テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
遠方のロケからの帰り。もう少しで俺と勇斗が住む家につく。
(トイレ行きたい……)
長い時間車に乗っている俺の膀胱は限界を迎えていた。早く着け、つけと頭がいっぱいになる。
エンジンの低い重低音が、下腹部に一定のリズムで微振動を送り続けている。それが、今の俺にとってはどんな拷問よりも辛い。
(…別のこと、考えなきゃ……)
必死に台本の内容を反芻しようとするが、脳内は一秒ごとに膨れ上がる排泄欲に支配されていく。
「じんちゃん、顔色悪いよ? さっきのカフェでアイスコーヒー頼みすぎたからじゃない?」
隣に座る勇斗が、台本を見ながら声をかけてきた。その声は優しく聞こえるが、俺は知っている。さっきの休憩中、俺が「間違えてLサイズを頼んじゃった」と言ったとき、勇斗は明らかに楽しそうに笑っていた。それどころか、「もったいないから全部飲みなよ」と、俺が飲み干すまでじっと見ていたんだ。
(……あの時から、こうなるって分かってたんだ……)
家まであとどれくらいかかるのか。俺の膀胱は、すでに破裂しそうなほどの熱を帯び、限界をとうに超えていた。
「はや、と…、おうち……まだ、かな…」
声を出すだけで、腹筋に力が入ってしまいそうになる。俺は必死に太ももを擦り合わせ、溢れ出しそうな尿意を力ずくで抑え込んだ。みすぼらしい動きなんだろうな、とか今はそんなことも考える余裕がなかった。
「さあ、笑わかんないや」
冷たく一瞥する目には、企むような黒い渦が巻かれてた。
(……だめだ、……も、もれそう、)
返事もできないほど波が押し寄せ、車の振動も相まってすぐ溢れるほどの水位まで上がっていた。
「……っひ、」
喉の奥で、空気が漏れるような小さな音が鳴る。勇斗は俺の耳に顔を寄せ、密やかに話す。
「じんちゃん、すーごい汗だよ。……そんなに、おしっこしたいの…?」
「はや、と……だま、って……」
わざとらしく言葉を言ってくる勇斗につらつらと文句を言う余裕もない。
「もう着きます。降りる準備お願いします。」
(きた……やっと、やっと着くんだ。)
今の自分にとっては何よりも聞きたい言葉だった。
(……たすかる)
「…ふっ、ぅ」
小さく呼吸を整えて、見慣れた景色の窓の外を見て意識を逸らそうと試みる。
車が徐々に減速すると、道路脇で止まった。
「お疲れ様でした。」
「おつかれ、さまです…」
「おつかれーす」
マネージャーへの返事にもやっとで、そそくさとドアを開けて、マンションの入口へと向かう。
ロケバスを降りてから、マンションのエレベーターに乗るまで、どうやって耐えたのか記憶にない。
一歩歩くたびに、膨らみきった膀胱が悲鳴を上げていた。
(……やっと、……やっとお家だ)
勇斗は手伝うどころか、俺が震える手で鍵穴を探る無様な姿を、後ろから楽しむように眺めていた。相変わらず趣味が悪い。
「っふぅ、ふ、ぅ…」
靴も脱ぎ捨ててトイレへ駆け込もうとしたその時、背後から伸びてきた力強い腕が、俺の腰を抱き止めた。
「っな、に!」
「なあ、じんと」
どうせ碌なことはされないと思って、前を向いたまま振りほどこうとする。
「じんと。」
自分より人一倍大きい手が頬をつつみ、強引に勇斗の方をむかされる。
「…ゃ、」
極限の状態に耐えられなくなった身体が拒絶反応を起こし、目がじわじわと熱くなる感覚がする。次第に大粒の涙が溢れ出す。
「は、ゃと……もれ、ぅっ……から、はな、して……」
視界がぼやけて恥ずかしさのあまり呂律が回らない。
漏らしたら、と考えただけで、自分の今後が危ぶまれる。
「うん、もれる?」
勇斗は、泣きじゃくる俺の顔を慈しむように見つめ、さらに追い詰めるように首を傾げた。
「じんと、おしえて。」
残酷なまでの冷静さは今の俺にとって羞恥心を倍増させるだけの要素でしか無かった。
「……っ、ぅ、おな、か……っ、くるしい、…っ」
勇斗の腕を掴んで、限界を伝えることしか出来ない。
「ふっ、かわい」
「っ、ぅ……ぁ、や、ぁ」
呼吸全て食い尽くすかのようにキスをされて、苦しくて呼吸しようと少しだけ開いた俺の唇に舌を滑り込ませてくる。
「ほっ……ん、と゛にも、れぅ……」
キスでもっと限界が近づいてるの分かって、勇斗の胸を押し返そうとしても、上手く力が入らない。
「うーん?」
勇斗がパッと唇を離し、それまでの熱が嘘のように冷酷な響きを帯びた声を出した。
「は、ゃ……っ? ……ねぇ、はやと……っ」
勇斗の目はどこまでも冷たく、俺の無様な姿を観察しているだけだった。勇斗は俺が押し返しても、拒否してもビクともしない。
「は゛ゃと、っはや、と」
限界だった。勇斗の名前を呼んでも離してくれないって分かってた、ただいまは名前を呼んで助けを乞うことしか出来なかった。
涙の零して、泣きじゃくる俺の顔を勇斗はじっと見つめて、下腹部を優しく撫でてくる。
「っゃ、め………」
「、ね、ぇ…?は、ゃと゛もれ、る……もれそう……」
「うん、いいよ。漏らしてるじんとみたい。」
言葉を皮切りに下腹部を刺激する指の指圧が益々大きくなる。
「ぅ゛ぁ、ぃ、やだ、やだ……ゃ、ぅ」
拒む声をかき消されて、口の中を隅々探られるように舐め回されて、頭が働かなくなる。逃げたくて頭を引こうとしても、頬を掴む手がそれを拒んでくる。
自分のもののすぐ先端まで、暖かいものが迫っているのが感覚でわかった。
「じーんと、おしっこだしていいよ」
静かに耳元で囁かれて。
「ふっぅ゛ぅ、」
勇斗の指が膀胱を刺激する度に上がる声を抑えようと、自分の口を塞ぐ。
恥ずかしい。消えたい。そんなことが頭を支配する。
「じんと。」
勇斗が名前を呼ぶと、ずっと下腹部を刺激していた手が下がり、スボンの間から、俺の物を刺激しようと手を中へ潜り込ませる。
「ねぇ…、!もれ…ぅ、はゃ…とは、やと…」
勇斗が、後ろから俺のものをゆるゆると上下に動かす。明らかに熱を帯びたそれは、限界と言わんばかりに先端から少し漏れ出していた。
「ひ、あッ、……ぁ、……っ!」
「じんと。かわいい。もらして。」
耳元で低く笑う勇斗の声。
「ふ、ぅ……は、ぁ…」
情けなくて、惨めで。
「や、め……て、やぁ!」
涙ながらに頭を横に振っても聞いて貰える様子はない。
「ほんっ、とにもれ、るよ?ねぇ、といれ、いかせて……」
あと数メートル。廊下を走ればトイレがある。なのに、勇斗の腕は鋼のように固く、俺の自由を奪っている。
恥ずかしさと、情けなさと、極限の尿意。仁人はドアに額を押し付け、声を上げて泣き出した。
「おねがい、……じんと、おしっこ……もれちゃう……はやと、おねがい……っ!!」
「いいよ、ここで出しちゃいなよ。……俺しか見てないんだから、恥ずかしくないね。」
勇斗の手が、仁人のベルトに指をかけ、わざとカチャリと音を立てて外していく。
「や、だ………でる、で……ぅ、はやと゛、!くる、から」
「うん」
勇斗は苦しむ俺の顔をじっと見つめながら、ふるふると震える俺のものを緩く触る。
「でる、でるぅ、ぁ、!ああぅ……」
遂に、最後の理性が弾け飛んだ。
「う、ぅ、う…、」
玄関のタイルを濡らす、生々しい音。
もう誰の目も気にしなくていいはずなのに、好きな人の前でという現実に恥ずかしくて、消えたくて俺はただ泣くことしか出来なかった。
「じんと。かわいい。出せてえらいね。」
「う、ぅっ…やだって、いった、ぁ……」
恍惚とした表情を浮かべて、目の前の惨状を見つめる勇斗が、愛おしそうに俺の頭を撫でながら首にキスを落とす。
服が重くなっていく感覚が、時間が経つ度に増す。
「…じんと、かわいい、顔見せて? ほら、お風呂行こう」
勇斗が優しく肩を抱き寄せようとする。その温もりに縋りたくなって、でも、今の俺にはそれ以上に許せないことがあった。
「……っ触ら、ないで…ばか、」
俺は震える手で、勇斗の腕を弱々しく振り払った。 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を上げ、潤んだ瞳で睨みを利かせる。
「…きらい。……一生、許さないから…!!」
喉を震わせて絞り出した拒絶の言葉。けれど、声は情けなく掠れている。
むしろ、そんな俺の虚勢を、勇斗は楽しそうに目を細めて眺めている。
「そっか〜。大嫌いか。……でも、そんな大嫌いな奴の前で 、こんな漏らして恥ずかしいなー仁人は。」
「……っっ」
核心を突かれ、俺の顔は再び真っ赤に染まった。
言い返そうとしても、現実の惨状が視界に入り、言葉が詰まる。
「……っ、……うるさ……いっ、……はやとが、いじわる、したから……っ、俺は、べつに、出したく…っ」
また、涙が溢れてくる。意地を張れば張るほど、自分が情けなくて、惨めで、どうしようもなくなってしまう。
結局、俺は自分から勇斗のシャツの裾をギュッと掴んだ。
「……おふろ、……連れてって、……っ、……自分じゃ、……歩けない……から、 」
俺は勇斗の首筋に顔を埋め、自分でもどっちの感情かわからない涙を、彼のシャツに吸わせ続けた。
大嫌いで、最低で、でも、 今だけはこいつの腕の中じゃないと、生きていけない。
俺は勇斗の腕に抱かれて、温もりに溶けて消えていった。
コメント
5件
はい、大優勝です。 吉田さん可愛すぎます。 ありがとうございました。 そしてあんにんさん大好きです。

本当に天才ですおしがま素晴らしすぎます