そうに言う。
「キルア……少し休んだら?」
「いらねー」
即答。
「×××のそばにいる」
クラピカも静かに言う。
「君が倒れたら、意味がない」
「……わかってる」
でも、動かない。
×××の手を、ずっと握っている。
冷たい指。
「……なあ」
小さく呟く。
「早く起きろよ」
「……怒ってんだぞ」
「勝手に……あんなことして……」
声が、震える。
「……でもさ」
「……怖かった……」
ぽた。
涙が、落ちる。
「……いなくなるって思った……」
レオリオが、そっと席を外す。
ゴンも、目を伏せた。
キルアは、×××の額に自分の額を当てる。
「……俺さ」
「……×××がいないと……」
「……ダメなんだよ……」
初めて、弱音を吐いた。
誰にも見せなかった。
「……だから……」
「……戻ってこい……」
夜。
皆が眠ったあとも。
キルアだけは起きていた。
タオルを絞って、額を拭く。
水を含ませて、唇を湿らせる。
「……ほら」
「飲め……」
もちろん、返事はない。
「……ちぇ」
「反応くらいしろよ」
でも、手は優しい。
数日後。
医者が言った。
「……峠は越えました」
「でも……まだ、意識は……」
キルアは、深く息を吐いた。
「……生きてるなら……いい」
その夜。
嵐だった。
雷。
強風。
雨。
診療所が揺れる。
キルアは、また手を握る。
「……なあ……」
「聞こえてるんだろ?」
「……起きたら……」
「……怒るからな……」
「……泣くほど怒るから……」
その時。
×××の指が――
ぴくっ。
「……え?」
キルアが、固まる。
もう一度。
ぴく。
「×××……?」
顔を近づける。
「……おい……」
まぶたが、わずかに震えた。
「……っ!!」
「ゴン!!クラピカ!!レオリオ!!」
「来い!!今すぐ!!」
皆が飛び込んでくる。
ゆっくり。
本当に、ゆっくり。
×××の目が、開いた。
「……ぁ……」
かすれた声。
キルアの目に、涙が溢れる。
「……バカ……」
「……やっと……起きたか……」
×××は、ぼんやり見つめる。
「……キ……ルア……?」
「そうだよ!!」
「本人だよ!!」
「偽物だったらどうすんだ!!」
泣き笑い。
×××は、弱く微笑んだ。
「……うるさい……」
「……生きてる……?」
「生きてる!!!」
「お前がな!!」
ゴンが泣きながら叫ぶ。
「よかったぁぁぁ……!!」
クラピカも、静かに目を閉じる。
「……本当に……」
レオリオは鼻をすする。
「医者泣かせだな……」
キルアは、×××の額にそっと触れる。
「……もう……」
「二度と……あんな真似すんな……」
×××は、かすかに頷く。
「……努力……する……」
「するじゃねぇ!!」
「約束だ!!」
「……うん……」
小さな声。
でも、確かな返事。
キルアは、ようやく笑った。
「……おかえり」
×××も、答える。
「……ただいま……」
to be continued…