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「はいどうも〜!はるみなTVでーす!今日はね、なんと……!心霊スポット界でも最凶って言われてる、廃ホテル“天鳴館”に来ちゃいました〜〜ッ!!」
「……ってテンションでやってるけど、私内心ガチで帰りたいです」
カメラを回すハルカの隣で、ミナミがいつものようにボヤく。
場所は、県境近くの山奥にぽつんと佇む天鳴館(てんめいかん)。
20年以上前に営業停止したホテルで、オカルト掲示板では“絶対に行ってはいけない場所”として語られていた。
しかも今回、案件じゃない。
ある日届いた1通のDMがすべての始まりだった。
「天鳴館に、かつて失踪したYouTuberの“最後の映像”が残されています。
見つけてあげてください。
貴女たちなら、気づけるはずです」
――K
「ていうかさ、その“K”って誰なんだろうね」
「キラ……?」
「ちょ、やめろ!デスノート混ぜるな!」
旅館の入り口には、鍵のかかったチェーンがかかっていた。
でもそこには、まるで彼女たちの到着を待っていたかのように――
ポケットWi-Fiと懐中電灯がひとつ、綺麗に置かれていた。
「え、誰か……来たってこと?」
「いや、むしろ“お入りください”って歓迎されてない!?」
それでもハルカは、カメラを下ろさない。
「行こっか。だって、うちらには“視聴者”がついてるから」
「……それフラグでしかないって!」
ホテルに足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
ほこりとカビの混じったにおい。
でも、不思議と寒くはなかった。
「ここ……電気通ってるわけないよね?」
「いや、見てハルカ。ロビーの奥の非常灯、点いてる」
「え、じゃあ誰かいるじゃん!?やばない!?ねえ帰r──」
「──ちょっと待って」
ハルカが急に足を止め、ロビーの受付カウンターを指さす。
そこには、三脚が立てられ、その上にはカメラが乗っていた。
……自分たちの機材とは、明らかに違う。
「これ……私たちのじゃない。誰かが……ここで、撮ってる」
近づいてみると、そのカメラは録画中だった。
しかも、液晶画面にはこんな文字が浮かんでいた。
《REC 231:47》(録画中:231時間47分)
「……え、ずっと録画されてるの?誰もいないのに!?」
ミナミが恐る恐る画面を覗く。
そこには、今のロビーと“まったく同じ景色”が映っていた。
でも──画面の右奥。
誰もいないはずの階段に、白い服を着た誰かが立っていた。